ChatGPTは、2022年11月30日の登場からわずか2カ月で、ユーザー数が1億人を超えたとされています。「ググる、いわゆるGoogle検索の代替となるのでは? 」「iPhoneやインターネット誕生以来の発明だ」などといった評価をされることもあり、近年稀に見る大きなトレンドとなっています。
2023年3月にはGPT-3.5からGPT-4へアップデート、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」との統合や最新情報を取得するウェブブラウジング機能の実装など、ChatGPTの機能は飛躍的に進化しており、その周辺においても「Google Bard」が登場するなど、大きな変化が起きています。
ここまでの5回の連載中にも、状況は刻々と変わってきています。そこで今回は、改めてChatGPTの最新状況を振り返った上で、ChatGPTが今後どのような方向に進む可能性があるかについて、解説します。
→連載「ChatGPT入門 - 初めてのAIチャット活用」の過去回はこちらを参照。
ChatGPTの進化
ChatGPTは登場した時点からさまざまな進化を遂げています。代表的な以下3つについて紹介します。
- GPT-4
- ChatGPTウェブブラウジング
- ChatGPTプラグイン
まずはコレ。GPT-4
既に試している方もいらっしゃると思いますが、有料版ChatGPT「ChatGPT Plus」に登録すると、GPT-4のモデルが利用可能です。
無償版ChatGPT(GPT-3.5)と比較してみると、出力される文章の精度が上がります。ChatGPTを本格的に利用される方は、試してみてはいかがでしょうか。
GPTに限らず、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)の特徴として、「Emergent Abilities of Large Language Models」で示される通り、100億パラメータを超えた辺りから、急激に精度が向上するケースがあります。今後、GPT-5のようなさらに大規模なLLMが出てくるかもしれません。
2023年6月13日に「Function calling and other API updates」というニュースがOpen AIから発表されました。Function callingを使うと、以下のような関数呼び出しによってChatGPTのAPIを利用できます。これにより、具体的な処理(send_mail:メール送信)を実行させたり、ChatGPTの外のデータを活用(get_current_weather:天気のデータを外部から取得)したりすることができます。
send_email(to: string, body: string),
get_current_weather(location: string, unit: 'celsius' | 'fahrenheit')
ChatGPTの弱点克服!「ChatGPTウェブブラウジング」による引用元の明確化
ChatGPTには、「2021年9月までの情報しかない」という弱点がありました。ChatGPT Plusでは、ChatGPTウェブブラウジング機能をオンにすることができます。同機能は最新の情報ソースを検索し、その結果を基に回答を返してくれるため、“今”の話題にも対応できます。
ChatGPTの進化が加速!「ChatGPTプラグイン」を使った便利機能
ChatGPT Plusでは、ChatGPTに便利な機能(プラグイン)を追加できます。2023年6月24日現在、プラグインストアに554個のプラグインが登録されています。
例えば、皆さんは「xxがしたい!」といった内容をChatGPTに入力したことはないでしょうか? しかし、あまりにざっくりとした内容だと、ChatGPTからの回答もざっくりした内容になりがちです。ここで「Prompt Perfect」というプラグインを使うと、以下のようなシンプルなプロンプトを、より精緻なプロンプトに変換してくれます。これにより、より適切な回答を得られやすくなります。
Prompt Perfect以外にも、以下のようなさまざまなプラグインが存在します。
- Notable:データサイエンティストの代替になるか? データから表やグラフをノーコードで作成可能
- Now:TwitterやGoogleトレンドなどから情報を検索するトレンド検索が可能
- Speak:英語学習サポート。複数の言い回しの提案や、実際の会話の例示などが可能
これらを活用することで、そもそも高機能なChatGPTをさらに便利に使えるようになります。
ChatGPTのエコシステム
ChatGPTでは、すでにさまざまなツールの登場によってエコシステムが形成され始めています。以下では、その中から主なツールを2つ、ご紹介しましょう。
プロンプティングすらも自動化!「AutoGPT」によるゴールベースのツールへ
質問内容によっては、ChatGPTから一度で適切な答えを聞き出すのが困難なケースもあります。すでに利用されている方の中には、「ざっくりとした問いから始めて、少しずつ詳細な内容を聞いていく」といったテクニックを身に付けた方もいらっしゃることでしょう。いわゆるプロンプトエンジニアリングは、ChatGPTの真の活用に向けて重要なスキルです。
とは言え、そんなに簡単にスキルが身に付くのでしょうか?
「ググったらわかるのでは?」――Google検索が苦手な方は、ドキッとする台詞かもしれません。自力で検索しても知りたい情報をうまく得られず、結局人に教えてもらった、という経験は誰しも少なからずあるはずです。「検索して、欲しい情報に素早くたどり着く」というのは一つのスキルであり、得手不得手があります。人によっては、なかなかうまくできないケースもあるでしょう。
ChatGPTを使う際にも同様のことが言えます。しかしながら、「AutoGPT」を代表とする以下のようなツールを使うと、「うまいプロンプトを順に投げて、最終的に欲しい答え(ゴール)に行き着く」といったスキルは必要ありません。むしろ、ゴールのみを指定すると、ツールが自動的にさまざまな問いを繰り返し実行し、ゴールに近づけてくれるのです。
- AutoGPT
- AgentGPT
- BabyAGI
これらのツールでは、裏側でOpen AIのAPIなどを叩き、あるべき回答を導き出しています。
情報源は無限!?「Hugging-GPT」によるAIモデルの組み合わせ
ChatGPTの元となるGPT-4がいかに膨大な情報を学習していたとしても、情報に偏りがあったり、苦手なパターンがあったりするかもしれません。ある用途にはGoogle Bardを、また別の用途にはマイクロソフトの新しいBingを、といった使い方をされている方もいらっしゃることでしょう。
「Hugging-GPT」は、「Hugging Face」と呼ばれる言語モデルの図書館のようなプラットフォームから、適切な言語モデルを選択・組み合わせて答えを返すチャットボットです。ChatGPTが原則GPT-4のみを使って答えを返すのに対して、Hugging Faceに登録された言語モデルから答えを導き出します。
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今回は、「ChatGPTの今後 - 前編」として、急速に進んでいるChatGPTの進化を中心に紹介しました。ChatGPT単独の進化もありつつ、プラグイン構造の導入により、便利な機能をどんどん追加できるようになっています。さらには、AutoGPTなどによる「ゴール設定によるプロンプティングの自動化」や、Hugging-GPTによる「AIモデルの自動選定」など、さまざまなChatGPTエコシステムが登場していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
後編となる次回は、ChatGPTを取り巻く環境に着目し、ChatGPT以外の各種生成AIサービスについて紹介する予定です。それらを踏まえ、ChatGPTが今後どのような進化を遂げていく可能性があるのかについても考察します。