Bluetooth Low Energy 挿絵

今回のテーマは「Bluetooth Low Energy」だ。

Bluetooth Low Energy
Bluetooth Low Energy (Bluetooth LE, BLE)とは、無線PAN技術である Bluetooth の一部で、バージョン 4.0 から追加になった低消費電力の通信モード。Bluetooth は Bluetooth Basic Rate/Enhanced Data Rate (BR/EDR) と Bluetooth Low Energy (LE) から構成される。
(引用:「Bluetooth Low Energy」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年6月11日 (月) 17:30)

字面からして「Bluetooth」の低消費電力版だと言うことは一目瞭然だが、もちろん「Bluetooth」が何だったか忘れていることから話は始まる。「Wi-Fi」と並ぶ「よくわかんないけど取りあえず使っているもの」の二大巨頭だ。

まず「Bluetooth」は無線規格のひとつである。Wi-Fiとの違い、は、「Bluetooth」が近距離無線であり、数メートルから十数メートルの範囲で使うことを想定されているところにある。

「Bluetooth」は現在、大体のスマホやタブレットに搭載されており、その中に入っている音楽を、「Bluetooth」対応のイヤホンやスピーカーなどで聴いたりするほか、PCをマウスやプリンタなどの周辺機器に無線でつないだりもできる。

私が未だに1メートルの有線LANでネットにつながっている間に、世の中は完全に無線時代に突入していた、というわけだ。

カレー沢薫が挑戦する「無線化」

確かに、周辺機器が多ければ多いほど机の下はコードで樹海になり、行方不明のボールペンの蓋やクリップの多くがそこで発見されてきた。

さらに、気づいたらどこにもつながっていない用途不明のコードが1本や2本混ざっており、用途不明だけに捨てるに捨てられず、いつの間にか謎のコードコレクションが爆誕してしまうものだった。

しかし、この超高齢化社会に、床にコードが張り巡らされているというのは、殺人未遂行為である。よって、いつまでも「無線は信用ならん」「有線の方が確実」という老害丸出しなことを言うのは止めて、自分も仕事場周りをどんどん無線化していきたいと思う。

まず、今握っているマウスが思いっきり、USBケーブルでPCにぶっささっているので、次にマウスを買う時は無線にしてみようと思う。

それよりネットを無線にしたらどうか、と思うかもしれないが、それは「命綱を無線にしてはどうか」と提案しているようなものだ。リスクが高すぎるし、そもそもそれは「Bluetooth」じゃない気がする。

今のスマホには「Bluetooth」が標準装備されている、とのことなので、自分のスマホを確認して見たところ、確かに「Bluetooth」という項目があり、さらに「on」になっていた。

どうやら知らない内に「Bluetooth」生活をしていたようである。しかし、私のスマホに入っているコナンのテーマが、いきなり無線スピーカーから流れだした、ということはない。

つまり、今まで知らない内に発信していた「Bluetooth」を誰も受け止めていない、ということである。つまりスマホに「Bluetooth」がついていても、それとやり取りする「Bluetooth」機能つきの機器がなければ無意味なのだ。

そして、今我が家にはそれがひとつもないことが、判明した。

「Bluetooth」を試すのは、今のコード類が全部イカれてからだ。と思ったが、そう言えば先日「Apple Watch」を入手した夫が、合わせてワイヤレスのイヤホンを買っていた。

iPhoneとApple Watchを同期させて、このイヤホンで入っている音楽をワイヤレスで聞く的なことを言っていたような気がしないでもない。何せ興味ゼロだったのと、長年追っていたハナクソをついに追い詰めたところだったので、あまり記憶にないのだが、これこそまさに「Bluetooth」ではないだろうか。

しかし、そのワイヤレスイヤホンは「自分のiPhoneに合わない物を買ってしまった」という。「規格に合わないやつを買う」という痛恨の初歩的ミスにより、「Bluetooth」は活用されることがなかった。

どれだけ通信技術が進化しても、こういう人間のイージーミスや、「無線は何か嫌だ」という「新しい物アレルギー」によって、なかなか正確に使われることがない我が家のBluetoothだが、私も今のイヤホンが壊れたらワイヤレスを購入してみようかと思う。

だが、なんでもワイヤレスにすると、今度は「なくす」という弊害が起こるような気がしてならない。コードをつなげるということは、少なくともつながっている内はなくならない、という利点がある。それがなくなったら結果は見えている。

「Bluetooth Low Energy」で低消費電力になりコストダウンしても、機器を3日に1回なくすとなったら本末転倒だ。

やはり、紐でつなげておけば犬は逃げない、のように、原始的な仕組みにもまだ利点は多いのだ。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)、「カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄 - 」(2018)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年6月19日(火)掲載予定です。