C言語開発の次のステップとしてgitを使う方法を取り上げるところだったが、Microsoftが先日、Windowsで開発を行っているユーザに影響を与える発表を行ったため、この発表された機能を使う方法を先に取り上げることにする。発表されたのは「Windows Package Manager 1.0」だ。開発環境のセットアップやアップデートの方法が変わることになりそうだ。

Windows Package Manager 1.0登場

Windows Package ManagerはMicrosoft公式のパッケージ管理システムだ。Linuxのapt-getのようなものだと考えるのが一番わかりやすいだろう。これまではMicrosoft Storeがそれに近い存在だったが、より包括的で開発者にとって便利なのはWindows Package Managerのほうだ。

本連載では、これまでWindows 10でLLVM/Clangを使ったC開発をするための環境をそろえてきた。これまでインストールしたソフトウェアは次のとおりだ。

Windows TerminalはMicrosoft Store経由でインストール、それ以外はWebサイトからインストーラをダウンロードしてインストールを行った。インストール時には設定も行っている。

Windows Package Managerでは、wingetというコマンドを使ってソフトウェアのインストールやアップデートを行える。つまり、これまで数回に分けて説明してきたインストール作業を、wingetコマンドでもっと簡単に行うことができるのだ。アップデートも簡単になる。開発者としてこの機能を使わない手はないのだ。今回はwingetを使ってこれまでにインストールしたソフトウェアをインストールする方法を取り上げる。簡単になっていることを確認できるはずだ。

Windows Package Managerをインストール

将来のWindows 10にはデフォルトでwingetがインストールされているはずだが、本稿執筆時点ではまだインストールされていない。そのため、次のページからwingetの機能をダウンロードしてインストールする必要がある。

  • Windows Package Managerをダウンロード

    Windows Package Managerをダウンロード

Windows Package Managerの機能をダウンロードして実行すると、次のようなインストーラが起動する。指示に従ってインストールを行う。

  • Windows Package Managerをインストール

    Windows Package Managerをインストール

管理者権限でコマンドプロンプトを起動し、次のようにwingetというコマンドの実行が確認できればオッケーだ。

  • wingetコマンドの実行を確認

    wingetコマンドの実行を確認

それぞれの開発ソフトウェアをインストール

これまでにインストールした開発ソフトウェアを順にインストールする。本連載では、説明を省くためにPowerShell 7のインストールはしていなかったが、wingetなら簡単なのでインストールしておく。MicrosoftはすでにWindows PowerShellではなくオープンソースのPowerShell 7の使用を推奨している。

  1. Windows Terminal
  2. PowerShell
  3. Visual Studio Build Tools 2019
  4. Python
  5. LLVM
  6. Visual Studio Code

インストール - Windows Terminal

Windows Terminalをインストール
winget install "Windows Terminal Preview"
  • Windows Terminalをインストール

    Windows Terminalをインストール

(注:執筆時点ではWindows Terminalはインストールできなかったので、代わりにプレビュー版をインストールしてある。いずれ"Windows Terminal Preview"ではなく"Windows Terminal"でインストールできるようになるものとみられる)

インストール - PowerShell

PowerShellをインストール
winget install PowerShell
  • PowerShellをインストール

    PowerShellをインストール

インストール - Visual Studio Build Tools 2019

Visual Studio Build Tools 2019
winget install "Visual Studio Build Tools 2019"
  • Visual Studio Build Tools 2019をインストール

    Visual Studio Build Tools 2019をインストール

  • Visual Studio Build Tools 2019をインストール

    Visual Studio Build Tools 2019をインストール

インストール - Python

Pythonをインストール
winget install Python.Python.3
  • Pythonをインストール

    Pythonをインストール

インストール - LLVM

LLVMをインストール
winget install LLVM
  • LLVMをインストール

    LLVMをインストール

インストール - Visual Studio Code

Visual Studio Codeをインストール
winget install "Visual Studio Code"
  • Visual Studio Codeをインストール

    Visual Studio Codeをインストール

インストール後の設定

Visual Studio Build Tools 2019とLLVMはインストール後に設定が必要だ。

インストール後設定 - Visual Studio Build Tools 2019

Visual Studio Build Tools 2019はインストールされたが、実際の開発ツールはインストールされていない。設定アプリケーションから「アプリ」→「アプリと機能」→「Visual Studio Build Tools 2019」を選択し、「変更」をクリックする。

  • Visual Studio Build Tools 2019の「変更」をクリック

    Visual Studio Build Tools 2019の「変更」をクリック

起動してくるダイアログの「ワークロード」から「C++によるデスクトップ開発」にチェックを入れ、「変更」をクリックする。

  • 「ワークロード」の「C++によるデスクトップ開発」にチェックを入れ、「変更」をクリック

    「ワークロード」の「C++によるデスクトップ開発」にチェックを入れ、「変更」をクリック

  • 開発ツールをインストール中

    開発ツールをインストール中

インストールを完了するため、システムを再起動する。

  • インストールを完了するためにシステムを再起動

    インストールを完了するためにシステムを再起動

インストール後設定 - LLVM

LLVMをインストールしてもLLVMのコマンドパスは環境変数PATHに追加されないので、これを手動で追加する。システムのプロパティを起動し、「環境変数」をクリックする。

  • システムのプロパティから「環境変数」をクリック

    システムのプロパティから「環境変数」をクリック

次のように環境変数PATHにLLVMのコマンドパス(C:\Program Files\LLVM\bin)を追加する。

  • ユーザの環境変数PATHを編集

    ユーザーの環境変数PATHを編集

  • C:\Program Files\LLVM\binを追加

    C:\Program Files\LLVM\binを追加

  • C:\Program Files\LLVM\binの追加を確認

    C:\Program Files\LLVM\binの追加を確認

開発環境の動作を確認

Cソースコードのビルドやデバッグの動作を確認する。手動でインストールした場合と同じように動作することを確認できるはずだ。

  • 開発環境の動作を確認

    開発環境の動作を確認

Wingetで簡単インストール

これまで5回に分けてCを使った開発に必要なソフトウェアのインストールとセットアップ方法を説明してきたわけだが、Wingetを使うとこのようにもっと簡単に環境を整えることができる。アップデートも簡単だ。Wingetが正式にリリースされることで、今後Windows 10における開発環境のセットアップ方法は変わっていくだろう。もちろん、便利な方向にだ。Windowsで開発するには必須ツールになっていくと考えられるので、早めに試してもらえればと思う。

なお、まだパッケージ名が安定していないのか、ちょくちょくパッケージ名が変わる。以前はPython.PythonでインストールできたPython 3は執筆中にPython.Python.3へ変更された。上記内容のパッケージ名は作業時に適宜winget searchで調べるなどして確認してから作業してもらえればと思う。

参考