企業やエンドユーザを問わず、オンラインでのコミュニケーションとハイテクITネットワークへの依存度はますます高まっています。とはいえ、ローテクのソリューションの方がうまくいくケースもある、ということをご存知でしょうか。

世界中がつながりつつある

今や、オンラインで実行できないものはほとんどない、といっても過言ではありません。財務管理、請求書の支払い、食料品の買い物、TVの視聴、友達との写真のシェアなど、あらゆることをオンラインで実行できます。最近では、「クラウド」を使ったデータ保管の普及に伴い、店舗に足を運んでCDを購入するよりも、インターネットでダウンロードする音楽配信が人気を集めています。このようにつながった世界では、コンピュータシステムとエンドユーザのデバイスをつなぐリンクが非常に重要な役割を果たすようになります。

信頼性の高い高機能なネットワーク接続ができなければ、最新のiPhoneやスマートTVを持っていても意味がありません。したがって、通信インフラのアップグレードに膨大な投資が行われています。また、従来の銅線を使った電話回線は光ファイバーのブロードバンドリンクへと変わり、電話会社は次々と高速4Gモバイルデータネットワークを導入しています。

Microsoftは、オンラインサービスの提供を長年行ってきましたが、最近では主力サービスとなっています。コンシューマ向けのオンラインソリューションとしてHotmail(現在はOutlook.comに名称変更)やXbox Live、企業向けのソリューションとしてOffice 365、Lync、CRM Onlineなどが提供されています。また、買収によって提供を始めたオンラインソリューションもあり、たとえばSkypeは世界最大規模の通信ネットワークです。今後リリースが予定されているWindowsの新バージョンは、Windowsで稼働するデバイスがインターネットなどのネットワークに接続されることを前提に設計されています。

このように、Microsoftをはじめとするベンダ各社は、あらゆることをオンラインで実行するための取り組みを続けています。ところが、このようなトレンドに逆行する機能が新たに開発されています。

オンラインは素晴らしいが、問題もある

Office 365は、おそらくMicrosoftの歴史上最も成功を収めている製品であり、既存の機能の拡張や新機能の追加によって今後も継続的な機能強化が予定されています。ところが、Office 365への移行は困難な作業です。ユーザがオフィスやデータセンターにあるデータをMicrosoftが運営するデータセンターに移行しようとすると、大きな問題にぶつかるのです。

データを移行するには、現在のところ、インターネットにデータをアップロードするしか方法はありません。しかし、インターネットや、Office 365などのクラウドサービスは、サイズの大きなトランザクション(Webページやメールメッセージなど)を大量に送受信する処理を想定した設計にはなっていません。つまり、このタイプのインフラは、大量のファイルや大量の履歴メールといったデータのアップロードには適していないのです。いざOffice 365へのデータ移行を始めると、Office 365の他のユーザに影響を与えないように、データアップロードは「スロットル制御」されます。

さらに、インターネット接続は個々のトランザクションレベルでは非常に高速であるにも関わらず、全データを移行するとなると十分な帯域幅がないために非常に時間がかかってしまいます。つまり、Office 365へのデータ移行は、複雑で時間のかかる作業なのです。

問題解決のために設計されたソリューション

バラクーダネットワークスは、インターネットを介してデータをOffice 365に移行するお客様が上記のような問題に直面していることを知り、その解決策をPST Enterpriseの製品設計に採り入れました。その結果誕生したPST Enterpriseは、「技術的な問題は優れた設計の製品で解決できる」ということを示す事例になっています。

IT管理者にとって、PSTファイルは長年の悩みの種でした。PSTファイルはOutlookを使用するエンドユーザによって作成されるファイルです。メールのローカル保存に使用されますが、データ形式の信頼性や安全性が低いため、会社にとってリスクになるだけでなく、サポート担当者の大きな負担になります。Office 365への移行は、PSTファイルを排除して、データのコントロールを取り戻す絶好のチャンスです。PST Enterpriseは、あらゆる場所に格納されているPSTファイルをすべて検出し、そのデータをOffice 365に移行するツールです。

PST Enterpriseでは、PSTファイルデータをOffice 365にインターネット経由で移行する際、全ファイルをまとめて送信するのではなく、メッセージ単位でデータを移行します。この方法はインターネットのトランザクション特性に適しているので、ネットワークの処理能力を最大限に活用できるだけでなく、ソリューションの信頼性と堅牢性も向上します。また、各ソースロケーション(ユーザのノートPCなど)からOffice 365へデータをパラレルで直接移動します。中央サーバ経由で全データをルーティングする方法とは異なり、ネットワークボトルネックは発生しません。

ローテクソリューションの方が優れている場合もある

Microsoftは、Office 365のロードマップとして、Office 365の新機能の最新の状況と今後の予定を発表しています。筆者がロードマップを見てみたところ、「開発中」のセクションに「Drive Shipping」という新サービスを見つけました。

Microsoftの説明を引用すると、「Office 365へのデータ移行には制約があることが報告され、この問題の解決は重要なユーザ要望の1つでした。Drive Shippingは、Office 365へのデータ移行を簡単かつ迅速に実行します」となっています。具体的には、ユーザはUSBドライブなどのデバイスにデータを保存し、それをMicrosoftのデータセンターへ物理的に配送します。Microsoftは、デバイスのデータをOffice 365に直接コピーします。

ネットワークテクノロジに多額の投資をしたことを考えると、データ移行に物理メディアを使う方法は時代に逆行しているように見えますが、このローテクな方法は実用的なアプローチであり、問題解決に最適なテクノロジを使うことの必要性を示しています。インターネットの特徴の1つは、低遅延(データを瞬時に送信)であることですが、所定の時間内に転送できるデータ量(帯域幅)には常に上限があります。ドライブを物理的に送付する方法と比較すると、ドライブがデータセンターに届くまで1日ほどかかるかもしれませんが(したがって、遅延時間は非常に長いといえます)、ディスクドライブを使用することによって大量の「帯域幅」、つまり大量のデータ転送が可能になります。

メールなどの既存データをOffice 365に移行する作業では、遅延時間はあまり重視されません。重要なのは、データを瞬時に転送することではなく、大量のデータを信頼性の高い方法で転送することなので、まさにDrive Shippingはユーザのニーズを満たすソリューションなのです。

Drive Shippingは年内にリリースが予定されていますが、現在バラクーダネットワークスが提供しているPST Enterpriseも同様にOffice 365へのデータ移行に適したソリューションです。このソリューションは、あらゆる場所にあるPSTファイルを検出し、全データを指定の場所へと移行する機能を備えています。Drive Shippingは、ドライブにデータを移行する設定を行い、そのドライブをMicrosoftに送付するだけなので、操作も簡単です。

すべてのデータを移行するべきではない

Office 365などのオンラインソリューションでは、ほぼ無制限にストレージ容量を使用できますが、実際に必要なデータのみを移行することをお勧めします。Drive Shippingですべてのデータを簡単に移行できるからといって、すべてを移行しなければならないわけではありません。

Office 365への移行は、データの保管と削除に関する戦略を策定し、バラクーダネットワークスのPST Enterpriseなどポリシーベースの移行ツールを活用する絶好のチャンスです。PST Enterpriseでは、重複データを自動的に検出し削除できるので、会社にとって価値ある情報のみを移行できます。適切に管理されていないファイルやメールを大量に保管しておくことで発生するリスクを軽減または排除できるだけでなく、コンプライアンスやeディスカバリのニーズにも対応します。

インターネットでデータ送信するハイテクな方法と、ディスクを物理的に送付するローテクな方法のどちらを採用するにしても、データ量が少ないほど移行にかかる時間も短くなり、コスト削減、管理の簡素化にもつながります。

Office 365への移行でBarracuda PST Enterpriseを活用する方法は、こちらをご覧ください。

※本内容はBarracuda Product Blog 2015年2月19日The challenge of moving data to the cloudを翻訳したものです。

Peter Mullens

本稿は、バラクーダネットワークスのWebサイトに掲載されている『バラクーダラボ』3月12日付の記事の転載です。