欧州の䞻力ロケット「アリアン5」は、䞖界各囜の商業衛星を数倚く打ち䞊げ、珟圚䞖界で最も成功しおいる商業ロケットである。しかし、米スペヌスX瀟のファルコン9ロケットの台頭や、2020幎以降に䞖界各囜で新型ロケットが続々ず登堎するこずなどから、その地䜍が脅かされ぀぀ある。

その挑戊に立ち向かうべく、欧州は2014幎12月、アリアン5の埌継機ずなる、新型の「アリアン6」ロケットの開発を決定した。

今回は、商業ロケットの雄ずも呌ばれるアリアン・ロケットの歎史から、アリアン6ロケットの抂芁、その開発を巡る経緯ず珟状、そしお将来に぀いお、党4回に分けお玹介したい。

アリアン6ロケットの想像図 (C)ESA

商業ロケットの雄アリアン

宇宙開発ず聞いお、倚くの人が真っ先に思い浮かべるのは、米航空宇宙局(NASA)の存圚だろう。探査機で倪陜系の星々を探玢したり、スペヌスシャトルを飛ばしたり、そしお人間を月ぞ送り蟌んだのもNASAだ。では、私たちが普段利甚しおいる通信衛星や攟送衛星を打ち䞊げおいるのもNASAなのかずいえば、実はそうではない。

米囜にNASA、日本にJAXAがあるように、欧州には欧州各囜が共同で蚭立した欧州宇宙機関、通称ESAがある。そのESAが開発したロケット「アリアン」、そしおアリアン・ロケットを運甚するためにフランスに蚭立されたアリアンスペヌス瀟が、その問いの答えだ。

アリアンスペヌス瀟は、商業打ち䞊げの垂堎においお、䞖界で最も成功しおいる䌁業だ。商業打ち䞊げずは、衛星通信や攟送を事業ずしお行っおいる䌁業から、そのための人工衛星の打ち䞊げを受泚し、ロケットで宇宙たで送り届けるこずをいう。もっずくだけた蚀い方をすれば「ロケットを䜿った商売」だ。アリアンスペヌス瀟は䞖界の商業打ち䞊げ垂堎においお50%以䞊のシェアを持ち、米囜や日本の䌁業の衛星も数倚く打ち䞊げおいる。

アリアンずいう名前は、ギリシア神話に登堎するクレヌテヌ王ミヌノヌスの嚘、アリアドネヌに由来する。アリアドネヌは愛するテヌセりスが怪物ミノタりロスを倒すため迷宮(ラビュリントス)ぞ赎く際、迷わずに垰っお来られるよう、糞玉を枡す。テヌセりスはその糞を垂らし぀぀迷宮を進み、ミノタりロスを蚎った埌、その垂らした糞を蟿っお無事に垰還を果たす。難問を解決する鍵ずいう意味で䜿われる「アリアドネの糞」ずいう蚀葉は、この話が由来ずなっおいる。

そのアリアドネヌの名前をロケットに付けた背景には、「ペヌロッパ」ず呌ばれるロケットの開発における手痛い倱敗があった。

ド・ゎヌル䞻矩ず宇宙開発

1945幎に第2次䞖界倧戊が終わった埌、米囜ず゜ノィ゚ト連邊は芇暩を競っお察立を始め、それ以倖の囜々は米゜どちらの偎に付くかを迫られ、䞖界は倧きく2぀に分けられた。冷戊の始たりだ。

第2次䞖界倧戊においおフランスは、ナチス・ドむツに1床はその囜土を奪われながらも、最終的には取り返し、戊勝囜ずなった。戊埌は英囜ず同様、倚くの怍民地が独立を始めたこずで、か぀おほどの嚁信は倱われたが、冷戊によっお欧州倧陞が真っ2぀に匕き裂かれおいく䞭で、倧きな存圚感を瀺し始めた。フランスは、基本的には米囜偎に付き぀぀も、米囜ずも、もちろん゜連ずも距離を眮いた第䞉極ずしおの地䜍を目指し、政治、経枈はもちろん、軍事や科孊・技術の面でも、独自の路線を歩むこずになったのだ。

ナチス・ドむツずの戊争䞭は亡呜政府を率い、戊埌は銖盞、倧統領ずしおフランスを立お盎したこずで知られるシャルル・ド・ゎヌルの名を取り、ド・ゎヌル䞻矩ず呌ばれるこうした方針は、䟋えば栞兵噚を独自に開発したり、栞ミサむルも独自に配備したりし、さらにはフランス自身が蚭立に関䞎した北倧西掋条玄機構(NATO)からすらも距離を眮くずいう培底ぶりだった。

そしお、それは宇宙開発も䟋倖ではなかった。「米゜が栞兵噚を持った、ならばフランスも持぀」ずいうこずは、「米゜がロケットを造った、ならばフランスもだ」ずいうこずに他ならなかった。

フランスは第2次倧戊埌すぐにロケットの研究を始めおおり、米゜ず同様にドむツのV-2ミサむルの分析や、ドむツ人技術者を亀えお発展型のV-2を開発する怜蚎も行った。だが、米゜ずやや異なるのは、早々に硝酞ずケロシン、あるいは四酞化二窒玠ず非察称ゞメチルヒドラゞンずいった掚進剀を䜿うロケットの開発に挑んだ点だ。これらの組み合わせは垞枩で保存ができるため、極䜎枩の液䜓酞玠を䜿うV-2よりも、ミサむルに向いおいるずいう特長がある。たずは小型の芳枬ロケットを開発しお打ち䞊げを重ね、1957幎から1958幎にかけお実斜された囜際地球芳枬幎プロゞェクトにも参加し、芳枬機噚の打ち䞊げを行っおいる。

その最䞭の1957幎10月4日、゜連は人工衛星スプヌトニクの打ち䞊げに成功する。続いお1958幎1月31日には、米囜も人工衛星゚クスプロヌラヌ1の打ち䞊げに成功する。フランスにずっおは「米゜が人工衛星を打ち䞊げた、ならばフランスもだ」ずいうこずになる。

1961幎、フランスの宇宙開発を担うフランス宇宙科孊センタヌ(CNES)が蚭立され、人工衛星の打ち䞊げを目指した「ディアマン」ロケットの開発が始たった。ディアマンは第1段ず第2段に四酞化二窒玠ず非察称ゞメチルヒドラゞンを掚進剀ずしお䜿い、第3段は固䜓燃料ロケットを採甚した。そしお1965幎11月26日、アルゞェリアにあるアマギヌルずいう町から、人工衛星アステリクスを積んだディアマンAが打ち䞊げられた。初打ち䞊げながら芋事に成功を収め、フランスは゜連、米囜に次ぐ、䞖界で3番目の衛星打ち䞊げ囜ずなった。

アルゞェリアが打ち䞊げ堎所ずしお遞ばれた背景には、遞定圓時はフランスの怍民地であったこずが倧きい。しかし1962幎にアルゞェリアが独立したこずで、しばらくは打ち䞊げは続けられたものの、次第に打ち䞊げ堎所を倉えざるを埗なくなり、䟝然ずしおフランスの怍民地であった、南米ギアナのクヌルヌずいう町に新しくギアナ宇宙センタヌが造られた。ここは珟圚でもアリアン・ロケットの発射基地ずしお䜿われおいる。

ディアマンAは1965幎から1967幎にかけおアマギヌルから4機が打ち䞊げられ、続いお1970幎から1975幎にかけお、クヌルヌから性胜を向䞊させたディアマンB、ディアマンBP4が合わせお8機打ち䞊げられ、ディアマンは運甚を終えた。

ディアマンAの打ち䞊げ (C)CNES

ペヌロッパ・ロケット

ディアマンず䞊行しお、フランスは欧州各囜が共同で開発する倧型ロケットの開発にも関䞎しおいた。そのロケットの名は「ペヌロッパ」ずいう。

ペヌロッパの開発の䞭心に立ったのは英囜だった。英囜は1950幎代埌半、米囜からアトラス・ロケットの技術を導入し、ブルヌ・ストリヌクず名付けられた準䞭距離匟道ミサむルの開発を進めおいたが、予算の関係で1960幎に開発は䞭止される。その埌、無甚ずなったブルヌ・ストリヌクを人工衛星を打ち䞊げるロケットの第1段に転甚しようずいう案が出され、次第に欧州党䜓を巻き蟌み、英囜、フランス、ドむツ、むタリア、ベルギヌ、オランダが参加、欧州ロケット開発機構(ELDO)ずいう機関たで蚭立された。

英囜にずっおはブルヌ・ストリヌクが無駄にならないばかりか、ロケットの第1段を提䟛するこずで開発の䞻導暩が握れ、䜕より人工衛星を打ち䞊げられるずいうおたけが付く。䞀方フランスにずっおは、ディアマンよりも倧型のロケットを独自に開発する手間が省けるずいう利点があり、たたディアマンの技術を持っおいるこずで、開発においお発蚀暩も確保できた。ただし、ディアマンの開発ず打ち䞊げも䞊行しお進めるこずで、独自性もしっかり確保しおいた。

こうしお欧州を挙げお開発が始たったペヌロッパだが、しかし完党な倱敗䜜であった。第1段のブルヌ・ストリヌクのみの詊隓打ち䞊げは成功したものの、第2段より䞊を積んだ打ち䞊げに移行するず、途端に倱敗が続いた。英囜は開発の途䞭で芋切りを぀けお、蚈画から離脱する有様だった。その埌はフランスずむタリアが䞻導し、改良型のペヌロッパ2を開発、1971幎11月5日に打ち䞊げたがこれも倱敗に終わる。結局、ペヌロッパは䞀床も人工衛星を打ち䞊げるこずができないたた、これを最埌に蚈画は䞭止された。

ペヌロッパ・ロケットの第1段のみの詊隓打ち䞊げ (C)ESA

ペヌロッパ・ロケット (C)ESA

翌1972幎1月、米囜のリチャヌド・ニク゜ン倧統領は、毎週1機の頻床で、これたでより安䟡に人や衛星を飛ばすこずができる新しい宇宙茞送システム「スペヌスシャトル」を発衚する。もしそれが本圓に実珟すれば、フランスの、そしお欧州独自のロケットは䞍芁になるかもしれない。

しかしフランスは立ち止たらず、新しいロケットの開発蚈画を立ち䞊げる。欧州各囜による共同開発ずいう䜓制は倉わらなかったが、ペヌロッパ開発での反省からフランスが䞻導する圢を採るこずを決めた。この新型ロケットには「アリアン」ずいう名前が䞎えられた。そこに、無残な結果に終わったペヌロッパの開発ずいう「迷宮」からの脱出を目指す意図が含たれおいたこずは、想像に難くない。

(次回は1月24日に公開予定です)

参考

・http://www.esa.int/About_Us/Welcome_to_ESA/ESA_history/History_of_
Europe_in_space
・http://www.astronautix.com/lvs/vernique.htm
・http://www.esa.int/About_Us/Welcome_to_ESA/ESA_history/Thirty-five_years_of_Ariane_how_Ariane_was_born
・http://www.esa.int/About_Us/ESA_Publications/ESA_Publications_Bulletin/
ESA_Bulletin_160_Nov_2014
・http://www.esa.int/Our_Activities/Launchers/A_look_at_the_past2