初心者でも手軽に扱える廉価な動画編集アプリケーション「Filmora」を活用して、AI技術が動画編集にどのような革新をもたらすかを解説する本連載。
Filmoraが提供するAI機能を活用して、初心者でもプロフェッショナルな動画編集が可能となる手法を紹介するとともに、具体的な使用例とともに各機能を解説し、効率的な動画編集の可能性を明らかにしていく。
生成AIがもたらす効果は劇的だけど……
ChatGPTの登場以来、生成AIなどのAI技術を使った機能がさまざまな業界で急速に広まっている。OpenAI ChatGPT、Microsoft Copilot、Google Geminiといった汎用的なチャットサービスを筆頭に、それぞれの業界に特化したAI機能の利用が進んでおり、意識しない状態でも実はAI機能を使っているという状況になりつつある。
生成AIがもたらす業務改善の効果は劇的だ。うまく活用できたケースでは何十倍、何百倍という時短が実現している。一方、生成AIについて理解が及んでいない業界などは、この強力な革新のチャンスを生かせないでいる。
AIを活用するという経験の不足もあるが、ChatGPTやCopilot、Geminiといった汎用チャットサービスがこなせる内容が広すぎるため、どのように利用すればよいのかわからなくなっているように見える。
そこで本連載では、具体的な用途を取り上げて、どのような機能にAI機能を使われているのかを短期連載で紹介していく。第1弾では動画編集に焦点を当てる。
AIで変わる動画編集の世界
昨今、YouTubeやInstagram、TikTokなど、人気の高い動画プラットフォームの利用は増える一方だ。こうした動画プラットフォームに投稿される動画コンテンツは当然ながら編集が行われており、キャッチーでおもしろくなるように工夫されている。
日々大量に投稿されるこれら動画は、当然ながら人の手で編集されている。どれだけ効率よくこうした編集を行うことができるかが腕の見せどころだ。動画撮影、撮影素材確認、ラフカット、テロップ挿入、画像挿入、BGM挿入、SE挿入、アニメーション挿入などをこなしつつ、当然ながら対象SNSでアクセスが伸びるように編集する必要もある。基本的な編集知識にある程度の編集経験も必要だ。
こうした現実を見ると、動画編集は敷居が高いように思えるが、ここ数年で動画編集ソフトウェアにAI機能の導入が進み、短時間でさまざまなことをできるようになった。ものによってはほぼ全自動で動画を生成できるものもある。
もっとも、こうした機能が登場したからといって人間が不要になるということはない。最終的に作業をするのは人間であり、あくまでも人間が編集に使う機能にAIが使われるという状況だ。今後、動画編集を効率的に行えるかどうかは、以前からの編集テクニックの習得に加え、こうしたAI機能をどこまで理解し活用できるかがポイントになる。
そして現在、さまざまな動画編集ソフトウェアが提供されている。プロユースであれば「Adobe Premiere Pro」は外せないし、Macを使っているなら「Final Cut Pro」を考えるはずだ。これらソフトウェアは素晴らしい機能を提供している。ただし、これから動画編集を試してみようというユーザーにとって、これら製品はちょっとばかり躊躇する価格帯でもある。
そこで、本連載では、AI機能を使えつつも、比較的価格が廉価な「Wondershare Filmora」を使っていく。Filmoraはそれほど効果ではないがAI機能の利用が可能だ。UI/UXがシンプルでわかりやすく、ビギナーが最初に取り組むソフトウェアとして人気がある。
動画編集の基本
動画の編集をまったくしたことがない方向けに、基本的な編集方法を説明しておく。編集者ごとにやり方があるので正解あるわけではないが、多くの方が以下のよう7な流れで動画の編集をしていると思う。
- 粗めのカット(無音除去、雑音除去、繰り返し除去など)
- 細かいカット(テロップ入れながら細かいカット)
- 画像の挿入
- BGMの挿入
- 効果音の挿入
- アニメーションの挿入
- 最終確認
- 書き出し
動画編集ソフトウェアはこれら操作ができるようになっている。上記の作業をそのまま行っていては時間がかかりすぎるので、さらにショートカット、テンプレート、プリセットを活用して、素材の事前に整理整頓などを行うと作業効率に結びついてくる。
AI機能は上記において人間が行っている操作の一部を代替するようなものだと考えてもらえるとわかりやすい。
AIクレジットという専用の課金システム
FilmoraにおいてAIを活用した機能は無償で利用できるものと、AIクレジットを消費するものがある。AI関係の機能を使う場合は「AIクレジット」が必要になることが多い。AIクレジットを持っているかどうかは、契約内容によって異なる。無償ベースのままでは使えないAI機能が多いということは覚えておこう。
消費するAIクレジットは機能や対象データ量ごとに異なっており、ケースバイケースで使うことになる。消費するAIクレジットはバージョンごとに変わっていくことが予測されるので、その時々に応じて確認してから使うようにしよう。
この仕組みはFilmoraに限らず、AI機能を利用するほかのアプリケーションでも採用されている。本体の購入代金またはサブスクリプションとは別に、AI関係の機能を使うにはクレジットが必要になるというものだ。クレジットは一定期間経つと自動的に補充される仕組みになっているものもあれば、追加購入が必要なものもある。新しいバージョンがリリースされると以前からあるAI機能は無償になったり、消費するクレジットが下がったりすることもある。このような仕組みを採用しているケースがあることは知っておこう。