2018年に予定されている、注目のロケットの打ち上げや、衛星、探査機の活動を紹介する連載。
第1回では1月から4月までの、第2回では5月から8月までの予定について、第3回では9月から12月までの予定について紹介した。
第4回では、正確な日時は未定なものの、2018年中に予定されている、改良型ファルコン9ロケットや他の超小型ロケットの打ち上げ、衛星インターネット、宇宙旅行の実現に向けた試みについて紹介。
上半期?:究極のファルコン9ロケット「ブロック5」がデビュー
2017年、大きな話題となったスペースXの「ファルコン」ロケットの再使用と、それによる打ち上げコストの低減への挑戦。そのファルコン9の改良型となる「ファルコン9 ブロック5」(Falcon 9 Block 5)が、今年デビューする。
ブロック5ではエンジンの推力が上がるなどして打ち上げ能力が増すほか、耐熱シールドやフィンの素材の見直しなどによって、機体の回収がしやすくなり、再使用できる回数も増加。さらに最短24時間での再打ち上げも可能になるという。
ブロック5はまた、有人飛行ができる基準に適合した機体にもなっており、今年以降に始まる予定の「ドラゴン2」宇宙船による有人飛行にも用いられる。
ブロック5はファルコン9の最新にして最後の改良になる予定で、ひとたび運用が始まれば、スペースXは再使用を繰り返して衛星を続々と宇宙へ打ち上げると共に、火星移民も目指した後継機となる巨大ロケット「BFR」の開発に注力できることになる。
10月以降?:韓国の新型ロケット「KSLV-II」の試験機の打ち上げ
韓国が開発を進めている国産の新型ロケット「KSLV-II」。そのエンジンの一部だけを使った試験機の打ち上げが、早ければ今年10月以降にも予定されている。
KSLV-IIは第1段に新開発の推力75トンf級エンジンを4基装備し、第2段にはそれを1基、第3段には推力7トンf級のエンジンを装備する。10月以降に予定されているのは、その75トンf級エンジンを1基のみ装備したロケットの試験打ち上げで、実際の飛行環境の中できちんと作動するかどうかなどの実証が行われる。
韓国では2020年にもKSLV-IIを完成させ、衛星打ち上げに使うとともに、2030年ごろには月面着陸を目指すとしており、この10月の試験はその目標に向けた一里塚となる。ただ、技術や予算の問題から、順調に進むかどうかはまだわからない。
未定: 超小型ロケット「ローンチャーワン」の初打ち上げ
世界中で開発が進む超小型ロケットの中で、有力候補のひとつと目されているのが、リチャード・ブランソン氏率いるヴァージン・グループのひとつであるヴァージン・オービット(Virgin Orbit)の「ローンチャーワン」(LauncherOne)である。
ローンチャーワンは、ボーイング747から空中発射する形式のロケットで、低軌道に約500kgの打ち上げ能力をもつ。
すでに商業打ち上げ契約も獲得しているなど、エレクトロンと並んで、完成と運用開始が待たれているロケットである。
未定:衛星インターネット「ワンウェブ」、衛星を初打ち上げ
数千機の小型衛星を地球を覆うように打ち上げ、全世界をインターネットでつなげようとする企業ワンウェブ(OneWeb)。一昨年末にはソフトバンクが約10億ドルを出資することを決め、大きな話題になった。
そのワンウェブが、いよいよその衛星を打ち上げを開始する。
当初同社は、約700機の衛星を打ち上げるとしていたが、昨年2月にはさらに約2000機を追加し、合計で3000機近い衛星を配備する構想を打ち出している。
衛星1機あたりは150kgほどの小型衛星で、この最初の打ち上げでは、10機の衛星をまとめて1機のソユーズ・ロケットに搭載し、南米仏領ギアナにあるギアナ宇宙センターから打ち上げることになっている。またその後の打ち上げでは、ローンチャーワンや、ブルー・オリジンが開発中の「ニュー・グレン」を使うことも計画されている。
また、スペースXやボーイングなども独自に衛星インターネット計画を進めているとされ、今年からその競争がさらに激化するかもしれない。
未定: ヴァージンの宇宙船「スペースシップツー」、宇宙へ
高度100kmへの宇宙旅行を目指す、ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」(SpaceShipTwo)。2014年に1号機が墜落事故を起こすも、気丈に立ち直り、現在は2号機「ユニティ」(Unity)による滑空飛行試験が続いている。
そのユニティの滑空飛行試験は佳境を迎えており、いよいよ今年中にも、ロケットエンジンを噴射して飛行する試験を始めるとされる。また試験が順調に進めば、高度100kmの宇宙まで行って帰ってくる飛行も行われるかもしれない。
最新の報道では、早ければ2018年中にも乗客を乗せた宇宙旅行サービスを始めるとされるが、安全性の確認など、実現にはまだハードルが残っており、正確な予定は公式には発表されていない。
未定: ブルー・オリジン、「ニュー・シェパード」による初の有人飛行
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が立ち上げた宇宙企業ブルー・オリジン(Blue Origin)もまた、高度100kmへの宇宙旅行の実現に挑んでいる。
同社のロケット「ニュー・シェパード」(New Shepard)はすでに無人での試験飛行を繰り返し行っており、高度100kmへの到達や、機体の再使用にも成功。運用開始に向けた準備を着実に整えつつある。
昨年末には、より実際の飛行に近い試験ができる最新型の試験機も登場し、おそらく今年前半まで無人の飛行試験を続け、早ければ今年中にも有人飛行、そして宇宙旅行サービスの提供が始まることになろう。
前述のスペースシップツーとどちらが先に、そして安価に宇宙旅行を実現させるのか、その開発競争にも注目が集まる。
未定:インターステラテクノロジズ「MOMO」2号機の打ち上げ
ロケット・ラボなど、米国を中心に超小型ロケットの開発が進む一方、日本でも宇宙企業インターステラテクノロジズが活発に活動を続けている。
同社は昨年7月、観測ロケット「MOMO」の打ち上げ実験を実施。宇宙への玄関口となる高度100kmにまで到達することを目指していたが、飛行中にトラブルが起き、打ち上げそのものは失敗に終わった。
その後、同社では原因究明や対策、改良が行われ、現在は2号機の打ち上げに向けた開発と、資金調達のためのクラウドファンディングが行われている。
また並行して、超小型衛星を打ち上げるためのロケットの開発も進んでおり、2018年も同社の動向に注目される。
このほかにも、2018年には数多くのおもしろい打ち上げやミッションが予定されています。そのすべてについて取り上げるのは難しいかもしれませんが、可能な限りその動きや、成果や課題などを、正確に、そしてわかりやすくお伝えできればと思っております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
参考
・Virgin Orbit ・Virgin Galactic Hopes To Test SpaceShipTwo In Space In 2017 | Space content from Aviation Week
・Blue Origin | Crew Capsule 2.0 First Flight
・JAXA | SS-520 5号機実験の延期について
著者プロフィール
鳥嶋真也(とりしま・しんや)宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。
著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info