無人機が無人機を撃ち落とす――そんな戦いが現実になりつつある。前回は、どちらかというと低速で安価な自爆無人機を迎え撃つことを主眼としている(と思われる)機体として、ウクライナ製のSTINGと、フランス製のGOBIを取り上げた。今回はエアバスやレイセオンの事例から、その最前線を見ていく。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照
エアバスのLOADは体当たり無人機を3機搭載
エアバスは2025年3月に、LOAD(LOw-cost Air Defence)の構想を披瀝した。その正体は、すでにあるエアバスDo-DT25無人標的機を使って、C-UASを実現しようというもの。
ちなみにLOADでは、搭載するのは“空対空ミサイル”ではな“kamikaze drones”だといっている。つまり無人機から無人機を飛ばして、しかも飛ばした無人機は片道切符。ターゲットに体当たりして撃墜することになる。前回に取り上げたSTINGやGOBIと同じだ。
ただ、迎撃手段として安価な無人機を使うと、スペックはそれほど欲張れない。だから速度や航続距離は、あまり期待できない可能性が高い。射程を伸ばそうとすれば機体は大きくなるし、遠方にいる目標を確実に捕捉追尾するために、シーカーや誘導制御のシステムが高度になる。
それなら、エフェクターを別の機体に載せてターゲットの近くまで持って行く方がシンプルに済むかもしれない。
と、そんな考えからLOADの構想が出てきたのだろうか。母機となるLOADはカタパルトで発進して、100km以上も遠方まで進出できるとしている。飛来する敵無人機の近くまでLOADを飛ばして、そこでエフェクターを発進させて交戦すれば良い。
そのLOADのエフェクターとして、個人携行用ミサイル・エンフォーサー(Enforcer)の派生型、SADM(Small Anti-Drone Missile)を使用するとの話が伝えられている。その通りであれば、おそらくSTINGやGOBIほど安価にはならないのではないか。
Do-DT25標的機は、最大速力550km/h、航続時間60分、行動半径110km、運用高度35~33,000ftとの性能を持つ。この母機の飛行性能、そしてエフェクターがSTINGやGOBIと比べてハイスペックなものになりそうという二点からすると、LOADはSTINGやGOBIよりも上のクラスの脅威を想定しており、かつリーチの長さを重視しているといえそうだ。
レイセオン、無人機を撃ち落とす「コヨーテ」の実力
無人機で無人機を迎え撃つ話は、アメリカでもしばらく前から出ていた。それが、RTXのレイセオン部門が手掛けている「コヨーテ」。この機体は第182回でも取り上げたことがあるが、このときには「ハリケーン観測」がお仕事だった。また、コヨーテによるC-UASは第291回でも取り上げたことがある。
C-UAS用のコヨーテ・ブロック1は全長600mm、折り畳み式の主翼を備えており、翼幅は1,473mm、重量5.9kg。車載式のボックス・ランチャーから撃ち出して、電動機とプロペラを使って130km/hで飛翔する。
コヨーテは、キャニスターから撃ち出して主翼を展開して飛行する。そういうところは、以前に取り上げた自爆突入型無人機、UVision製Heroと似ている。ただし構造には違いがある。
コヨーテは先端部だけが円筒形になっていて、そこにセンサーや弾頭を組み込んでいる。なお、炸薬弾頭を搭載して物理的に無力化する方法に加えて、電子戦ペイロードを搭載してソフトキルする方法も、試験で試している。付随的被害の低減に加えて、一度に複数の機体に影響を及ぼすことができるのが、電子戦によるソフトキルの利点だ。
その後方の胴体は角形断面で、機首から左右に展開する主翼は胴体の上部に、尾部から左右に展開する水平尾翼は胴体の下面に、それぞれ重なる形になる。そのほか、尾部に垂直尾翼を2枚立てるが、これは胴体の左右に重なる形で収容する。主翼も尾翼も定規みたいなシンプルな形をしていて、いかにも製造コストは安そうである(褒めてます)。
推進用の電動機とプロペラは後端部に付いていて、これは無人機だとよくある形。なお、プロペラも折り畳み式になっていて、キャニスターから飛び出した後で展開する構造になっている。
コヨーテには、ブロック1と同様の推進方式だが、やや大型化して、洋上の無人船(USV)あるいは無人潜水艇(UUV)から発射する、ブロック3という派生型もある。このモデルは直撃破壊を企図していないようで、ターゲットに接近したところで1.8kgの弾頭を起爆させる設計だという。
「撃墜」だけじゃない、無人機を止める方法
具体例を挙げ始めると際限がないので、ひとまずこれぐらいにしておいて。
ここまで出てきたハードキルの方法は、炸薬を起爆させて破壊する方法、あるいは直撃して破壊する方法。それと、電子戦(電波妨害)によるソフトキルである。ところが、相手が無人機になると、それに適応した無力化手段が出てくるのが面白い。
それが、空中にネットを展開する手法。相手がプロペラやローターで推進するのであれば、ネットを展開して絡め取ってしまえというわけで、なにやら昔の阻塞気球を思わせるものがある。まさに「歴史は繰り返す」。
また、こうやって無人機迎撃用無人機が広く使われるようになってきたため、自爆無人機の側でも「後方監視カメラを設けて、迎撃用無人機か接近してきたら回避機動をとる」なんていう話が出てきているらしい。
それが当たって威力を発揮すれば、迎撃用無人機の側もなんらかの対抗手段を持ち込むことになるだろう。かくして、どちらも側も高度化・複雑化・価格上昇に見舞われる可能性が出てくる。そうなればまた、違う発想で安価なソリューションが考え出されることになるのではないか。
無人機迎撃はミサイルと何が違うのか
ともあれ、「無人機で無人機を撃ち落とす」という話が現実のものになってくると、ひとつ、議論の種ができそうだ。
つまり「自爆突入型無人機と対地ミサイルは何が違うんだ?」と同じデンで「無人機迎撃用無人機と対空ミサイルは何が違うんだ?」ということになる。無人機迎撃用無人機は「飛行機の一種」として作られているのが相違点、と強弁することもできるが、やや説得力がない。
むしろ、「迎撃しなかったときには回収して再利用できる可能性があるところが、ミサイルとの最大の違い」という方が、説得力がある。
もっとも、「敵無人機の排除」という任務を達成する観点からすれば、使用する手段の分類は、極端な話「どうでもいい」。ミサイルと名乗ろうが無人機と名乗ろうが、関係ない。とにかく敵の無人機を無力化してくれれば、それで良いのである。
もしも軍備管理条約が絡む話であれば、分類が問題になる可能性は高い。分類ごとに数量や能力を規制しなければならないからだ。しかし、そういう話がなければ、「何に分類されるのか」と口角泡を飛ばすのは時間の無駄というものだろう。
著者プロフィール
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。


