どんな新兵器でも、それが登場して威力を発揮すれば、対抗手段を考え出す人が現れる。それは無人機の分野も同じで、C-UAS(Counter Unmanned Aircraft System)は2026年現在、軍事分野におけるホットな課題の一つになっている。

ただしその際に、ミサイルや機関砲、あるいはレーザーを使用するだけとは限らない。「無人機で無人機を迎え撃つ」なんていう話も出てきている。毒をもって毒を制すというべきか。

  • 各国軍で広く使われる無人機同士が“戦う”時代に入った Photo:US.Army

    各国軍で広く使われる無人機同士が“戦う”時代に入った Photo:US.Army

なぜ対空ミサイルではダメなのか、コストの壁

もちろん、無人機とて「飛びモノ」の一種であることに変わりはないから、対空ミサイルで迎え撃つことに矛盾はない。ただ、1発が数十万ドルないしはそれ以上もする対空ミサイルで、はるかに安価なイラン製やロシア製の自爆無人機を破壊するのは、あまりにも費用対効果がよろしくない。

そもそも対空ミサイルというものは、遷音速~超音速で飛行している戦闘機でも撃墜できるように設計されている。それが、はるかに低速で機動性も低そうな、安い自爆無人機に対して使うのでは、オーバースペックとの誹りは免れ得ない。

それなら、もっと安価で数をそろえやすい迎撃手段があってもいいではないかということで、無人機を撃ち落とすための無人機という話が出てきた。速度がそれほど速くない上に、機動性が高いわけでもない無人機が相手なら、それに見合った性能があれば良い。凝った構造にする必要もないし、なんだったら3Dプリンタで機体構造を作ってもいい。

もしかするとそのうち、無人機を撃ち落とすための無人機を撃ち落とすための無人機が登場するのだろうか。

実戦投入された迎撃ドローン「STING」と「Octopus」

この手の機体をもっとも喫緊に必要としているのは、いうまでもなくウクライナである。そこで複数のメーカーが、この手の迎撃用無人機を開発・製造している。

そのひとつであるWild Hornets製のSTINGは、寸詰まりの胴体の側面に4基のプロペラ、それと2枚の短い主翼を備える構成。最大速力280km/h、航続距離37km、敵の無人機に衝突して直撃破壊する仕組みのようだ。

  • 敵ドローンに体当たりして撃墜する迎撃ドローン「STING」 出典:Wild Hornets

    敵ドローンに体当たりして撃墜する迎撃ドローン「STING」 出典:Wild Hornets

これがすでに、ロシアがウクライナに向けて放ったシャヒド無人機を3,000機ばかり撃ち落としたとされる。しかもこれは、数日間の訓練で使えるようになるという。取り扱いが容易にできることは、重要な要素である。

ちなみにお値段は1機あたり2,000ドル、月産1万機以上というからスケールが違う。シャヒドの方は2~5万ドルぐらいするそうなので、それと比べてもだいぶ安い。

なお、製造元のWild Hornetsでは、ジェット推進で、より高速な無人機に対抗できる迎撃用無人機も開発しているとのことだが、まだ詳細は明らかになっていない。

ウクライナで使われている同種の機体として、Octopusもある。こちらは終末誘導に画像認識を使用するため、映像を見ながら手作業で誘導するよりも扱いやすいという。この機体は2026年1月から、イギリス国内で製造を始めた。

  • ウクライナ軍が開発した迎撃ドローン「Octopus」 出典:ウクライナ国防省

    ウクライナ軍が開発した迎撃ドローン「Octopus」 出典:ウクライナ国防省

フランスでも登場、迎撃ドローン「GOBI」の仕組み

フランスに、Harmattan AIという会社がある。発足は2024年4月と若い会社だ。

ここで開発しているGOBIは、これまた寸詰まりの胴体の側面に、4基のプロペラを取り付けた構成。つまりSTINGと同じ形態である。ただし、STINGと違って主翼は生えていない。これを発射機に収容して作戦地域に持ち込む。

まず、無線通信の傍受によって敵UAVの活動を検出した上で、機体を発進させる。地上からの中間誘導で敵UAVに接近した後で、飛翔経路と速力を調整しながら交戦コースに乗り、赤外線センサーとレーダーによる終末誘導を経て直撃破壊する仕組み。炸薬を用いないのは付随的被害を避けるためだと説明されている。

サイズは32cm×34cm×34cm、重量2.2kg。そして、巡航速力250km/h、最大速力350km/h、交戦可能範囲5kmというから、なるほど脅威に見合った飛行性能ではある。

迎撃ドローンはなぜ似た形になるのか

STINGにしろGOBIにしろ、寸詰まりの胴体の側面に4セットの推進用プロペラを突き出させた構成は共通している。必要な機能と飛行性能を持たせて、かつ、安価にまとめようとしたらこの形態に行き着いた、ということであろうか。

全長は短いし、プロペラもそれほど大きいものではないので、収納スペースを小さくできる利点も考えられそうだ。ただし、プロペラの推進力だけに頼って地上から上方に向けて飛び立つとなると、加速力が不足しないだろうか。カタパルトのような仕掛けがある方が良くないだろうか。

と心配したのだが、STINGは地べたの上に直に置いて飛び立たせているようなので、特に問題にはなっていないようである。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。