米軍のうち海兵隊でも、空軍や海軍と同様に、CCA(Collaborative Combat Aircraft)、すなわち “忠実な僚機” とも呼ばれる無人戦闘用機の計画を進めている。今回は、このCCAを取り上げる。→連載「航空機の技術とメカニズムの裏側」のこれまでの回はこちらを参照

  • 米海兵隊が導入するCCAは、このクラトスXQ-58Aがベース Photo : USAF

    米海兵隊が導入するCCAは、このクラトスXQ-58Aがベース Photo : USAF

クラトスXQ-58Aにノースロップ・グラマンのソフトウェア

計画の名称は「MUX TACAIR(Marine Air-Ground Task Force Uncrewed Expeditionary Tactical Aircraft)」という。直訳すると、「海兵空地任務部隊向けの、遠征作戦に使用する無人戦術機」ぐらいの意味になる。

しかし、以前に出ていた名称・PPACK-P(Penetrating Affordable Autonomous Collaborative Killer - Portfolio)の方が、実態をよく示しているかもしれない。「敵地に侵攻する、取得性が高い、(有人機と)協調するタイプの攻撃用機」というぐらいの意味になろう。

機体の担当メーカーは、クラトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズで、同社がすでに米空軍向けにも納入しているXQ-58Aヴァルキリーを使用する。もともと、空軍がXQ-58Aを取得したときの計画名称はLCASD(Low-Cost Attritable Strike Demonstrator)だった。この空軍向けの機体は、2019年から飛んでいる。

そして2026年1月8日に、このXQ-58Aにノースロップ・グラマンの自律制御ソフトウェア、Prismを組み合わせるとの発表があった。

クラトスは安価な無人機を作るノウハウを持っている。そこに、ノースロップ・グラマンのセンサー技術や自律制御ソフトウェアを組み合わせることで、いわば「いいとこ取り」を狙った構図。この両社が2億3,150万ドルの契約を獲得して、機体の開発・製作を進めることになった。

また、海兵隊は2026年度に5,800万ドルの資金を要求しており、これを用いて完全統合型ミッション・システムを備えた試作機を取得して、離着陸能力や重要システムの実証・評価に充てる予定だとしている。

XQ-58Aは、全長8.8m、全幅6.7mとコンパクトな機体で、最大速力はマッハ0.85。機内に2カ所の兵器倉を備えており、合計8基の兵装搭載用ハードポイントを持つ。各々のハードポイントのキャパシティは250kgと小さいが、これでも500ポンド級のJDAM(Joint Direct Attack Munition)や、GBU-39/B SDB(Small Diameter Bomb)インクリメント1、あるいはALTIUS-600無人機といった軽量のエフェクターなら搭載できる。

そして、「すでに機内兵器倉を備えた状態になっている無人戦闘用機」かつ「開発の時期が早く、それだけ熟成が進んでいる」ということで、実用に近いところにあるとはいえる。実際、メーカーでは「すでに実績があり、量産に入れる機体」だと説明している。

XQ-58Aに組み合わせるRATOとKTLS

米軍全体での機種統一は、調達や兵站支援の合理化につながる。だから、海兵隊も海軍や空軍のCCA計画に相乗りするのが合理的、という考え方にも理はある。にもかかわらず、そうはならなかった。

前述したように、XQ-58は空軍でも試験に用いた機体ではあるが、これはあくまで試験用。空軍は実用版のCCAとして別途、YFQ-42やYFQ-44といった機体の開発を進めている。

一方、海兵隊はXQ-58Aヴァルキリーを採用することになった。海兵隊向けのXQ-58Aは2023年10月3日にフロリダ州のエグリン空軍基地で最初の飛行試験を実施しており、それから2年あまりの蓄積がある。その間にさまざまな試験を実施してきている。

  • ロケット・ブースターを取り付けた状態のXQ-58A。なにやらサンダーバード2号を思わせるものがある Photo : USAF

    ロケット・ブースターを取り付けた状態のXQ-58A。なにやらサンダーバード2号を思わせるものがある Photo : USAF

  • そのロケット・ブースターを作動させて離陸するXQ-58A。これなら滑走路は要らない Photo : USAF

    そのロケット・ブースターを作動させて離陸するXQ-58A。これなら滑走路は要らない Photo : USAF

そこで注目したいのが、2024年の夏に2号機を用いて実施した、KTLS(Kratos Trolley Launch System)による発進の実証試験。KTLSは、機体を無動力のトロリーに載せて滑走・離陸させる仕組み。

このKTLSの試験を実施するまでは、補助ロケットすなわちRATO(Rocket Assist Take-Off)を用いて離陸させていた。RATOを使用すると、滑走路がなくても離陸ができる。これは、米海兵隊が推進している作戦概念・EABO(Expeditionary Advanced Base Operations)とのマッチングが良い。

EABOでは、敵がいない小さな島嶼に海兵隊の小規模部隊を送り込む構想だから、そんな場所に整備された滑走路があるはずもない。そんなものがあれば、敵軍が先に占領している。

しかしRATOがあれば、滑走路がない場所に密かにXQ-58Aを持ち込んで発進させる、ゲリラ的な運用が可能になると期待できる。2019年に初めてXQ-58Aが進空したときには、RATOを用いて離陸した後、パラシュートで回収した。この手法を引っ張り出せば、滑走路不要での運用が可能となろう。

一方、KTLSを使う場合には機体のエンジン推力に頼って加速して、機体が離昇速度に達すると自動的に浮き上がる。地上に残されたKTLSの方は、減速用パラシュートで行き脚を止める仕組み。以下の動画でお分かりのように相応の滑走距離が必要であり、滑走路不要というわけには行かない。しかしこれにもメリットがある。

Kratos Valkyrie Trolley Launch System

RATOとKTLS、それぞれのメリット

「撃ち落とされても諦めがつく」のがCCAの利点だが、撃ち落とされずに戻ってこられるのであれば、それに越したことはない。すると着陸の方法が問題になる。通常の降着装置を用いて滑走路に降りる場合には、機内に降着装置を組み込むスペースが必要になる。

しかし、RATOやKTLSを用いて離陸させて、パラシュートで回収することにすれば、機体側に降着装置を取り付ける必要がなくなる。降着装置を収容するスペースが要らなければ、機内兵器倉のスペースを拡大できるかも知れない。

なんにしても、EABOの観点からXQ-58Aの短距離離着陸性能が買われたのは確かなようである。あくまで運用概念が先にあり、それに適合する機体を取得するということだ。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナ4ビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。このほど、姉妹連載「軍事とIT」の単行本第6弾『軍用通信 (わかりやすい防衛テクノロジー)』が刊行された。