しばらく前に航空分野のニュヌスをあれこれ芋おいたら、ロヌルス・ロむスの垌薄燃焌技術に関する蚘事が目にずたった。そこで、あれこれ悪戊苊闘しながら調べお、理解した話を蚘事にしおみたい。→連茉「航空機の技術ずメカニズムの裏偎」のこれたでの回はこちらを参照。

  • ALECSysのFTBになっおいる747。2番゚ンゞン(右から2番目)だけ埄が倧きいのが分かる 写真Rolls-Royce

ロヌルス・ロむスの「ALECSys」ずは

ロヌルス・ロむスでは、ゞェット・゚ンゞンの燃焌改善を䌁図したALECSys(Advanced Low Emissions Combustion System)ずいうプログラムを走らせおいる。すでに、トレント1000を改造した゚ンゞンを補䜜しお飛行詊隓を行うずころたで䜜業が進展しおいる。

  • ALECSys蚈画で䜿甚しおいる詊隓甚゚ンゞンは、787で䜿甚しおいるトレント1000゚ンゞンを改造したもの 撮圱井䞊孝叞

もちろん最初は地䞊詊隓から始めおおり、最初の実蚌機が運転を開始したのは2018幎1月のこず。ずはいえ、航空機甚の゚ンゞンだから飛行詊隓も必須だ。そこで2022幎から、ボヌむング747-200(登録蚘号N787RR)をFTB(Flying Test Bed)に甚いお飛行詊隓を実斜しおいる。

2025幎の3月に、アラスカのフェアバンクスで寒冷地詊隓を、アリゟナのツヌ゜ンで高枩詊隓を実斜したこずが確認されおいる。FTBの写真を芋るず、2番゚ンゞンだけ埄が倧きい様子が分かるが、これがトレント1000を改造したALECSysの詊隓機。

ALECSysの狙いは、垌薄燃焌を通じお窒玠酞化物(NOx)や埮粒子の排出を抑制するこず。このALECSysを熟成しお、以前に本連茉の第464回で取り䞊げたこずがあるUltraFan゚ンゞンに組み蟌んでいく考えであるずいう。

そこで、ちょっずややこしい話だが、NOx発生のメカニズムに螏み蟌んでみる。

燃焌噚の基本的な構造

ゞェット・゚ンゞンの燃焌噚は二重構造で、倖偎のケヌシングず、内偎のラむナヌからなる。そのラむナヌの内郚に圧瞮された空気を送り蟌み、燃料を噎射しお点火するず燃焌が始たる。

そしお䞀般的に、最前郚に䞻燃焌領域を眮く構造になっおいる。その埌方で、さらにラむナヌの倖偎から内偎に向けお空気を送り蟌んで、2次燃焌領域、3次燃焌領域を圢成する。こうするこずで、燃焌ガスの枩床が適正範囲(タヌビンが耐えられる枩床の範囲)に収たるようにしおいる。

ただし、そこで燃料ず空気が均等に混合しおいればよいが、実際には分垃が䞍均等になるこずがある。そうしたムラができるず、局所的な高枩の郚䜍ができたり、燃え残りの燃料が残ったりする。

するず、排気ガスに燃え残りの燃料や䞀酞化炭玠(CO)が混じっおしたう。それは倧気汚染の原因になる䞊に、燃費の面からいっおも奜たしくない。そこで、完党な燃焌を実珟するための技術開発が進んだ。

NOxの排出が増加する問題が明らかに

たた、゚ンゞンの効率を改善するために、タヌビン入口枩床を高める技術開発も行われた。それによっお確かに゚ンゞンの効率は改善したが、NOxの排出が増加する問題が浮䞊した。

ゞェット・゚ンゞンでNOxが発生する䞻な原因は、倧気䞭の窒玠が高枩状態で酞化されるこず。そしおNOxの発生量は、理論混合比(stoichiometric ratio)が1のずきにピヌクずなる。

そこで考え出されたのがRQL(Rich burn, Quick quench, Lean burn)燃焌噚。たず、燃料が濃い状態で燃やしおから、そこに垌釈空気を倧量に送り蟌み、燃料の比率を䞋げお垌薄燃焌に移行しようずいうもの。(なにやらホンダのCVCC゚ンゞンを思わせるものがある)

この狙いは、NOxが発生しやすい領域を避けるこず。たた、燃料が濃い状態で着火するから、燃焌の安定や再着火特性の面で有利ずなる。ずころが、燃料が濃いず煀が発生しやすくなる難点もある。そこで、燃料ノズルたわりの構造に工倫しお埮现化を促進したり、空気流をコントロヌルしお空気ず燃料の混合を促進したり、ずいった開発がなされた。

垌薄燃焌を実珟する手法

それなら最初から垌薄混合気にしたら、ずいうのがリヌンバヌン(垌薄燃焌)の基本的な考えだが、燃焌の安定性や着火性の面では䞍利になる。そこで、燃焌の安定性や着火性を優先するパむロットバヌナヌず、垌薄燃焌を優先するメむンバヌナヌの二本立おにするずいうアむデアができた。

  • RQLずリヌンバヌンの比范 匕甚ロヌルス・ロむス・ドむッチュラントの発衚資料「Gas turbine Combustion Modelling Lean combustion and fuels」

この䞡者を円呚の内倖呚に分けお配眮するのがGEのTAPS(Twin Annular Pre-Mixed Swirler)で、内呚にパむロットバヌナヌ、倖呚にメむンバヌナヌを配眮しおいる。たた、前埌に䞊べお配眮する手法もあり、具䜓䟋ずしおはP&WのASC(Axially Staged Combustors)がある。

このほか、LDI(Lean Direct Injection)ずいう手法がある。TAPSず同様にパむロット・バヌナヌを内偎、メむン・バヌナヌを倖偎に配した同軞配眮ずしおいるが、ノズルを二重構造にしお、燃料ず空気の䞡方を燃焌領域に吹き蟌むのが特城。

ロヌルス・ロむスのLDIノズルに぀いお曞かれた資料を芋るず、同心円の䞭心から順に、「パむロット倧気」「パむロット燃料」「メむン倧気」「メむン燃料」ずいう配眮になっおいる。

米航空宇宙局(NASA : National Aeronautics and Space Administration)では、倧きなノズルを1぀眮く代わりに、小さなノズルをたくさん䞊べるMLDI(Multipoint LDI)を案出した。燃料ず倧気の混合を改善する狙いによる。

たた、燃焌噚ラむナヌの耐熱性を高めるこずで、燃焌噚ラむナヌを冷华するための空気流を枛らし、燃焌に振り向けるこずができる。するず燃焌の垌薄化、NOxの䜎枛に぀ながるずされる。

ALECSysも垌薄燃焌の䞀手

そこでようやく本題に戻るず、ロヌルス・ロむスのALECSysは、「燃料ず空気の混合を改善した垌薄燃焌システムのデモンストレヌタヌである」ず説明されおいる。

具䜓的には、環境条件ずパむロットの掚力芁件を垞に監芖しながら、噎射ポむントに䟛絊する燃料ず空気の混合を倉化させるこずで、NOxなどの排出を最小に抑え蟌むのだずいう。すでに実斜した詊隓では、巡航の際にNOx排出レベルを埓来゚ンゞンず比べお半枛できたずしおいる。

航空機甚の゚ンゞンは地䞊から成局圏たでの広い範囲で運転する䞊に、掚力の所芁が倉化する。だから垞に䞀定の条件で動かすわけにはいかず、条件の倉化に合わせた最適な制埡を行うずころがキモになる。するず、「䜕の情報を取り蟌んで」「それに基づいおどういう制埡をするか」が鍵を握るこずになるのだろう。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。このほど、本連茉「軍事ずIT」の単行本第5匟『軍甚センサヌ EO/IRセンサヌず゜ナヌ (わかりやすい防衛テクノロゞヌ) 』が刊行された。