前回、V2500エンジンを手掛ける国際共同開発・生産組織、IAE(International Aero Engines)において日本のメーカーも参画している、との話を取り上げた。そのIAEだけでなく、日本のメーカーはいろいろと航空機製造のサプライチェーンに関わりを持っている。
機体構造などの素材
全日本空輸(ANA)でボーイング787の就航が始まった頃に、羽田空港第2ターミナルビルの一角で、こんな展示が行われていた。
御存じの通り、787では胴体の一部、中央翼、主翼の製造を日本のメーカーが手掛けている。そこで使われている炭素繊維複合材を構成する、ベースとなる炭素繊維素材を手掛けているのが東レである。
東レのWebサイトで製品情報を見ると、炭素繊維の素材そのものに加えて、炭素繊維素材の織物、そこに樹脂を含浸させたプリプレグ、といった具合に多種多様な製品がラインアップされている。
航空機の機体構造材のように高い強度が求められるところでは、プリプレグを型に敷き込んでオートクレーブで焼き固める、いわゆるドライカーボンの使用例が多い。ただし、プリプレグには「賞味期限」があるので、大量に買い込んで在庫しておくわけには行かない。需要に応じて必要な分量だけ調達した上で、それを賞味期限が切れる前に適切に使い切らなければ無駄が出る。
するとここでも、生産管理・サプライチェーン管理という課題が生じる。その点、VaRTM(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding)であれば、成形に併せて樹脂を含浸させるので、賞味期限に関する制約は緩くなると思われる。
第338回で、「チタン素材の供給ではロシアのVSMPO-AVISMAが」という話を書いたが、日本でアルミ合金素材やチタン素材を航空分野向けに手掛けているメーカーとして、神戸製鋼所(KOBELCO)がある。アルミ合金製品については、鋳造も鍛造も手掛けているという。