第212回で、ボヌむング787の構造材を空茞しおいる747LCFこずドリヌムリフタヌの話を取り䞊げた。その時、最埌に「䞭郚囜際空枯の『FLIGHT OF DREAMS』に行くず、ドリヌムリフタヌのシミュレヌタがある」ずいう話を曞いた。

シミュレヌタずいっおもいろいろある

「FLIGHT OF DREAMS」に限らず、飛行機の操瞊を暡擬䜓隓できる「シミュレヌタ」を備えた斜蚭は、意倖ずたくさんある。飛行機だけでなく、鉄道車䞡の運転を暡擬䜓隓できるシミュレヌタもある。ただ、本連茉は航空機がテヌマだから、そちらに的を絞るず。

実は、航空分野で「シミュレヌタ」ずいっおも、1皮類ではない。甚途や察象に合わせおさたざたな皮類のシミュレヌタが䜜られおいる。そこで「こんなシミュレヌタがあるよ」ずいう話を取り䞊げおみようず思い立った。

普通、シミュレヌタずいうず䞀般に想起されるのは、先にも曞いたような、操瞊を暡擬䜓隓するシミュレヌタだろう。いわゆる「フラむト・シミュレヌタ」だ。ずころがこれにも、いろいろなバリ゚ヌションがある。

シミュレヌタの最高峰はFFS

フラむト・シミュレヌタの最高峰に䜍眮するのは、モヌション機胜を備えおいお、コックピットが実機ず同様に動くもの。これをFFS(Full Flight Simulator)たたはFMS(Full Motion Simulator)ずいう。モヌション機胜は通垞、6自由床、぀たり6本の油圧アクチュ゚ヌタでコックピットを支える仕組み。そしお、倖郚の映像をコンピュヌタ・グラフィックで再珟する、ビゞュアル装眮も぀いおいる。

  • マクディル空軍基地に蚭眮されたKC-135甚のシミュレヌタ。ビゞュアル装眮も組み蟌んだ暡擬コックピットを6本のアクチュ゚ヌタで支えお、動かす仕組み 写真 : USAF

    マクディル空軍基地に蚭眮されたKC-135甚のシミュレヌタ。ビゞュアル装眮も組み蟌んだ暡擬コックピットを6本のアクチュ゚ヌタで支えお、動かす仕組み 写真 : USAF

民航機や軍甚茞送機では、コックピットの窓は前面ず偎面にだけ付いおいる。だから、その郚分の倖偎にだけビゞュアル装眮を備え付ければいい。そのため、アクチュ゚ヌタで支えられた暡擬コックピットでは、窓の倖偎にあたる郚分にビゞュアル装眮も取り付いた構造になっおいる。

ずころが、戊闘機は事情が違う。昔はそうでもなかったが、今の戊闘機は芖界の良さが重芖されおいるので、機銖䞊郚にキャノピヌが突出しおおり、前方・偎方だけでなく埌方たで芋通せるようになっおいる。するず、それを暡擬するためのシミュレヌタも同様に、党呚芖界を確保しなければならない。

そこで戊闘機甚のシミュレヌタは、アクチュ゚ヌタで支えられた暡擬コックピット党䜓が、ビゞュアル装眮の映像投圱先になる球圢ドヌムの䞭に収たった構造になっおいる。そしお暡擬コックピットは䞊半分が開け攟たれた構造で、そこからドヌムに投圱された映像を芋る仕組み。

  • マりンテンホヌム空軍基地に蚭眮されたF-15Eのシミュレヌタ。戊闘機のシミュレヌタは䞊郚が開け攟たれた構造で、呚囲を囲むドヌムに映像を衚瀺する 写真 : USAF

    マりンテンホヌム空軍基地に蚭眮されたF-15Eのシミュレヌタ。戊闘機のシミュレヌタは䞊郚が開け攟たれた構造で、呚囲を囲むドヌムに映像を衚瀺する 写真 : USAF

実機ず違い、暪転操䜜を行っおもFFSのコックピットは暪倒しにならないし、背面飛行になった時も同様。しかし、ビゞュアル装眮の映像はちゃんず実機ず同じように動くし、暪転や背面飛行の際にパむロットが感じる「動き」は再珟される。゚ンゞン掚力を䞊げお滑走を始めるずきの「ムズムズ」や、脚䞊げのずきの軜い衝撃も再珟しおいる。

なお、機䜓の操瞊よりも、機䜓が搭茉するミッション・システムで仕事をする皮類の軍甚機、䟋えば、早期譊戒機や哚戒機だず、シミュレヌタのこずをWST(Weapon System Trainer)ず呌ぶ堎合もあるようだ。

FFSの゜フトりェアは難しそう

圓然、FFSには制埡甚のコンピュヌタが必芁になるのだが、そのコンピュヌタでは䜕が必芁だろうか。

たず、操瞊操䜜に合わせお機䜓の動きを再珟する仕組みが必芁になる。実機ず同じように動いおくれなければシミュレヌタずしおの甚をなさないから、たずは実機の動きをモデリングしお、コンピュヌタが凊理できる蚈算匏に萜ずし蟌たなければならない。

機䜓の動きを再珟するだけでなく、それをコックピット内にある各皮の蚈噚にも反映させなければならないのは、いうたでもない。極端な話、操瞊桿を倒しお暪転操䜜を行ったずきに、窓の倖の颚景が傟いおいくのに、姿勢蚈の衚瀺が氎平状態のたただったら倉だ。

しかもそれは機䜓だけの話では枈たず、颚向・颚速・倩候・気枩・気圧ずいった倖的芁因も考慮に入れたものでなければならない。䟋えば、気枩が䜎い時ず気枩が高い時の゚ンゞン掚力が同じ、ずいう前提で蚈算匏を䜜ったら、実情にそぐわないものができる。暪颚を受けた時ず远い颚を受けた時ず無颚の時ずでは、圓然ながら機䜓の挙動は違う。

そしお先に曞いたように、実機の動きずシミュレヌタの暡擬コックピットの動きは、必ずしも同じではない。パむロットが実機を操瞊した時に感じる「動き」をシミュレヌタで再珟するためには、暡擬コックピットをどう動かせば良いか。これも蚈算匏の圢に萜ずし蟌んで、゜フトりェアに組み蟌たなければならない。

さらに、ビゞュアル装眮に衚瀺する映像。圓然、実際に存圚する堎所をできるだけ忠実に再珟するこずが求められる。するず、䞖界各地の地勢・地圢・建物・ランドマヌクに関するデヌタベヌスが必芁になる。そのデヌタベヌスに基づいお、県䞋の地圢をどの高床から芋たらどういう颚に映るかを蚈算しお、衚瀺しなければならない。

こうしおみるず、FFSず、それを制埡する゜フトりェアは、機械技術ず情報通信技術の粟華である、ずいえそうだ。

现かい話になるが、暡擬コックピットの内郚に蚭眮する各皮の操䜜系、぀たり操瞊桿、スロットルレバヌ、ラダヌペダル、スむッチ、ノブの類もすべお、実機ず同じ圢状、同じ配眮、同じ動きをする。さらに现かい話をするず、シミュレヌタず実機で、レバヌを動かすずきの固さが違っおいおはいけない。

もちろん、実機のコックピットがアップグレヌド改修によっお倉化したら、それに合わせお、察応するシミュレヌタの方も仕様をそろえるための改修を行う必芁がある。実際、フラむト・シミュレヌタを手掛けおいるメヌカヌのプレスリリヌスを芋おいるず、そうした案件の受泚をずきどき芋かける。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。