これまで「Power Query エディター」に用意されているコマンドの使い方を色々と紹介してきたが、最後に「エラーが発生したときの対処方法」について触れておこう。まずは第一弾として、データ取得元の「ファイル名」や「フォルダー名」を変更したときの対処方法を紹介する。

  • エラーの対処法(データ取得元の変更)

エラー表示の確認

パワークエリを使って自動処理を実現した後に、データ取得元の「ファイル名」や「フォルダー名」を変更したくなる場合もあるだろう。そこで今回は、データ取得元のパスが変更されたときの対処方法を紹介していこう。

以下の図は、「3月の売上」というフォルダーからデータを取得する処理をパワークエリで実現した例だ。具体的には、フォルダー内に保存されているExcelファイルを結合し、不要な行の削除、日付データの作成、データの並べ替え、といった処理を行っている。

  • パワークエリで自動処理したデータ表

ちなみに、このデータは昨年の3月(2024年3月)のものであり、これとは別に今年の3月(2025年3月)のデータも存在している。よって「3月の売上」というフォルダー名は適切とはいえなくなっている。そこで、フォルダー名を「2024年3月」という名前に変更することにした。

  • データ取得元のフォルダー名を変更

このようにデータ取得元のフォルダー名(またはファイル名)を変更してしまうと、それ以降はパワークエリによる自動処理が正しく機能しなくなる。たとえば、「すべて更新」をクリックしても自動処理は行われず、以下の図のようなエラーが表示される。

  • データ取得元が見つからないことを示すエラー

自動処理を正しく機能させるには、新しいフォルダー名(またはファイル名)からデータを取得するようにクエリの内容を修正しなければならない。その手順を詳しく紹介していこう。

この作業は「Power Query エディター」で行う。クエリをダブルクリックして「Power Query エディター」を開くと、エラーを示す「警告マーク」がいくつか表示されているのを確認できるだろう。

  • エラーを示すアイコン

それぞれのエラーの内容を順番に見ていこう。まずは、最初の「警告マーク」が表示されている「サンプル ファイル」のクエリを選択する。すると、エラーメッセージの表示が以下の図のように変化する。このメッセージ内にある「設定の編集」ボタンをクリックする。

  • エラーの確認(1)

ナビゲーション画面が表示され、「3月の売上」フォルダーが見つかりませんでした、という内容のエラーであることを確認できる。ただし、この画面でエラーを修正することはできない。仕方がないので、「OK」ボタンをクリックして画面を閉じる。

  • エラーの確認(2)

M言語を修正して対処する場合

先ほど示した例のように、「設定の編集」ボタンをクリックしても適切な設定画面が表示されない場合もある。この場合は、M言語を自分で書き換えて処理内容を修正するのが対処法のひとつとなる。「表示」タブを選択し、「詳細エディター」をクリックする。

  • 「詳細エディター」の表示

選択しているクエリの処理内容がM言語で表示される。現時点におけるソース(データ取得元)は、Cドライブの「売上データ」フォルダー内にある「3月の売上」フォルダーになっている。このフォルダー名を「2024年3月」に書き換えて「OK」ボタンをクリックする。

  • データ取得元の変更(1)

  • データ取得元の変更(2)

これでデータ取得元の変更は完了。M言語の修正は少し上級者向けの対処方法になるが、パスの修正(フォルダー名やファイル名の修正)くらいであれば、M言語に不慣れな方でも十分に対応できるだろう。

念のため、修正後の画面も掲載しておこう。「サンプル ファイル」のクエリに表示されていた「警告マーク」が「通常のアイコン」に変化しているのを確認できるはずだ。さらに、「サンプル ファイルの変換」に表示されていた「警告マーク」も解消されている。ただし、「3月の売上」に表示されている「警告マーク」はまだ解消されていない。

  • エラーの確認

続いては、このエラーを解消していこう。「3月の売上」のクエリを選択すると、上図のようなエラーメッセージが表示された。ここには「設定の編集」ボタンが表示されていない。この場合は、ステップを選択することで「設定の編集」ボタンを表示できるケースもある。

設定画面で修正して対処する場合

先ほど示した例のように「設定の編集」ボタンが表示されなかった場合は、エラーが発生しているステップを選択することで「設定の編集」ボタンを表示できるケースもある。今回の例の場合、データ取得元に問題があると思われるので「ソース」のステップを選択する。すると、エラーメッセージに「設定の編集」ボタンが表示された。

  • エラーの確認(2)

「設定の編集」ボタンをクリックすると、以下の図のような設定画面が表示され、データ取得元のパスを変更できるようになる。現時点では、データ取得元に「3月の売上」フォルダーが指定されている。このフォルダー名を「2024年3月」に書き換えて「OK」ボタンをクリックする。

  • データ取得元の変更(1)

  • データ取得元の変更(2)

以上で、データ取得元の修正は完了だ。「警告マーク」がすべて解消され、データが正しく取得されるようになる。続いて、最後のステップを選択すると、パワークエリで処理した結果を確認できる。

  • エラーを解消したクエリ

あとはクエリの内容を更新するだけだ。「×」をクリックし、ウィンドウを閉じる際に表示される確認画面で「保持」ボタンをクリックする。

  • クエリの保持

その後、Excelファイルの上書き保存を実行すると、修正したクエリをExcelファイルに保存できる。

これまでの話をまとめておこう。データ取得元に関するエラーが発生したときは、以下の手順で対処していくのが基本となる。

  • (1)「Power Query エディター」を開く
  • (2)各クエリに表示される「警告マーク」を確認する
  • (3)「警告マーク」が表示されているクエリを選択する
  • (4)「設定の編集」ボタンをクリックする

「設定の編集」ボタンが表示されない場合は、

  • (5)問題が起きていそうなステップを選択する
  • (6)「設定の編集」ボタンが表示される
  • (7)「設定の編集」ボタンをクリックすると、適切な設定画面が表示される
  • (8)現状にあわせて設定を修正する

これで、たいていのエラーは解消できると思われる。ただし、冒頭で紹介した例のように、「設定の編集」ボタンをクリックしても適切な設定画面が表示されない場合もある。この場合も、問題が起きていそうなステップを選択することで、適切な設定画面を表示できる可能性がある。

冒頭で示した例では「M言語の書き換え」によりデータ取得元を修正したが、「ソース」のステップを選択してから「設定の編集」ボタンをクリックしてデータ取得元を修正してもよい。M言語を自分で書き換えることに抵抗がある方は、問題がありそうなステップを探ってみるのも、ひとつの対処法といえるだろう。

「データ ソース設定」コマンドで対処する場合

今回の例のように、データ取得元のフォルダー名(またはファイル名)を変更したことがエラーの発生源であると判明している場合は、「データ ソース設定」コマンドでエラーに対処してもよい。「ホーム」タブにある「データ ソース設定」をクリックする。

  • 「データ ソース設定」コマンド

すると、以下の図のような画面が表示されるので、現在のデータ取得元(データ ソース)を選択し、「ソースの変更」ボタンをクリックする。

  • データ ソース設定の確認

データ取得元のパスを指定する画面が表示されるので、パスを正しく修正して「OK」ボタンをクリックする。今回の例の場合、「3月の売上」→「2024年3月」という修正を行えばよい。

  • データ取得元の変更(1)

  • データ取得元の変更(2)

以上で修正作業は完了。データ取得元が正しく修正されていること確認し、「閉じる」ボタンをクリックする。

  • データ ソース設定の終了

この方法でデータ取得元を修正することも可能だ。修正後にクエリを選択しなおすと、すべての「警告マーク」が解消されているのを確認できる。

  • エラーを解消したクエリ

この方法は、エラーが発生したときだけでなく、別のデータを同様の手順で自動処理したい場合にも応用できる。たとえば、データ取得元を「2024年4月」に変更すれば、2024年4月のデータについて同様の自動処理を実行できるようになる。

今回は「データ取得元」が原因となる場合を例にエラーの対処法について紹介したが、このほかにもエラー発生の原因となる事例がいくつか考えられる。そこで次回は、列名を変更した場合、ならびにデータ型に違反している場合について、エラーの対処方法を紹介していこう。