ここ何年もにわたり、各業界でトレンドワードとなっているのがデジタルトランスフォーメーション――いわゆるDXだ。長年トレンドであり続けているということは、逆に言えばそれだけDXに苦戦している企業が多いということでもある。
実際、DXへの取り組みは企業によって明暗がくっきり分かれている印象だ。DXを推進し、ビジネスモデルの転換や創出に成功した企業がメディアで華々しく取り上げられる一方で、取り組んでみたもののコストだけがかかってしまい、全く成果が出なかった企業も多くあるのが現状だろう。
DXが失敗に終わる要因は1つではなく、さまざまな要因が複雑にからみあっており、さらに各業界やその企業特有の事情も関わってくるため、一筋縄ではいかない。こうすれば成功する、という簡単なものではないのだ。
そういった“DXの迷宮”に迷い込んでしまった企業に手を差し伸べ、日本のDXスキルの底上げに挑戦するメディアがある。
それが、多くの企業のデジタルシフトを支援するデジタルホールディングス(旧オプトホールディング)が運営する「デジタルシフトタイムズ」だ。
デジタルシフトとは、DXだけでなく、情報をデジタル化するデジタイゼーションや、プロセスをデジタル化するデジタライゼーションを包含するキーワードである。「デジタル活用を成功させるには、DXだけでなくデジタイゼーションやデジタライゼーションも含めた一連の流れで取り組みを行う必要がある」というのがデジタルホールディングス社の考えだ。
デジタルシフトタイムズを指揮するデジタルホールディングス社のグループ・ブランディング部 部長 北浦豪文氏に、デジタルシフトタイムズの使命とこれまでの歩み、これからの展望についてお話を伺った。
日本企業のデジタルシフト成功を目指して
デジタルシフトタイムズが開設されたのは2019年6月までさかのぼる。当時のデジタルホールディングス社はまだオプトホールディングから商号を変更する前だったが、すでに日本企業が成長するための起爆剤としてデジタルシフトの重要性を掲げており、デジタルシフト事業に可能性を見出していた。
“日本企業がデジタルシフトを成功させるには、何といっても正しく、鮮度が高い生の情報が必要だ”と考えた同社は、情報の側面から日本のデジタルシフトを支援することを目的に、デジタルシフトタイムズを立ち上げた。
どんなメディアもそうだが、立ち上げてすぐは思うようにいかないことも多い。デジタルシフトタイムズも例に漏れず、最初はなかなか閲覧者も増えなかった。知名度の低さゆえに取材希望が通らないことも少なくなかったという。
それでも、デジタルシフトタイムズは着実に記事を増やし、歩みを進めていった。メディアミッションとして掲げた「その変革に勇気と希望を」は当初、自分たちに言い聞かせる言葉だったのかもしれない。
転機となったのは、2020年4月のこと。北浦氏がデジタルホールディングスに入社し、デジタルシフトタイムズの責任者に着任したのだ。北浦氏は広告代理店の営業職や事業会社のブランディング、広報・広告宣伝などを経験してきたコーポレート・コミュニケーション領域のスペシャリストである。同氏の役割は商号変更を直前に控えたデジタルホールディングス社におけるグループ全体のブランディングであり、課せられたミッションのうちの1つがデジタルシフトタイムズの舵取りだった。
北浦氏を迎えて新体制となり、いよいよ加速していくかに見えたデジタルシフトタイムズだったが、ここで思わぬ事態が発生してしまう。
2020年4月。新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言の発令である。
「まさに私がジョインしたタイミングで緊急事態宣言が出され、弊社もフルリモート勤務になりました。世の中の先行きも読めないなか、対面での取材もできなくなりメディア運営にも完全な逆風でした」(北浦氏)