今回は、Microsoft IMEの「予測入力」(予測変換)と「学習機能」について詳しく解説しよう。日本語入力を劇的に高速化できるわけではないが、漢字などに変換する方法をカスタマイズすることで、もっと使いやすい入力環境に仕上げられる。IMEを自分のコントロール下に置くためにも、各機能の管理方法を覚えておくとよいだろう。
予測入力と学習機能
Microsoft IMEには、タイピングした“よみ”を漢字変換するときの補助機能として「予測入力」と「学習機能」が装備されている。まずは各機能の概要から紹介していこう。
IMEをオンにして漢字の“よみ”をタイピングしていくと、その続きをIMEが予測して、入力候補になりそうな単語(またはフレーズ)を一覧表示してくれる。これが「予測入力」となる。スマートフォンでもお馴染みの機能なので、詳しく説明しなくても、どんな機能なのかは容易に把握できるだろう。
以下の図は「そうし」とタイピングした場合の例だ。「送信」や「送信された」、「送信される」、……といった具合に「そうし」から始まる単語やフレーズが5個、予測候補として表示されるのを確認できるだろう。
※表示される予測候補は、各自がこれまでに入力した単語(フレーズ)の履歴に応じて変化するため、必ずしも下図のようになるとは限らない。
予測候補に表示された文字を入力したいときは、「↓」キーまたは「Tab」キーを押して候補を選択し、「Enter」キーで確定すればよい。さらに「↓」キーや「Tab」キーを押し続けていくと、予測候補を9個まで一覧表示できるようになる。
この機能を上手に使うと、“よみ”をすべてタイピングしなくても目的の文字を入力可能になる。日本語入力の高速化に大きく貢献してくれる機能なので、積極的に活用していくとよいだろう(というよりも、知らないうちに普通に利用している方が大半を占めると思われる)。
一方、「Space」キーを押して漢字変換を行った場合は9個の変換候補が表示される。ここには“よみ”が「そうし」の単語だけが一覧表示されている。こちらが、いわゆる普通の「漢字変換」となる。
変換候補が表示されているときに「Tab」キーを押して、一覧表示する変換候補を最大36個まで増やすことも可能だ。
あとは一覧から変換後の文字(漢字)を選択して「Enter」キーで確定するだけ。日本語入力の基本操作なので、あえて説明しなくても操作方法は知っているだろう。
ここに表示される変換候補の一覧は「よく使う単語」ほど上に表示される仕組みになっている。たとえば「草子」という単語を何回か入力すると、「草子」の文字が一番上に表示されるようになる。これが「学習機能」となる。
これまでの話をまとると、変換時に表示される一覧は以下のようになる。
- Spaceキーを押す前:「予測入力」の候補
- Spaceキーを押した後:「学習機能」により並べ替えられた変換候補
IMEをカスタマイズするときは、両者の違いを十分に認識しておく必要がある。「予測入力」と「学習機能」はそれぞれ別の機能になるので、混同しないように注意すること。これもIMEをカスタマイズするときの重要なポイントといえる。
予測入力を利用した日付・時刻の自動入力
それぞれのカスタマイズ方法を説明する前に、「予測入力」を使った小ネタを紹介しておこう。予測入力には「日付」や「時刻」を手軽に入力する機能が備えらえている。
たとえば「きょう」とタイピングすると、予測候補に「XXXX年X月X日」といった形式で「今日の日付」が表示される。
さらに「↓」キーや「Tab」キーを押していくと、和暦や曜日を含む日付表記も選択可能となる。もちろん、これら予測候補を選択して「今日の日付」を入力してもよい。文字入力を高速化できるだけでなく、いちいちカレンダーを確認する手間を省けるのが利点といえるだろう。
同様に、「あす」、「あさって」、「しあさって」、「きのう」、「おととい」といった“よみ”で、その日の日付を入力することも可能だ。そのほか、「いま」とタイピングして「現在の時刻」を予測候補に表示する機能も備えられている。
予測入力の設定変更
続いては「予測入力」の設定変更について操作手順を紹介していこう。タスクバーの右端に表示されている「あ」または「A」のアイコンを右クリックし、「設定」を選択する。
「Microsoft IME」の設定画面が表示される。予測入力の設定を変更するときは、この画面で「全般」を選択すればよい。
続いて表示される画面を下へスクロールしていくと、「予測入力」という項目が見つかる。ここで“予測入力を開始するまでの文字数”を変更することも可能だ。この項目は「1文字」に初期設定されているため、通常は“よみ”を1文字入力するだけで予測候補が表示されるようになっている。
とはいえ、わずか1文字の“よみ”で「目的の文字」が予測候補に表示されるケースは滅多にない。むしろ、「この時点で予測候補を表示されても邪魔なだけ」と感じる方もいるだろう。このような場合は、予測入力を開始するまでの文字数を「2文字」や「3文字」に変更しておくと、より使いやすい環境になる。
なお、タイピングが超高速で「予測入力を使わない方が快適」という方も中にはいるようだ。この場合、この項目を「オフ」にすると予測入力を無効化できる。筆者はそこまでタイピングが速くないので、予測入力の無効化はデメリットしか感じないが、腕に自信がある方は試してみるとよいだろう。
その下には、入力履歴とシステム辞書に関する設定項目が並んでいる。「入力履歴を使用する」をオンにすると、過去に入力した単語(フレーズ)が予測候補に表示されるようになる。「システム辞書を使用する」は、システム辞書に登録されている単語を予測候補として表示させる機能となる。
これらの項目は、いずれも「オン」に初期設定されている。どちらも便利な機能なので、特に理由がない限り、「オン」の設定のままで構わないだろう。
その下には「クラウド候補」という設定項目が用意されている。この項目を「オン」に変更すると、マイクロソフトのサーバー(Bing)からも予測候補が提供され、最新の流行語や専門用語などを手軽に入力できるようになる。
参考までに「りすきり」とタイピングした場合の例を紹介しておこう。以下の図は、クラウド候補が「オフ」(初期設定)のときに表示される予測候補の一覧だ。
クラウド候補を「オン」に変更すると、ここに「リスキリング」という単語が追加されるようになる。ちなみに、雲のアイコンが表示されている単語が「Bingから提供された予測候補」となる。
このようにクラウド候補を「オン」にすると、PC内の辞書や履歴には登録されていない用語も予測候補として表示されるようになる。最新のトレンド用語や有名人の氏名などをよく入力する方は、クラウト候補を「オン」に変更しておくとよいだろう。
なお、クラウト候補を「オン」にすると、文字をタイピングするたびにネット通信が行われるようになる。その結果、「動作速度が低下するかも……」と懸念する方もいるだろう。筆者の環境では体感できるような速度低下は感じられなかったが、これについては各自の通信環境に左右される問題なので、実際に試してみるしか評価のしようがない。
不要な予測候補の削除
予測入力は便利な機能だが、弱点がない訳ではない。それは、過去に間違えて入力した単語(フレーズ)まで予測候補として表示されてしまうことだ。
たとえば「アジャイル開発」と入力したいのに、間違えて「アジャイリ開発」と入力してしまったとしよう。すると、それ以降、「アジャイリ開発」という間違った単語が予測候補に表示されるようになる。このため、何回も同じ入力ミスを繰り返してしまう可能性がある。
このように不要な単語(フレーズ)が予測候補に表示された場合は、その候補の上にマウスを移動し、「×」アイコンをクリックすればよい。すると、その単語(フレーズ)が予測候補から削除され、以降は表示されなくなる。
この操作は「間違った単語ではないが、自分は使わない」といった単語にも応用できる。不要な単語を削除しておけば、より快適に文字入力を進められるようになるはずだ。もしも「削除した単語」を入力する必要に迫られたときは、普通に漢字変換して入力すればよいだけの話だ。すると、その単語が再び予測候補に表示されるようになる。
学習機能の設定変更
続いては「学習機能」の設定変更について紹介していこう。といっても、変更できる設定項目は特になく、オン/オフの指定だけが可能となっている。
学習機能の設定を変更するときは、「Microsoft IME」の設定画面を開き、「学習と辞書」を選択する。
すると、学習機能のオン/オフを切り替えるスイッチが表示される。学習機能を無効化したいときは、このスイッチをオフにすればよい。
とはいえ、学習機能をオフにするメリットは見当たらないため、この設定を変更する機会は皆無に近いといえるだろう。その下にある「入力履歴の消去」ボタンは、これまでの入力履歴をすべて削除して変換候補の並び順をリセットするときに利用する。ただし、予測入力にも影響を及ぼすことに注意しておく必要がある。
不要な学習単語の削除
予測入力の候補を「×」アイコンで削除できるように、学習機能により並べ替えられた変換候補も手軽に操作できると便利なのだが、残念ながら、そういった機能は用意されていない。唯一、コントロール可能なのが「学習単語」として辞書に自動登録された変換候補の削除だ。
具体的な例を紹介しておこう。以下の図は「さんかく」の“よみ”で漢字変換を実行した様子だ。以前に「F7」キーで「サンカク」に変換した履歴があるため、変更候補の1番目に「サンカク」という文字が表示されている。
この「サンカク」という文字は一時的に使用したものであり、今後は使用する予定がないとする。むしろ、「△」や「▼」などの記号を入力するために「さんかく」とタイピングする機会が多いとしよう。この場合、「サンカク」の変換候補は邪魔な存在でしかない。これを削除する方法を紹介していこう。
先ほど示した手順で「学習と辞書」の設定画面を開き、「ユーザー辞書ツールを開く」をクリックする。
「ユーザー辞書ツール」が表示される。通常、ここには自分で登録した単語が一覧表示されている(詳しくは連載第3回を参照)。IMEが自動登録した「学習単語」を表示するには、フィルター設定を変更しなければならない。「ツール」メニューから「フィルター」を選択する。
フィルターの設定画面が表示されるので、「登録単語」をオフ、「学習単語」をオンに変更してから「実行」ボタンをクリックする。
すると、IMEが自動登録した「学習単語」だけが一覧表示されるようになる。この中から「さんかく」→「サンカク」の項目を探し出し、以下の図に示したアイコンをクリックして辞書から削除する。
すると、変換候補に「サンカク」の文字が表示されなくなる(並び順が後方になる)。これで不要な「サンカク」を変換候補から削除できる。
この方法で変換候補の並び順を操作することも不可能ではないが、あらゆる状況に対応できる方法ではない。学習辞書に自動登録されるのは「カタカナ」や「英数字」に変換した単語だけで、漢字に変換した単語は登録されていない。よって、この方法で漢字同士の並び順をコントロールすることはできない。
よく使う単語を何回も入力して、変換候補の上の方に表示させる(学習させる)という方法もあるが、これも効果的な対策法とはいえない。というのも、あえて作業しなくても自然とそうなっていくからだ。よって、学習機能による並び順は「IMEに任せるしかない」というのが実情だ。
ということで、今回は「予測入力」と「学習機能」の設定変更について紹介した。日本語入力を高速化する特効薬とはいえないが、ここで紹介したような設定項目が用意されていることを知っていれば、いつか役に立つかもしれない。多少なりとも参考になれば幸いだ。























