今回は、日本語入力を手軽に高速化できる「ユーザー辞書」の活用方法を紹介していこう。「変換しづらい単語」や「よく使用するフレーズ」を辞書に登録しておくと、短縮よみで文字入力を済ませることが可能となる。登録方法を工夫しながら積極的に活用していけば、日本語入力の高速化にかなり貢献してくれるはずだ。

  • ユーザー辞書をもっと積極的に活用する方法

    ユーザー辞書をもっと積極的に活用する方法

単語をユーザー辞書に登録する手順

WindowsのIME(Microsoft IME)には、単語の「よみ」と「表記」を各自で自由に登録できる「ユーザー辞書」が装備されている。この機能は漢字変換できない単語の登録に使用するのが一般的であるが、それ以外の用途に役立てることも可能である。そこで今回は、ユーザー辞書をもっと積極的に活用して日本語入力を高速化する方法を紹介していこう。

たとえば、「BtoBマーケティング」という文字を入力したいとしよう。この場合、「BtoB」までを半角で入力し、その後、全角に切り替えてから「マーケティング」と入力しなければならない。また、大文字と小文字が混ざっているため、「Shift」キーの操作も必要になる。普通に入力できない訳ではないが、少しだけ手間がかかってしまう。

  • 入力に手間がかかる単語の例

    入力に手間がかかる単語の例

このように入力しづらい単語を頻繁に使用するときは、その単語を「短縮よみ」で辞書に登録しておくと以降の入力作業が楽になる。その手順を紹介していこう。

タスクバーの右端に表示されている「あ」または「A」を右クリックし、「単語の追加」を選択する。

  • 単語の登録手順(1)

    単語の登録手順(1)

単語の登録画面が表示されるので「単語」と「よみ」を入力する。たとえば、「びーびー」と入力したら「BtoBマーケティング」に変換する、といった動作を実現したい場合は、以下の図のように設定すればよい。続いて、登録する単語の「品詞」を選択する。今回の例のように省略形で登録するときは「短縮よみ」を選択する。

  • 単語の登録手順(2)

    単語の登録手順(2)

あとは「登録」ボタンをクリックするだけ。これでユーザー辞書に単語を登録できる。正しく登録されているか実際に試してみよう。適当なアプリを開いて「びーびー」と入力する。すると、変換候補に「BtoBマーケティング」が表示されるのを確認できる。

  • 辞書に登録した単語の変換

    辞書に登録した単語の変換

つまり、「びーびー」(bi-bi-)と入力するだけで「BtoBマーケティング」に変換できるようになり、それだけ日本語入力を高速化できることになる。

なお、辞書に登録する「短縮よみ」は日本語(ひらがな)として成立していなくても構わない。キー入力の数をもっと減らして「bb」で登録してもよいし、「b」の1文字だけでもよい。さらには「;」などの記号でも問題なく動作してくれる。

  • 「よみ」をさらに短縮した例

    「よみ」をさらに短縮した例

  • さらに短縮した「よみ」を入力して変換

    さらに短縮した「よみ」を入力して変換

このように「頻繁に使用するけど入力しづらい……」といった単語をユーザー辞書に「短縮よみ」で登録しておくと、少ないキー操作で文字入力を済ませることが可能となる。

ここで問題となるのが、どのように「よみ」を設定するか? 「よみ」が短くなるほど(キーを押す回数が減るほど)入力は楽になるが、その単語を求めていないときにも変換候補として表示されてしまうのが欠点となる。このあたりの塩梅は各自で工夫していくしかない。絶対的な正解はないので、試行錯誤を重ねながら最適な「よみ」の指定方法を研究していく必要がある。

このように書くと難しそうに感じるかもしれないが、最終的には“慣れ”の問題でしかない。とりあえずは適当に試してみて、使い勝手が悪いと感じたら、その時点で「よみ」を修正していく、というのが基本的な使い方になるだろう。

ユーザー辞書を編集するには?

続いては、辞書に登録した単語の編集方法を紹介していこう。「よみ」を修正したい場合などは、以下に示した手順で操作を進めていけばよい。

先ほど紹介した手順で「単語の登録画面」を開き、「ユーザー辞書ツール」ボタンをクリックする。

  • 「ユーザー辞書ツール」の呼び出し

    「ユーザー辞書ツール」の呼び出し

「ユーザー辞書ツール」が表示され、登録済みの単語が一覧表示される。登録内容を修正するときは、その単語を選択して「変更」ボタンをクリックするか、もしくは単語をダブルクリックすればよい。

  • 登録した単語の編集画面の呼び出し

    登録した単語の編集画面の呼び出し

その単語の編集画面が表示されるので「よみ」などを修正する。修正できたら「登録」ボタンをクリックする。

  • 登録した単語の編集画面

    登録した単語の編集画面

以上で、辞書に登録した単語の修正は完了。念のため、辞書に登録した単語を削除するときの操作手順も紹介しておこう。この場合は、単語を選択して「削除」ボタンをクリックすればよい。

  • ユーザー辞書から単語を削除する操作

    ユーザー辞書から単語を削除する操作

このように、登録した単語の修正/削除はいつでも行えるようになっている。単語の登録はシステムに関わる設定変更のように感じるかもしれないが、実際には気軽に試せる機能となっている。

改行を含む文章をユーザー辞書に登録するには?

単語ではなく、文章を「短縮よみ」で入力したい場合もあるだろう。このような用途にもユーザー辞書を活用できる。ただし、多少の制限があることに注意しなければならない。ここでは、以下の図に示した文章を例に具体的な手順を紹介していこう。

  • ユーザー辞書に登録したい文章

    ユーザー辞書に登録したい文章

ひとつ目の注意点は、ユーザー辞書に登録できる文字が「改行を含まない文字」に制限されていることだ。よって、改行のない文章に改編しておく必要がある。今回は、改行を「★」に置き換えることで、この問題に対応した。作業が済んだら、文章全体を選択して「Ctrl」+「C」キーでコピーしておく。

  • 改行を「★」に置き換えてコピー

    改行を「★」に置き換えてコピー

単語の登録画面を呼び出し、先ほどコピーした文章を「単語」の入力欄に貼り付ける。続いて、自分が使いやすいと思われる「よみ」を指定する。あとは「品詞」を選択して「登録」ボタンをクリックするだけ。基本的な操作手順は、単語を登録する場合と同じだ。

  • 文章をユーザー辞書に登録

    文章をユーザー辞書に登録

正しく登録されているか確認してみよう。「よみ」に指定した文字を入力すると、以下の図のような変換候補が表示される。ここに「先ほど登録した文章」は表示されていないが、そのまま「スペース」キーを押すと登録した文章に変換することができる。

  • ユーザー辞書に登録した文章の入力

    ユーザー辞書に登録した文章の入力

  • 「スペース」キーにより変換された文章

    「スペース」キーにより変換された文章

あとは「★」の部分を改行に置き換えるだけ。これで文章を「短縮よみ」で入力できるようになる。

ただし、文章が途中で中断されてしまうケースがあることに注意しなければならない。上図に示した例も、最後の数文字が欠けた状態になっている。これは「登録可能な文字数は60文字以内」という制限が設けられていることが原因だ。この問題に対処するには、「60文字以内になるように分割して登録する」などの工夫を施すしか手段がない。これがふたつ目の注意点となる。

なお、IMEに「Google 日本語入力」を使用した場合は全角100文字(半角300文字)まで、「ATOK」を使用した場合は全角・半角を問わず100文字まで辞書に登録できるようだ(※1)。よって、他のIMEを使用するという対処法も考えられる。

(※1)「Google 日本語入力」でユーザー辞書に登録できる文字数は、公式サイトでは情報が公開されていないため、実際に試してみた。詳細は連載第13回を参照のこと。

ユーザー辞書に単語を一括登録するには?

ユーザー辞書に登録したい単語をExcelでリスト化して一括登録することも可能となっている。最後に、単語の一括登録について紹介しておこう。

ここでは「iPhoneの機種名」を一括登録する場合を例に、その手順を紹介していこう。iPhoneのスペルも大文字/小文字が混在した、少し入力しづらい単語といえる。また、iPhone 14から「mini」が廃止されて「Plus」がラインナップされたなど、機種名を暗記しにくい側面もある。そこで最近の機種名をユーザー辞書に一括登録して、手軽に変換できるようにしてみよう。

一括登録用のリストは、各単語を「読み」→「単語」→「品詞」の順番で「タブ区切りのテキスト」として作成しなければならない。よって、Excelでリストを作成するときも「読み」→「単語」→「品詞」の順番でデータを入力していく。

  • Excelで「読み/単語/品詞」のリストを作成

    Excelで「読み/単語/品詞」のリストを作成

上図に示した例では、それぞれの「よみ」を「i」→「p」→「数字」とタイピングする、というルールにした。このタイピングを日本語環境で行うと「いp12」や「いp16」といった表記になる。

データを入力できたら「名前を付けて保存」を実行する。このとき、以下の手順でファイル形式とエンコードを指定しておく必要がある。なお、ファイル名は自由に指定できるので、各自の好きな名前を付けておけばよい。

  1. ファイルの種類に「テキスト(タブ区切り)」を選択する
  2. 「ツール」ボタンをクリックし、「Webオプション」を選択する
  3. 「エンコード」タブを選択し、エンコード形式に「Unicode」を選択する
  • テキスト形式で保存する操作

    テキスト形式で保存する操作

これでExcelで編集したデータを「タブ区切りのテキスト」として保存できる。ここまで作業できたら「ユーザー辞書ツール」を開き、「ツール」メニューから「テキスト ファイルからの登録」を選択する。

  • テキストファイルから一括登録する手順(1)

    テキストファイルから一括登録する手順(1)

ファイルを選択する画面が表示されるので、先ほど保存したファイルを選択して「開く」ボタンをクリックする。

  • テキストファイルから一括登録する手順(2)

    テキストファイルから一括登録する手順(2)

自動的に単語を登録する処理が行われ、その結果が表示される。これを確認してから「終了」ボタンをクリックする。

  • テキストファイルから一括登録する手順(3)

    テキストファイルから一括登録する手順(3)

以上で単語の一括登録は完了。「ユーザー辞書ツール」に戻ると、リスト化した単語が一括登録されているのを確認できるはずだ。

  • 一括登録された単語の確認

    一括登録された単語の確認

実際に変換してみた様子も紹介しておこう。以下の図は「i」→「p」→「1」→「4」とタイピングして「スペース」キーを押したときの様子だ。先ほど辞書に登録した単語(機種名)が変換候補に表示されているのを確認できるだろう。

  • 登録した単語の入力例

    登録した単語の入力例

これでiPhone 14シリーズの機種名を手軽に入力できるようになる。同様に、「i」→「p」→「1」→「5」とタイピングすれば、iPhone 15シリーズの機種名を入力することが可能となる。いずれもキーを押す回数は4回に減るため、かなりの高速化を期待できるだろう。

このように、機種名などを「手軽にミスなく入力する」といった用途にもユーザー辞書が活用できる。もちろん、登録する単語は機種名でなくても構わない。氏名や部署名(店舗名)、型番などにも応用できるだろう。

よく入力する単語のうち、「入力しづらい」または「暗記するのが難しい」といった単語を辞書に登録しておけば、入力作業を高速化できるだけでなく、スペルミスなどの確認作業も簡略化できるようになる。各自で工夫しながら上手に運用していけば、きっと便利なツールとして活用できるはずだ。気になる方は試してみてほしい。