こんにちは。今年の冬はあまり寒くなくて冬という感じがしませんね。しかしインフルエンザは流行しているようですので、皆さま体調管理はお気を付けください。
さて、前回は最近の3D CADの機能として注目されている「トポロジー最適化」についてお話しましたが、今回はこれとある意味似ているテクノロジーである「ジェネレーティブデザイン」についてお話しようと思います。
現在では主要CADベンダー各社とも、「トポロジー最適化」および「ジェネレーティブデザイン」、どちらかのテクノロジーを搭載していると謳っています。しかしその中身を見てみると、各社ともに独自の解釈で機能を紹介しています。例えば同じ動作を指して、「トポロジー最適化」と呼ぶベンダーがあれば、「ジェネレーティブデザイン」と呼ぶベンダーもあったりしています。
「部品の形状をコンピュータに考えさせる」という点を考えると、トポロジー最適化もジェネレーティブデザインもどちらも同じです。しかし現在流通している機能を大きく2つに分類すると、以下のようになっています。
- 既存形状から肉を抜いて軽量化した形状を生成する。
- 何もない状態から自由に形状を生成する。
きちんとこの2つを分けて考える場合、(1)は前回の連載でお話した「トポロジー最適化」であり、(2)が「ジェネレーティブデザイン」です。
各社のテクノロジーをこのどちらかにあてはめてみると、大半は(1)であり、(2)の何もない状態から自由に形状を生成するテクノロジーを有しているのはPTCとAutodeskです。なお、この両社はトポロジー最適化とジェネレーティブデザイン、両方のテクノロジーを有しています。
では、ジェネレーティブデザインとはどのようなものなのでしょうか? ここではオートデスク社の資料をお借りして説明します。
オートデスク社では、ジェネレーティブデザインの機能をFusion 360に搭載しています。
ジェネレーティブデザインの手順1
トポロジー最適化は求める形状の最大領域、つまり最大形状をあらかじめソリッドで作成しておきます。これに対してジェネレーティブデザインの場合は必須部分の形状だけをソリッドで用意します。
ジェネレーティブデザインの手順2
トポロジー最適化は用意された形状がまず分割されます。ジェネレーティブデザインの場合は、必須部分の最大外形を結んだ形状を自動的に生成し最大計算領域とします。
ジェネレーティブデザインの手順3
繰り返し計算をしながら、トポロジー最適化は取り除ける場所を探します。ジェネレーティブデザインの場合は必要な部分と不必要な部分を見極めながらかたまりを少しずつ変形させていきます。
ジェネレーティブデザインの手順4
最終的に、トポロジー最適化は設計者が指定した数値を保つことができる部分を残した形状ができ上がります。ジェネレーティブデザインの場合は純粋に与えた条件を保つことができる形状を生成してくれます。
ジェネレーティブデザインの具体例
さらにジェネレーティブデザインの場合は、与える条件によって複数の形状を提案してくれるので、その中から最適と判断するものを選択するこことができます。ただし自由な形状が生成されるので、必ずしもその形状通りに加工できるとは限りません。しかしそのために、設定する条件の1つとして製造条件を付与することができます。例えば3軸の切削加工を使用したいとか、3DプリンタもOKなどです。
こちらは実際にジェネレーティブデザインを使用して製品の一部ユニットを再設計し、軽量化を実現できた事例です。
WHILL株式会社様が製作販売されている次世代型電動車椅子です。
左の図のオレンジの部分が既存のバッテリーホルダーですが、この部分をジェネレーティブデザインで再設計した結果が右の図で、約40%軽量したことと、複数のパーツによるアセンブリを一体化できたことで効果を出すことができました。
この最終形状に至るまでには数多くの条件を定義したことにより、多くの候補形状がアウトプットされますので、この中からより最適な形状を選び出します。どれを選べばよいのかをサポートする機能も用意されています。
PTCのジェネレーティブデザイン
一方、こちらはPTC社のジェネレーティブデザインを紹介している動画です。
オートデスク社同様に、必須部分の形状のみを用意しておき、与えた条件をクリアできる形状を自由に考えさせて生成しています。
ジェネレーティブデザインはこのように、人が考え付かない形状を自由な発想で生成してくれるので、今までは考えられなかったあらゆる可能性を見出せるテクノロジーです。しかしまだ新しいテクノロジーでもあるため、誰もが手軽に使えるようになるのはまだ少し先になると思いますが、コンピュータが無い時代では絶対に不可能なテクノロジーでもあるので今後、普及が進むと世の中がどのようになるのか、とても楽しみです。
ではまた次回をお楽しみに!