リクルートのじゃらんリサーチセンター(以下、JRC)は10月28日、熱海観光局と連携し、AIを活用して宿泊施設の商品づくりを支援する取り組みの結果を発表した。
「じゃらんnet」のクチコミを分析して宿ごとに「AIクチコミ診断書」を作成、42施設による99の宿泊プランの造成につなげたという。
AIで地域と宿のクチコミを分析、観光戦略を商品づくりへ
今回発表されたのは、熱海市が観光戦略に掲げる「需要の平準化」に向けた取り組みとなる。
熱海市では、宿泊需要が週末や連休に集中しやすいことが課題となっている。「熱海市観光基本計画 2026–2030」でも、需要の平準化を重要目標達成指標に位置付けている。今回の取り組みでは9月の平日を重点時期に設定。大学生を含む20~30代を主なターゲットとした。
JRCと熱海観光局は、地域の方針を各宿の商品づくりにつなげるため、AIによるクチコミ分析を活用した。熱海観光局が重点時期とターゲットを設定し、JRCが分析と診断書の作成を担当。各宿は診断結果を参考に、自館で販売する商品を検討した。
「AIクチコミ診断書」で各宿の強みやプラン案を提示
分析には、「じゃらんnet」に投稿された既存のクチコミデータを利用した。朝食や風呂、接客などの「テーマ」に加え、年代や利用シーンなどの「属性」、月や季節などの「時期」を組み合わせて分析したという。
まず地域全体の強みと改善余地を把握した。そのうえで同じ切り口から個別の宿を分析し、地域全体や同じ宿種別との比較によって、各宿の特徴を可視化。AIはクチコミ分析のほか、強みと改善余地の整理、ターゲットに合わせたプランや訴求案の具体化にも活用した。
分析結果は、宿ごとの「AIクチコミ診断書」にまとめた。診断書には宿の強みと改善余地に加え、プラン名や対象、販売時期、食事条件、特典などを記載した。掲載する写真の方向性や、掲載文、告知文のイメージも盛り込んだ。
2026年6月2日には、宿泊施設向けの「閑散期をチャンスに変える 熱海エリア宿泊戦略セミナー」を開催した。参加者は自館の強みや施策について仮説を立てた後、AIによる診断結果と照らし合わせた。
診断書は商品を自動的に決定するものではない。AIによる提案を踏まえ、実際にどの内容を採用するかは、各宿がサービスや運営条件を考慮して判断したという。
42施設が99プランを造成、平日宿泊が79.4%
勉強会後、各宿は共通企画「まだ終わらない夏」の下で宿泊プランを造成した。42施設が参加し、計99の宿泊プランを販売。熱海観光局は特設ページや宿泊クーポン、縦型ショートドラマ動画を組み合わせたプロモーションも展開した。
2026年8月25日から9月18日までの対象プランの予約を見ると、重点時期として設定した平日の宿泊が79.4%を占めた。予約者のうち20~30代は43.9%だった。年代別では、学生を含む20~24歳が5歳刻みで最も多い層となった。対象プランの取扱額は1900万円を超えた。
同じ期間における対象プランも含む熱海市全体の「じゃらんnet」の宿泊予約では、平日の予約が前年同曜日比で12.0%増加した。予約全体に占める平日の割合は前年の69.6%から71.9%となり、2.3ポイント上昇した。
JRCは今回の進め方について、同様の課題を抱える他の地域でも活用できるかたちへ磨いていく考えを示している。熱海観光局も取り組みの成果を地域全体で共有、検証しながら、商品づくりや販売促進を継続的に支援する方針だ。
