primeNumberは10月15日、データとAIをテーマにしたイベント「primeNumber DATA SUMMIT 2026」を開催した。基調講演に登壇したprimeNumberの代表取締役CEO 田邊雄樹氏は、企業のAI活用について、概念実証(PoC)やAIモデルの違いを議論する段階から、ROIを評価する段階へ移行していると説明した。
田邊氏は、データを「AIを正しく稼働させるための相棒」と表現し、AIとデータは切り離せない関係にあると強調した。
Sansanと連携、顧客データをAIが活用できる状態に
こうしたAI活用を支えるデータ整備の取り組みとして、同日、primeNumberはSansanとの連携を発表した。これは、Sansanの顧客データ管理サービス「Sansan Data Intelligence」と、primeNumberのクラウドETLサービス「TROCCO」を連携させる取り組みだ。
講演にはSansanの代表取締役社長 CEOの寺田親弘氏も登壇し、連携の狙いを説明した。
寺田氏は、Sansan Data Intelligenceについて「顧客マスターから、ビジネスAIを強くする」というコンセプトを紹介した。
企業の顧客データは、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)、基幹システムなどに分散しており、社名の表記ゆれや重複、更新漏れなどが存在する。こうしたデータをそのままAIに与えても、正確な分析や回答を得ることは難しい。
Sansan Data Intelligenceでは、独自の企業識別コード「Sansan Organization Code」を用いて顧客データを識別・名寄せし、企業の属性情報を付与する。これにより、顧客データを継続的にAIが利用しやすい「AI-Ready」な状態に保つ。
今回の連携では、各システムの顧客データをTROCCO経由でSansan Data Intelligenceに集約し、名寄せや最新化を行った後、各システムに書き戻す。整備された顧客データを共通のマスターデータとして活用できるようにする仕組みだ。
両社は、連携機能を「Sansan Data Intelligence コネクター by TROCCO」として、2027年3月頃から提供する予定。Sansan Data Intelligenceの契約企業向けにオプションとして提供する。
寺田氏は「どんなAIを使っても、食わせるデータがカギになる」と述べ、AIに与えるデータの品質が重要になると強調した。
講演後の質疑応答では、Sansan単独では社内の多様なシステムとの連携が難しいことにも言及。TROCCOとの連携によって、顧客データをより幅広いシステムで活用できるようにする考えを示した。
「AIと経営をつなぐカギとなるのは、企業独自のプライベートデータ。Sansan Data Intelligenceは、企業のデータをAI-Readyな状態に整え、経営とAIをつなぐ役割を担う。今回のprimeNumberとの提携では、当社だけでは対応できない領域を補い合い、より大きな経営インパクトを生み出していきたい」(寺田氏)
SansanはAI活用率100%、年間10万時間の削減効果
寺田氏は、Sansan自身のAI活用についても紹介した。同社はAIファーストの方針を掲げ、社員によるAI活用を推進している。講演資料によると、AI活用率は100%に達し、AIによる年間の削減時間は10万時間に上るという。
「経営を取り巻く環境は日々大きく変化しており、そのスピードも年々加速している。こうした中で、いかに正確に状況を把握し、自社独自の経営戦略を描いて実行できるかが、競争力の源泉になる。そのためにも、経営とAI、データを結び付けて取り組むことが、これまで以上に重要になっている」(寺田氏)
一方、AIの利用拡大に伴い、AI関連の費用も増加している。寺田氏によると、同社ではAI関連費用と人件費を並べて議論するようになり、人事責任者であるCHROがAIトランスフォーメーションを統括するCAXOを兼務する体制を採用した。
さらに、エンジニア以外の社員がAIを使って業務課題を解決できるよう、100人のソリューションビルダーを育成する取り組みも進めている。
寺田氏は、企業がAIをビジネスで活用するためには「データ」「カルチャー」「成果」の3つが重要になるとの考えを示した。
特に、企業独自のデータがなければAIの価値を十分に引き出せないと指摘。また、AIを使うことが当たり前になる中で、企業文化そのものを変えていく必要があると説明した。
質疑応答では、3つ目の「成果」についても言及。AI活用の成果を評価する際には、「数時間削減できたかではなく、何が増えたか」という視点が重要だと強調した。
AIエージェントがデータ基盤を自律的に整備、新製品「primeNumber ADP」
primeNumberは同日、新製品「primeNumber Autonomous Data Platform(primeNumber ADP)」の提供開始も発表した。
同社は2026年4月、データとAIを駆使した次世代の経営手法として「Generative Data Management(GDM)」を発表した。これは、AIによる業務の生産性向上や新たな価値創出に加え、その基盤となるデータの管理・運用自体をAIによって自律化する考え方だ。
同製品は、このGDMを具体化する製品として位置付けられる。クラウドETLサービス「TROCCO」とAIデータプラットフォーム「COMETA」を中核に、AIエージェントによってデータ基盤の整備や運用を自律化する。
田邊氏は、多くの企業にとってデータ基盤の整備が継続的な課題になっていると説明した。市場環境や規制の変化、業務システムの仕様変更などに応じて、データの定義や処理を修正し続ける必要があるためだ。
primeNumber ADPでは、AIエージェントが社内外のビジネス環境やシステムの変化を検知し、データやその意味・定義を表す「コンテキスト」の追加・修正を提案する。
企業が設定した基準の範囲内であればAIが変更を反映し、基準を超える変更については人が判断する。こうした判断を蓄積することで、データとコンテキストを継続的に整備していく仕組みだ。
例えば、同じ「売上」という指標でも、部門によって集計対象や計算方法が異なる場合がある。AIが正しく分析するには、数値だけでなく、その数値が何を意味するのかを理解できる必要がある。
質疑応答で田邊氏は、AIをビジネスで活用するためには、まずは実際に使ってみることが重要だと説明。そのうえで、企業がAIに何を任せ、何を守るべきかを把握し、信頼性を確保する必要があると指摘した。
特に、AIに適切なコンテキストを与えることは不可欠であり、それが欠けるとAIが誤った方向に進む可能性があると強調した。




