ラピダス(Rapidus)は、世界初の同一建屋での次世代半導体一貫生産工場をめざし、新たな施設を整備した。生産性向上に必要な前工程と、デバイスの高密度実装を図るための後工程に関わるものであり、協力企業の技術者との協業を推進する。

同社の小池淳義社長は、2nm(ナノメートル)プロセス半導体を2027年度(2028年3月期)後半に量産開始後、後工程機能を統合することにしている。ラピダスを「成長投資の要」と位置づける赤澤亮正経済産業大臣は、プロジェクト成功のために積極的な財政支援を継続する方針だ。

  • ラピダス独自の強みを記者会見で力説する、同社の小池淳義社長

    ラピダス独自の強みを記者会見で力説する、同社の小池淳義社長

ラピダスが開所した解析センター・RCSの役割

ラピダスは4月11日、先端半導体生産工場「IIM-1」(イーム1:InnovativeIntegration for Manufacturing-1)のある北海道千歳市で、ふたつの新施設の開所式を行った。赤澤大臣のほか、地元選出の国会議員らが列席し、改めて事業の成功を訴求した。

同社が今回開所したのは、IIMの隣に位置する「解析センター」と、異種デバイスを実装するチップレット技術を開発する「RCS」(Rapidus Chiplet Solutions)。IIMと解析センターは、3階部分が廊下でつながっている。生産現場に近く、複雑なゲートオールアラウンドトランジスター(GAA)の不具合などを迅速に検出し対処することで、歩留まり向上につなげられる。電子顕微鏡をはじめとする先端装置の導入も進め、物理解析や環境・化学分析、信頼性評価を行えるようにする。

  • 解析センターの様子。IIMの隣に位置している

    解析センターの様子。IIMの隣に位置している

  • RCSが入居するセイコーエプソン千歳事業所 (画像提供:Rapidus)

    RCSが入居するセイコーエプソン千歳事業所 (画像提供:Rapidus)

RCSは、クルマで数分先に立地するセイコーエプソン千歳事業所内のスペースを借りて、2024年10月から整備をはじめていたもの。2025年12月にはガラスキャリアをつかった600mm角インターポーザを試作している。これから先端デバイスに対応するチップレット技術の開発と試作を強化し、FOUP(フロントオープニング・ユニファイド・ポッド)を使うIIMの生産ラインに組み込む。

すでにIIMでは後工程の導入を視野に入れ、前も後も含めて総合的な対応を進めている。「2027年度後半からの量産を誓う」と言い切った小池社長は、今回の開所式で「IIMも解析センターも同じ1年2カ月で完成した。RCSは昨年4月から工事を進めてきたものだ。これで前/後工程の一貫生産工場へと大きく前進する」と語った。IIMが2nm半導体の量産開始後、1年以内には世界初となる一貫生産ラインが稼働する見通しだ。

  • 世界初600mm角基板を抱えてみせる、ラピダスの小池淳義社長。「SEMICON Japan 2025」にて筆者撮影

    世界初600mm角基板を抱えてみせる、ラピダスの小池淳義社長。「SEMICON Japan 2025」にて筆者撮影

赤沢経産大臣「熱い思い聞き、成功を確信」

「一昨年にこの地を訪れ、熱い思いを聞いたことで成功を確信することができた」という赤澤大臣は、ラピダス支援を力強く打ち上げた。

また、「政府は2月、情報処理振興事業協会(IPA)を通して1,000億円を拠出したのに続き、3月には有識者審査で6,315億円の追加予算計上が決まった。これでラピダスへの支援総額は約2.4兆円になる」と明かした。

  • 開所式でのテープカット(画像提供:Rapidus)

    開所式でのテープカット(画像提供:Rapidus)

追加支援の内訳は、前工程が5,141億円、後工程が1,174億円。前工程では、ユーザーとなる半導体企業が正しく生産するのに必要な半導体プロセス設計キット(PDK)の上位版を完成させる。また、生産にかかる時間(TAT)を短縮するためのシステム検証や歩留まり改善も行う。

後工程では高密度パッケージのプロセス検証、多層インターポーザー開発、先端半導体とメモリ間の通信用ライブラリ(基本論理回路の設計データ)の構築を行うことにしている。