繊維量産と重要鉱物確保を両立、資源安全保障とGXへの貢献も視野
新日本繊維は4月9日、同社が開発を進める石炭灰由来の次世代繊維「BASHFIBER(バッシュファイバー)」の製造過程において、レアアース元素(REEs)の分離・回収に成功したと発表した。
高機能繊維の量産を目指すプロセスの中で、重要鉱物資源の回収も同時に可能となる点が特徴で、今後の研究開発次第では、資源安全保障やグリーントランスフォーメーション(GX)への貢献も期待される。
石炭灰を原料とするアップサイクル繊維「BASHFIBER」
BASHFIBERは、石炭火力発電所や工業用ボイラーで石炭を燃焼した際に発生する石炭灰を原料とする連続長繊維で、高強度に加え、耐熱性や耐薬品性を備えることから、グラスファイバーなどに代わる高機能・環境配慮型素材としての活用が期待されているという。
同社はこれまで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」の助成を受ける形でBASHFIBERの量産化検証を進めてきたとする。具体的には、石炭灰を加熱溶融し、ノズルから押し出して引き延ばし繊維化する「溶融紡糸」に関する技術実績を積み重ねてきたという。
製造プロセスからレアアースの分離・回収に成功
石炭や石炭灰にレアアース元素が含まれていることは、学術的には以前から知られており、米国では近年のレアアースに関するサプライチェーンの強靭化に向けて石炭ならびにび石炭灰からレアアースを取り出す実際の試みを活発化させるなど、資源の国内回収・確保に向けた取り組みが推進されるようになっている。
こうした市場環境の変化の中にあって同社もBASHFIBERの製造プロセスを検討する過程で、石炭灰からレアアースを分離・回収する基礎研究を進めてきたとのことで、その結果、独自手法により、レアアースの分離・回収に成功したという。同社によると、この技術は米国などで進められている手法とは異なるアプローチで、エネルギー・産業副産物である石炭灰から重要鉱物資源であるレアアースを取り出せる可能性を示したものだとしている。
国内調達によるサプライチェーン強化のメリット
BASHFIBERは、日本国内で使用された石炭から排出される灰を原料として再利用するため、原料を国内で調達できる点も特徴だという。
高機能繊維の製造と同時に、レアアースの回収・備蓄につながれば、素材と資源の両面でサプライチェーン強化に寄与することになる。
同社は、国内の発電所などから排出される石炭灰を原料にして高機能繊維を製造し、その過程でレアアースを回収・確保するという、一連の循環型プロセスを構築することを構想している。いわば“一石三鳥”の事業モデルを通じ、日本のみならず国際社会への貢献を目指すとしている。
実用化に向けた検証を加速
なお、今回のレアアース回収は基礎研究段階の成果であり、商業レベルでの回収や事業化には、さらなる研究開発が必要となるという。そのため、同社は今後、多様な産業分野の事業パートナーとの連携拡大や新たな資金調達を進めながら、実用化とスケールアップに向けた検証を進めていく予定としている。