両備システムズは、2025年度(2025年1月~12月)の連結業績を発表した。売上高は前年比20.5%増の445億3800万円。連結を除く、同社単体の売上高は同18.8%増の404億円となり、いずれも過去最高を更新し、創業60周年となった節目の1年を好調な業績で終えた。

両備システムズ 代表取締役上席執行役員COOの小野田吉孝氏は「自治体システム標準化の動きの遅れがマイナスに影響したものの、公共分野が全社の業績をけん引している。また、民需、BPO、クラウドなどの主要領域で、バランスよく収益を確保し、成長している。次期以降の成長に向けた投資を継続しながらも増収を達成することができた。2030年度には、西日本ナンバーワンのICT企業になることを視野に入れ、売上高500億円の達成を目指している」とし、長期目標の達成に改めて強い意欲をみせた。

  • 2025年度における両備システムズグループの業績

    2025年度における両備システムズグループの業績

公共・ヘルスケア分野が大幅成長、自治体システム標準化がけん引

セグメント別業績では、公共・ヘルスケア分野の売上高は前年比28%増の336億円となった。公共ソリューションカンパニーでは、自治体システム標準化の導入が本格化したのにあわせて、導入や受注が増加。売上高は前年比15.9%増の127億2600万円となった。

小野田氏は「ベンダーが起因となり、基幹システムの刷新が延伸し、構築計画の見直しが多発したが、現時点では問題のない進捗となっている」と話す。自治体システム標準化に関する2025年度の売上高は82億円となり、前年度の15億円から大きく伸長。2026年度は107億円とさらに拡大を見込む。

  • 両備システムズ 代表取締役上席執行役員COOの小野田吉孝氏

    両備システムズ 代表取締役上席執行役員COOの小野田吉孝氏

20業務を対象とした自治体システム標準化のうち、健康管理システムが対象となる「健康かるて」は、900団体への導入を計画しており、すでに840団体で稼働している。この分野におけるシェアは52%に達することになる。

また、税務システムでは、債権一元管理型滞納整理システムの「THINK CreMaS Cloud」を提供。2026年度までに727団体へと導入を計画しており、462団体への導入を完了。福祉情報システム「R-STAGE」は、210団体への導入を計画しており、193団体での導入が完了している。

さらに、運用保守の効率化や自動監視やセキュリティなどのサービスで差別化を図るほか、運用管理補助ビジネスの拡大も視野に入れ、機能強化を図っている。さらに、AIエージェントによる業務改革や、こども家庭庁の方針に即したデータ連携など、自治体と連携した実証事業を複数進行していることを明らかにした。

  • 自治体システム標準化の進捗状況

    自治体システム標準化の進捗状況

ヘルスケアソリューションカンパニーは、売上高は前年比52.8%増の90億600万円と大きく伸長した。自治体向け健康管理システムの標準化適用作業が本格化したことが大きく貢献しているのに加えて、医療DX製品へのリプレースにも対応。

加えて、ウェルネス領域では、企業の健康管理を支える「SASAWELL(ササウェル)」の機能が揃い、事業拡大に向けた取り組みを開始しているほか、既存システムの受注および導入も堅調に推移したことがプラスに働いた。

小野田氏は「マックスシステムの吸収合併により、電子カルテシステムや医事会計システムの連携強化ができ、医療事業の拡大に向けた基盤を整備できた」という。現在、早期胃癌深達度診断支援システムの販売準備と、AIを用いた画像処理技術を活かした研究開発を加速している。

民需・クラウド事業の進展と新規事業の立ち上がり

民需分野では売上高が前年比2%増の109億円となり、全体の約25%を占めた。そのうち、民需分野で主力となる共創ビジネスカンパニーの売上高は前年比3.1%増の74億2600万円となった。

製造・流通向け販売・生産管理システムの「Info-Gear(インフォギア)」のパッケージ開発が完了し、新規の受注を獲得。ファッション・アパレル基幹業務ソリューション「Sunny-Side(サニーサイド)」は、大型プロジェクトの完遂や、上流フェーズでの案件獲得といった実績が生まれている。

また、グループ会社である両備バスとの共創ビジネスとしてスタートした全国の旅行代理店と貸切バス事業者をつなぐサービス「mobitas(モビタス)」を開発。ビジネス拡大のための基盤づくりが進んだという。小野田氏は「主要パッケージ開発投資が一段落し、mobitas を開発するMIRAHOOPの設立などの成果もあがっている」と期待を示す。

クラウド関連の売上高は前年比13%増の123億円となった。インフラビジネスカンパニーは、システム更改やガバメントクラウド、アウトソーシング案件の獲得、セキュリティに対する関心の高まりを背景にビジネスが成長した。同カンパニーの一部をクラウドビジネスカンパニーに移行したことで、売上高は前年比2.5%減の86億2700万円となったが、実質ベースでは増収増益になっているという。

クラウドビジネスカンパニーの売上高は前年比85.9%増の36億9700万円となった。官公庁の大規模HPシステムの移行作業が完了間近となっているほか、実証事業への参画などを進めたという。中四国エリアの企業で初めてとなるISMAPの取得により、次期プラットフォームの成長基盤を整えた点もトピックスのひとつだ。

小野田氏は「クラウド事業は、事業開始から5年で、売上高が約37億円の規模に成長した。想定を上回る推移となっている。2021年度には3億円の事業規模であり、さらに、仮想プラットフォーム事業を移管したこともあり、よりシナジーを発揮できるようになった。データセンターなどを含むクラウド系ビジネスでは、2030年度に売上高全体の半分となる250億円を目指している」と語った。

新規事業では、バングラデシュにおいて経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業」として、農業DXおよびカーボンクレジット創出に向けた実証事業を推進し、生産性向上で20%、メタン排出量では30%以上の削減を達成。

さらには、フィンテック事業の推進や、ベンチャー投資2号ファンドを準備し、新たな収益基盤の構築に向けた取り組みを行ったという。今後は、バングラデシュでの拠点展開も視野に入れ、同政府との関係強化などを図る考えも示した。

創立60周年の節目にあわせて、社員への還元を行う各種施策を展開。2026年度を含めて5年連続の賃上げを実施し、2021年度比で23%上昇したという。また、社内公募制度などによる人材流動化の促進、評価制度見直しなどの人的資本経営を進めたという。

2026年度は踊り場、標準化2.0と次の成長に向けた準備を加速

2026年度の業績見通しは、売上高は前年並の446億円とした。2026年度は3カ年の「2024-2026年中期経営計画」の最終年度となり、当初計画の達成を見込む。小野田COOは「現時点では、中期経営計画で掲げた目標を維持しているが、この目標を最低ラインとし、上振れを目指している」とした。

  • 来期の見通し

    来期の見通し

セグメント別では、公共・ヘルスケア分野は、売上高が前年比1%減の333億円。自治体システム標準化のピークを迎えることから、システム標準化関連事業では107億円の売上高を見込むが、導入や稼働を延伸している団体への対応などが続くと想定しており、人的リソースの分散などを懸念材料としている。

小野田氏は「現在は『標準化1.5』として、標準化が稼働していない案件の獲得を進める一方、2026年度以降は、標準化において不足した機能の提供や、将来に向けたモダナイゼーションの支援準備、AIエージェントの活用提案などによる『標準化2.0』に取り組む。導入期限の延長や、運用保守に対する予算措置などの動きもしっかりと捉えていく」とした。

固定資産税課税支援システム「マルコポーロ for Web」では、政令指定都市への導入が進んでいるほか、自治体向けシステム『公開羅針盤』グループウェアシステムでは、AIエージェントを活用し、旅費事務を効率化する実証実験を札幌市と開始。札幌市の旅費規程などをAIエージェントが学習し、職員に対して最適な出張行程などを提案することができるという。

また、ヘルスケア分野では健診機関の需要増に対応するため「WELLSHIP」シリーズの拡充を進めるという。現在、200団体以上への導入実績があるコールセンター健診予約システム「AITEL」のほか、健診結果データ収集システム「COLLECREW」、健康経営・健康管理支援システム「SASAWELL」をラインアップ。同氏は「ヘルスケア分野は、2026年度も高い売上げ成長を見込んでいる」と述べた。

民需分野の売上高は前年比3.7%増の113億円を計画している。2026年1月にドリームゲートを合併し、「Sunny-Side」などのアパレル分野の社会課題解決に向けたシナジー創出を加速。小野田氏は「ドリームゲートは40人規模の企業であったが、統合することで体制を強化し、アパレル大手などへの提案を増やしている」という。

さらに、ロジスティードソリューションズのロジスティックスITソリューション「ONEsLOGI」をOEMで採用し、既存ソリューションと組み合わせた「R-LOGI」シリーズとして展開。自動倉庫などとの組み合わせ提案や、物流倉庫のリニューアル時の提案などを含めて、物流業界向けへの拡販を強化する。

2026年度はmobitasの案件獲得にも力を注ぐ考えも示した。クラウド・インフラ領域では、売上高で前年比8.1%増の133億円を目指す。ISMAP認証取得の実績を生かし、官公庁への提案を加速。今後は、自治体などにも提案を広げる。さらに、ガバメントクラウド運用管理事業などの次世代サービスを確立。成長を加速するという。

加えて、人的資本の面では継続的な賃上げを実施し、新卒の初任給を28万円(2026年度実績)に引き上げたほか、開発プロセスにおけるAI駆動型開発の定着や、営業および管理スタッフ向けに、生成AIやAIエージェントの活用プログラムを拡充。2026年度からAI活用に向けた社員向けスキル教育を進めていく。

小野田氏は「AI駆動型開発においては、アウトプットのチェックなどができる経験者が必要になる。長期的には、キャリア採用を増やしていきたい」としたほか、「AIを活用するためには、右脳が優れた人材獲得にも注力したい」とも述べた。

セキュリティエンジニアを160人育成したほか、クラウドエンジニアは、300人規模にまで拡大する計画であり、これまで主力としてきたAWS、Salesforce、Kintoneのほか、ガバメントクラウド運用管理では、ServiceNowを活用していることから、ServiceNowに関する認定技術者も増やしていく。

中期経営計画と新体制で2030年度売上高500億円へ

「2024-2026年中期経営計画」では、既存事業の拡張に加えて、新規事業を加速し、M&Aによる能力拡張や事業領域の拡大を図る「浸透・推進期」と位置づけている。

小野田氏は「コロナ禍で求められる技術が変わるなか、プラットフォームの構築により、様々なサービスとの連携を可能にしてきた。さらに、自治体システム標準化の動きにより、お客様を増やすことができた。民需系では、新たな製品群が揃い始めている。2030年度の売上高500億円の目標は、当初は、はるか彼方の数字であったが、現在では社員が500億円という目標に向けた具体的な議論を進めている。進捗への手応えは120%である」と自信を滲ませる。

  • 2030年度に500億円の売上高を目指す

    2030年度に500億円の売上高を目指す

そして、同氏は「2026年度は『目標達成までやり切り、次のステージへ』をスローガンに掲げている。目標達成を見据え、より推進力を高めていく」と述べた。

他方で「社内には属人化している部分が残っている。チーム制による取り組みを進めていく。社員が主体性を持ち、自律して、新たなことに挑戦する風土を確立したい。現在は自治体システム標準化により、待っていても案件が得られる環境にある。こうした時期こそ、新たな顧客を獲得する努力をしなくてはならない。自律性の定着は、企業体質を強化するためにも必要な取り組みだと考えている」と、小野田氏は語る。なお、2026年夏には、次期中期経営計画の骨子について発表を予定している。

両備システムズでは、2026年4月1日付で役員人事を発表。両備グループの方針に基づき、専門性や担当領域をより明確に反映した役職呼称へと改めた。それに伴い、会長、社長、副社長などの肩書きがなくなった。

新たな体制では、小嶋光信氏が代表取締役 CEO(最高経営責任者)、松田久氏が取締役 VCEO(副最高経営責任者)、松田敏之氏が代表取締役 CSO(最高戦略責任者)、三宅健太氏が代表取締役、小野田氏が代表取締役 上席執行役員 COO(最高執行責任者)となる。

また、星埜圭吾氏が取締役 上席執行役員 CPBO(最高公共事業責任者)兼CHRO(最高人事責任者)、浅尾誠氏が取締役 上席執行役員 CCBO(最高民需事業責任者)兼CISO(最高情報セキュリティ責任者)、古林栄二氏が取締役 上席執行役員 CSMO(最高営業責任者)、下谷哲司氏が取締役 上席執行役員 CIPO(最高インフラ事業責任者)、石川常義氏が取締役 上席執行役員 CAO(最高管理責任者)兼CIO(最高情報責任者)、福田利行氏が上席執行役員 CTO(最高技術責任者)となり、役職名からも事業責任を明確化した。

  • 両備システムズの役員人事

    両備システムズの役員人事

松田CSOは、両備システムズを含む両備グループ全体の将来戦略を担当。両備システムズにおける小野田COOの権限を広げ、経営判断の一部も小野田COOが担うことになる。また、両備システムズとしては初めてCTOを配置し、技術戦略の強化や対外的な技術発信などを強化していく考えだ。