Snowflakeは今年3月、データとAIの最新トレンドを学べるイベント「Snowflake Data for Breakfast」を開催した。本稿では、同イベントで紹介された、三菱電機のデータ活用の取り組みのポイントをお伝えする。
三菱電機は生成AIを活用した設計文書参照システム(RAG)を構築しており、SnowflakeのCortex Servicesを活用することで、2日で98%の回答満足度を達成したという。
なぜ三菱電機はRAGを「2日で98%満足度」にできたのか
三菱電機の生成AI活用事例として、設計文書参照システムが紹介された。従来の設計文書を簡単に取り出し、設計のスピードと精度を上げることを目的としており、ユーザーの質問に回答するRAGシステムとして構築された。
当初は独自にRAGを構築していたが、4カ月の開発期間で70~80%の精度だったという。これをSnowflakeのCortex Servicesを活用することにより、2日で98%の回答満足度を達成したという。
三菱電機 DXイノベーションセンター プラットフォーム設計開発部 部長 水口武尚氏は「最新SaaSサービスを活用できることがこの成果につながった」と説明した。
データを横断活用する基盤「Serendie」とは何か
三菱電機は経営戦略として「デジタルによるイノベーション」と「イノベーティブカンパニーへの変革」を掲げ、特にデータを使ってサービスを提供することを重視している。
具体的には三菱電機の他の事業資産(空調、エレベーター、鉄道機器、電力など多様なコンポーネント)から得られるデータを分析し、課題を発見して新たな価値をサービスとして提供する。
価値の提供先は従来の顧客に加えて、ビルオーナー・建築会社、さらにはテナントやそこで働く人々へも広げ、同時に既存コンポーネントの改善にもつなげる。
その中核をなすのが「セレンディピティ」と「デジタルエンジニア」を組み合わせた造語となる「Serendie」だ。Serendieは「技術基盤、共創基盤、人材基盤、プロジェクト推進基盤」の柱から構成されている。
マルチAIエージェントはどのように事業を生み出すのか
水口氏はプロジェクト推進基盤/事業創出の例として「マルチAIエージェントによる事業仮説生成サービス」を自社開発・活用していることを紹介した。
顧客情報や課題、社内の事業専門家エージェントを組み合わせ、エージェント同士の対話やオーケストレーションを通じて事業仮説を生成し、その仮説を参考に新サービス開発を進めるという。
機器データを活用した具体的なサービスとは何か
このようにマルチAIエージェントによって生成された事業仮説は、具体的なサービスとして実装されている。その例として、放電加工機の「見守りサービス」が紹介された。
従来は機器停止時に顧客からの連絡を受けて対処していたが、常時の稼働状況・アラーム状況を預かりAIで見守り、早期対処が必要と判断した場合は三菱電機側から顧客へアクセスすることで、工場停止時間や復旧までの時間短縮を目指すという。
Serendieはどのようにデータを集め、価値に変えているのか
こうした事業創出やサービス提供を支えているのが、Serendieのデータ基盤である。
Serendieでは、「電力関係のブレンダー」「ビル関係のミルフィーユ」「空調・家電のディノバー」などのプラットフォームシステムからデータを集め、Snowflakeをはじめとするデータプールへ集約し分析ツールで分析する。
そこで見出した価値をAPI連携してデジタルサービスとして提供する。あわせて、顧客情報基盤やサブスクリプション管理基盤も整備している。
水口氏は、データプール/データレイクとしてSnowflakeを採用した理由として「フルマネージドで管理の手間が少なく、インフラ管理負担を軽減できる」、「グローバルのトップベンダーであり、AIなど最新技術を自動的に活用しやすい」、「グローバルで使用可能である」の3点を挙げていた。
データ活用を進める組織はどのように変わったのか
三菱電機は電力・防衛産業も手掛けているため、データ活用にセキュリティ面の不安によって保守的になりがちという課題がある。
セキュリティは重要であることを前提としつつ「顧客価値のためにデータも使っていく」という位置づけを社内で確立する重要性があると「三菱電機グループデータ活用宣言」を公開している。
ガバナンス体制については、事業領域が多岐にわたりDXイノベーションセンターでの事業理解が追いつかないため「中央集権型」ではなく、インフラを一括提供しつつ各事業のデータオフィサーが管理・活用を担う「連邦型」へ移行しつつある。
データ活用を支える文化と人材はどう作られているのか
ボトムアップの取り組みとして、有志運営のAWSユーザーコミュニティ「JAWS-UG」で現在750名のメンバーが活動している。
オフライン交流も重視し、オンラインでは部門横断で問題解決を行い、質問に対して有識者が解決策を提示するなど、文化が変化してきたという。
人材基盤に関してはスキルセットを9つの分野にまとめ、採用・教育を推進している。対象は従来型ITに限らず、マーケティング、ソリューションデザイン、UI/UXデザイン等も含む。
教育施策としてDXイノベーションアカデミーを設立し、AWSの教育プログラムも活用している。
データ活用は何が重要なのか
このようにデータ/AI活用には「ピープル、カルチャー、プロセス、テクノロジー」の4要素をバランスよく進める必要がある。
単なる仕組み整備だけでは進まないこと、トップダウンの共有に加えて現場がタイムリーに正しいデータを入力する重要性が強調された。




