グーグル・クラウド・ジャパンは3月26日、都内で「パートナープログラム」に関する説明会を開催した。AIIフルスタックやソブリン対応を軸に、パートナーとの共創を通じた日本市場での成長戦略を明らかにした。
Google CloudのAIフルスタックと日本市場へのコミット
冒頭、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の三上智子氏が登壇し、Google CloudがAIのフルスタックのソリューションを有している点を挙げつつ「TPU・GPUなどのチップセット、開発基盤、モデル、アプリケーション、エージェントのレイヤまで自社開発している。レイヤ間の緻密な連携により、お客さまに価値を提供している」と、同社の優位性について触れた。
具体的には「インフラ」「開発者体験」「データ」「セキュリティ」「エージェント時代の業務ツール」の5つ観点でソリューションをまとめ上げている点を強調。
インフラでは、従来の基盤運用インフラに加え、AIインフラとしてGPU・TPUを提供。開発者体験はAI統合プラットフォーム「Vertex AI」や「Gemini API」を提供し、AIを活用した開発をサポートしている。データについては、AI Readyなデータを保持するためのデータプラットフォームを再整備していくという。
セキュリティに関してはAIが実装されたセキュリティソリューションでユーザーを保護する。エージェント時代の業務ツールでは、Google Workspaceに加え、Gemini EnterpriseをビジネスにおけるAI活用の入口として位置付け、マルチエージェントを制御するエージェントプラットフォームとして、業務へのAI導入を促進していく。
そのうえで、三上氏は日本法人としての新たなビジョンとして「AIの力でともに創ろう、ワクワクする日本の未来を。」を掲げた。
パートナー戦略を刷新、「3+1」で拡大するGoogle Cloudの成長戦略
次に、グーグル・クラウド・ジャパン パートナー事業本部 上級執行役員の上野由美氏が同社のパートナー戦略と、市場アプローチについて説明に立った。同氏は昨年1年間で国内における生成AIの事例が120社に達し、パートナーとのビジネスも大きく成長したと振り返り、2026年からはパートナー事業と中堅成長企業を担当する法人営業を統合した組織をリードしていく。
上野氏は「事業を拡大させるスケールアップの段階に入る。2026年はこれまで同様、インダストリーソリューションの拡充に加え、日本の産業を広く支えるスケールビジネスを拡大する。2つの明確なアプローチで事業領域を拡大させる。さらに、パートナープログラムの刷新とAIによる自動化により、エコシステム全体の透明性と収益性の向上を目指す」と意気込みを語る。
同社では2026年のパートナー戦略として、エンタープライズ市場、スケールビジネス市場、ソブリン戦略、そしてこれら3つの戦略を根底から支える基盤として、今年1月に刷新した「Google Cloud Partner Network」を加えた「3+1」を据えている。
エンタープライズ市場では、大手コンサルティングやSIerとの協業を深化させ、一環としてパートナー企業でも同社製品を導入して検証を行う「クライアント・ゼロ」でノウハウと知見を蓄積。
これにより、顧客の経営課題に直結するDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の立案や上流工程から実装、定着までを一気通貫でけん引してもらい、大規模案件につなげる。中長期的には、同社のソリューションをISV化してGoogle Cloudのマーケットプレイスへの展開を目指す。
スケールビジネス市場は、コーポレート(BtoB)市場の幅広い顧客に対してパートナー企業が100%主体となるビジネスモデルにシフト。これを実現するために、同氏は法人営業の統括を兼務することになっており、パートナー事業との両輪で進めていく。
パートナー企業が顧客の全面に立ち、直接的に案件をけん引し、Google Cloudは統合された営業体制と、パートナーを支援するための専門的なオペレーションで案件の創出から設計、クローズまでを支援。パートナーの顧客基盤と俊敏性に、技術・営業支援を掛け合わせて、市場カバレッジを最大化する考えだ。
デジタル主権ニーズに対応するGoogle Cloudのソブリン戦略
ソブリン戦略は、地政学的リスクや経済安全保障の観点からデジタル主権への関心が国内でも高まっており、AIが本格的に実用段階に入る中で顧客は自社の機微なデータを国内で安全に保有したいニーズに対応。
そのため、データの保管場所やアクセス制御を自ら管理するデータ主権と、インフラの運用を外部の影響を受けずに制御する運用主権を両立したソブリンクラウドを提供していく。そのため、防衛や公共分野のみならず、金融、重要インフラ、製造業など、機微なデータを取り扱うエンタープライズ領域への対応を進めていく。
これらを実現するにあたり、データセンターの高度な運用能力を持つ国内の主要パートナーと連携し、セキュリティ要件レベルに応じた3段階のソリューションとして「Data Boundary」「Google Cloud Dedicated」「Google Distributed Cloud air-gapped」を提供。
第1段階のData Boundaryは、ガバメントクラウドなど制限の対象になるワークロードに対して、データの保管場所やアクセス制御などのコンプライアンス機能をデフォルトで組み込み、ソブリン性を担保。
第2段階のGoogle Cloud Dedicatedは、金融機関や重要インフラなど高い運用主権が求められるシステム向けとなり、国内のパートナーを通じてローカルコントロールにより、外部から影響を受けない自律的なインフラの運用を実現するという。
第3段階のGoogle Distributed Cloud air-gappedは、防衛や国家安全保障といった最高機密のワークロード向けに、外部のネットワーク接続を必要としない物理的に隔離されたクラウド環境を提供する。
そして、刷新されたパートナープログラムのGoogle Cloud Partner Networkでは、Tier(広さ)とCompetency(深さ)を評価軸とする。
Tierに関しては、これまでの「Select」「Premier」に加え、新たに上位層として「Diamond」を新設。Competencyは特定の技術やインダストリーに対する技術の深さを表し、ビジネス規模に関わらず特定の領域における高度な専門知識を正当に評価する。
上野氏は「広さと深さという2つの評価軸は、AIを活用して評価プロセスを自動化し、透明性を担保する。パートナー企業の貢献や専門知識、専門性がダッシュボードでリアルタイムに自動で反映されるシステムを利用し、専門性と実績が常に可視化される。われわれは可視化された専門性が顧客価値へと直結する『好循環エコシステムの完成』を目指す」と強調した。
NECのGoogle Cloud活用、AIエージェントによる業務変革
次に、パートナー企業でもあるNEC AIテクノロジーサービス事業部門長 兼 AI Technology Officerの山田昭雄氏、NTTデータ 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業本部長の新谷哲也氏が登壇した。
NECとグーグル・クラウド・ジャパンは、2025年8月に戦略的提携を発表。提携により、両社はAIエージェントを起点に企業や自治体における業務変革と新たな価値創出を支える包括的、かつオープンなAIエコシステムの構築を目指している。
山田氏は「Google Cloudの基盤を活用したサービス開発を、NECがクライアント・ゼロとして社内先行導入するなど広範に連携している。エージェント開発基盤「NEC Agent Platform」は、Google CloudのADK(Agent Development Kit)を全面的に活用した」と述べている。
そのほか、上場企業に求められるTNFD(サステナビリティリスク評価開示)レポートでは、AIエージェント中心で実施するシステムをGoogle Cloudと共同開発。AIが社内活動の調査・分析、リスク/機会特定、レポート作成までを自律実行し、2025年度のNECにおけるTNFD作成では調査評価の工数を92%削減、リスク評価の時間を8万時間短縮したという。
足立区のEBPM(証拠に基づく政策立案)支援ツールを、Google CloudとNECの技術を組合せて開発し、制作ダッシュボートを構築するなど、行政経営の質を向上させて区民サービスの最適化を図る取り組みを進めている。
また、NECにおける「Corporate IT Transformation(社内変革)」では、次世代プラットフォーム「One NEC Data Platform」はGoogle Cloudの「BigQuery」に移行し、年間1億6000万円のコスト削減につなげている。さらに、社内ポータルサイト「One NEC.com」をVertex AIに移行し、社内データを容易に検索できるようになり、検索性能を約7割改善したほか、Gemini搭載のAIリサーチ・ノートツール「NotebookLM Enterprise」は9200人の社員が利用を開始している。
NTTデータが推進するGoogle Cloud連携、AIエージェントのグローバル展開
一方、NTTデータは2025年8月にグローバルパートナーシップを締結し、これまで大企業を中心としたGoogle Cloudへのワークロードのマイグレーション実績は5000超、認定者数は日本国内だけでも1200人を抱える。
新谷氏は「グローバルパートナーシップの締結で、全世界で業務特化型のエージェント開発・販売やソブリン対応に加え、モダナイゼーション、セキュリティも含めて取り組んでいる」と説く。
パーソナルなAIエージェントが複数のAIと連携しながら、バーチャル・フィジカル両面で業務をサポートする生成AI活用のコンセプトである「Smart AI Agent」は、世界の先進企業と提携してAIエージェントの開発を推進し、業界別・業務別・機能別に特化したソリューションを提供していく方針を示している。
その一環として、Google Cloudが持つ高度な分析、AI、クラウドなどの先進技術を融合させ、グローバルにおいて50以上の業界特化型AIおよびクラウドソリューションを開発し、銀行、保険、製造、小売り、ヘルスケア、ライフサイエンス、公共部門などの分野で企業の変革することを目指している。
さらに、NTTデータの顧客向けに「Gemini Enterprise」の定着に向けた導入・教育・活用支援としてアクセラレーションプログラムを提供していることに加え、ソブリン要件に対応するラインアップとして、Google Cloudのテクノロジーを組み込んだプラットフォームサービスを提供する。
新谷氏は「パブリッククラウドからプライベートクラウド、その中間のハイブリッド領域を含め、Google Cloudのサービスと連携してフルスタックで提供していく」と力を込めていた。











