【 強く豊かな国づくりへ 】高市政権への『期待と課題』

プラス・マイナス現象が同居

 国の基本的な骨格をどう構築していくか─。

 高市早苗・第2次政権に課せられた課題は重い。先の衆院解散総選挙で圧勝、自民党単独で衆議院全議席(465議席)の3分の2以上を獲得。与党内でも、この圧勝に「驕ることなく、野党の意見も謙虚に聞きながら政治の運営を図っていく」という声が挙がる。

 日本が抱える課題が多いだけに、与党側にも緊張感のある政治運営が求められる。それにしても、これだけの議席を自民が獲得したのはなぜか? 「何より今、日本国内に漂う閉塞感を打ち破って欲しいという国民の考えがあった」と某識者は語る。

 コロナ明け後、経済も上向き、賃上げも進むが、それも物価高に追いついていけず、実質賃金のマイナス状況が続く。さらに加えて、全企業の99%以上を占める中小企業の大半は物価上昇、資材高騰に悩まされ、賃上げもままならないのが実態。

 幸い、企業業績は全体的によく、株価も上昇気味。一方で、物価上昇、人手不足が続き、先行き経済見通しも不透明感が漂う。プラス面とマイナス面が同居し、矛盾する現象が見られる。ここはじっくり腰を据えた国づくりが求められる。

「高市政権にはしっかりとした国の基本構造をつくっていただきたい」と某企業首脳は語る。もちろん、経済は民間(企業)が担っており、「経済人もこの転換期にあって、それ相応の責任を負う」と語る。 「強くて豊かな国」づくりと高市首相は言う。

 その方向性はいいが、『責任ある積極財政』は社会保障改革、危機管理投資といった重要項目でどうメリハリを付けた政策を展開していくか。市場もその動向を注目している。

 このところの円安傾向をどう見るか?

 高市政権は財政の推移については慎重に見定めながら、行うべき手はきちんと打っていくということで『責任ある積極財政』を掲げる。しかし市場は、財政の緩みがないかどうかに神経を尖らし、円安基調で捉える。市場とのズレがないように、高市政権はドルと円の推移に神経を尖らせることになる。

 日本の場合、中立金利を政策金利が下回り、まだ金利引き上げの余地があるが、市場は財政状況悪化を懸念し、金利アップ(国債価格の下落)で応えている。「首相は市場の反応にもナーバスになっている」という声が政府筋からも聞こえる。

 GDP(国内総生産)600兆円強の2.5倍の債務残高があり、『責任ある積極財政』でさらに赤字国債発行が膨らむとして、日本国債への信用は〝下‌落〟すると市場はシグナルを送っている。このシグナルを無視できない状況。

 いわばプラスとマイナス現象が同居し、矛盾する要因が数多く存在する中で、市場との対話を重ねながら、どう国の長期ビジョン、国の骨格をつくっていくかが大事だということ。

 日本のGDPは2010年には中国に抜かれて世界3位に、2024年、ドイツにも抜かれて第4位に低下。近くイギリスやインドにも抜かれるという見方がある。過去、「失われた30年」の間に日本のポジションは低下し、1人あたりGDPでは40位に後退。韓国や台湾にも抜かれてしまっている。

 1位にリヒテンシュタイン、2位にルクセンブルク、そしてスイスやシンガポールなど小国が並ぶ。これら小国は金融や付加価値の高いサービス産業がAI(人工知能)を取り入れて成長、高い生産性を誇っている。

 こうした国々や米マグニフィセント・セブン(M7)と呼ばれる巨大テック企業群が今をときめき、数千億ドル(数十兆円)という桁違いの投資で互いにシノギを削る。現在GDPで世界の3.6%台にも落ち込んだ日本がどれだけ真骨頂を発揮できるかという命題である。

国民会議の位置付け

 国家の骨組みをつくる上で高市首相の唱える「国民会議」をどう位置づけるか。与野党こぞっての参加と、民間人も交えての戦略策定機関だが、まだ全体像が不明。かつて日本が成長国家から成熟国家へと移行する時、行革審が設置された。

 その時、当時の首相・中曽根康弘氏は行政管理長官(当時)時代から民間人を起用し、〝臨調〟(臨時行政調査会)を作り、財政膨張に歯止めがかけ、民間人の創造意欲を掻き立てた。

 それに経済人も呼応していった。今はどうか。「経済人の使命と役割が求められているのは感じている」と某プライム上場企業首脳は次のように語る。

「政治と経済は密接に結びつき、切り離せない状況。ましてや経済安全保障という概念が入り、中国との関係も慎重にならざるを得ない状況の中で、経済人が果たすべき役割も重いと思っています」と語る。

「国民会議」が十分に機能するかどうかは、高市政権はもとより、与野党政治家、そして経済リーダーがどれだけ危機感を持って事にあたるかで決まる。政治と経済が一致協力する時だ。

 膨れ上がる社会保障制度の改革も必要不可欠。負担と給付の関係を含め、国民の意識改革も必要となってくる。

 今回の総選挙で、新興勢力・チームみらい(安野貴博党首)は唯一、消費税減税を言わなかった政党である。痛みをある程度覚悟していく。そうした若い世代が増えているのは心強い。

 高齢者が全体の30%を占める今、高齢者の負担も考え直さざるを得ない状況。そのためにも熟年世代、現役世代が共に痛みを分かち合い、新しい社会の骨組みをつくる時。「鉄の女」と言われたサッチャー・英国元首相を尊敬する人に挙げる高市首相にも、ビジョン構築力と共に、決断力が求められる。国民と一体となっての改革である。