世界の秩序が崩壊する時期を迎えて、問われる「国と企業」の関係

中東危機、日本の立ち位置は

 地域紛争が拡大し、下手をすれば世界全体が混乱の中へ―─。

 アメリカがイスラエルとともに、イランを攻撃した問題はたちまち中東危機に発展。イランの報復攻撃は湾岸国を中心に10カ国以上に及び、中東全体が危機感に包まれている。

BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野 龍太郎が解説【 世界秩序の動揺の根源 】

 この問題は日本にとっても、重大な危機要因となる。日本のエネルギーは中東に大きく依存。エネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡は日本が輸入する原油の8割以上を占めるといわれる。

 日本の石油備蓄は254日とされるが、産業活動や国民生活に大きな支障をもたらず。既に原油価格の先物相場は上昇し、LNG(液化天然ガス)とともに供給不安が浮上している。

 それにしても今回の米トランプ政権の行動は、「無謀」とか「やりすぎ」という声が少なくない。今年1月にはベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、米国に連れ込み法廷の場に引っ張り出すことをやってのけた。

 そのベネズエラの件とは、今回のイラン攻撃は次元が違う。ベネズエラ攻撃に味をしめてトランプ大統領は攻撃をしたという見方もあるが、イランの場合、その報復としてサウジアラビアやクウェート、UAE(アラブ首長国連邦)など10カ国以上の国に対して攻撃を加えている。その国々にある米軍基地のみならず、一般の施設にも被害は及んでいる。

 今回の措置は世界経済に激震を及ぼす可能性がある。近く高市早苗首相は訪米し、3月19日にトランプ大統領と話し合う場を持つ予定だが、日本はどう振る舞うべきか。

日米同盟の中で…

 日本と米国は同盟関係にある。

 日本は中国、ロシア、北朝鮮という核保有国に取り囲まれる地理的状況。日本国内には、北は青森から南は沖縄まで、米軍の主要基地が置かれている。いわば、戦後80年余は、米国の軍事力、もっと言えば、米国の核の傘の下で日本の平和が保たれてきたという現実。

 その肝腎の米国自身が力の論理を振り回し、自国優先主義(米国ファースト)で内向きになっているかと思えば、時にベネズエラ、イラン問題のように他国に武力介入する。

 トランプの時代はあと3年近く続く。国際法という概念が弱体化し、力の論理が横行する今、日本は『自らの国は自らの手で守る』という原則を具体的にどう実行していくかという重要局面にある。

 今、高市政権は、国家安全保障戦略を立て、「強い日本」「強い経済」をつくるため、17の成長戦略分野を策定。このことは日本の成長をはかる上で非常に有効な戦略だと思う。また、これまでセキュリティ・クリアランス法などが制定され、安全保障に関する制度も整備されつつある。

 しかし、2022年のウクライナ戦争、さらには2023年のイスラエル・ハマス戦争の勃発に加え、今回の米国によるイラン攻撃である。世界は非常にきな臭くなっており、各国とも自らの国をどう守るのか、緊張感の伴う状況にある。

 日本の安全保障を確保するには、日本、韓国、そして台湾へとつながる第一列島線を守らなければならない。このことは中国という存在を抜きには語れない。その中国と日本は〝引っ越しのできない関係〟である。

 今、その中国から国民の交流や貿易などでさまざまな圧力をかけられている。日本がこれに対し、今のところ冷静に対処して相手の挑発に乗らず、冷静さを保っていることは、欧州諸国やアジアの国々からも、日本は信頼を受けている。

 また、日本の外交力も問われている。豪州、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合)との連携も非常に不可欠になってくる。このことは日本の企業にとっても重要な意味を持つ。既に日本企業もサイバー攻撃を受けたりして、安全保障を経営の中に取り込む状況が続く。

 何かと受け身できた日本は自らの立ち位置と国のあり方を根底から考え直す時である。また、日本企業も、自らの安全保障を確保するために、「もっと能動的に行動しなければならない時代」(安全保障問題専門家)という指摘を真剣に受けとめる必要がある。改めて、国と企業の関係が問われている。

【トヨタ・豊田章男氏も登壇】WEB300カンファレンス開催!