New Relicは3月12日、本社からCEOのAshan Willy(アシャン・ウィリー)氏が来日し、都内でビジネス戦略に加え、新機能に関する発表会を開催した。
AIがソフトウェア開発を再定義、コード生成は新たな段階へ
登壇したウィリー氏は、開口一番に「現在、世界中の企業でAI導入が急速に進んでおり、この技術革命のスピードはこれまでにない水準だ。AI革命の中核にあるのがソフトウェア開発であり、Anthropic CEOのDario Amodei(ダリオ・アモデイ)氏は『ソフトウェア開発は今後1~2年でAIによって“解決される”』と予測している」と述べた。
実際、同氏が言及していることは数字にも表れている。2020年~2025年にかけてGitHubへアップロードされたソフトウェアは着実に増加。しかし、2025年に入り、アップロード量が3倍に増加。これは、Copilot、GPT、Claude、各種AIエージェントなどの台頭で大幅に増加しているという。
同氏は「今起きているのは、AIエージェントが人間のソフトウェア開発を支援する段階を超え、自らソフトウェアを構築し始めていることだ。Anthropicは自社におけるコードの約80%がソフトウェアの記述と公表し、当社においても全体の30%のコードを生成しており、コードの相当部分をAIが記述している」と話す。
また、ウィリー氏は日本のCTOとの対話を紹介し、AIが生成したコードを監視・理解するために、企業がエンジニアのリスキリングに苦慮している現状を指摘。直近1年間で書かれたソフトウェアは、それ以前の50年間を上回っており、この膨大なソフトウェアを理解・管理することが企業に大きな負荷を与えているという。
障害コストは倍増、AI時代に求められる「インテリジェントオブザーバビリティ」
そして、オブザーバビリティの現状に関して、システム障害が1時間あたり200万ドルの損失につながっており、これは過去と比べて2倍に増加しているとのこと。ソフトウェア開発が非決定論的で予測不可能な性質を強める中、AIとオブザーバビリティを組み合わせることで状況を制御し、インサイトを得る必要があると強調した。
同社が実施したレポート「AI Impact Report」では、AIを活用しているNew Relicの顧客は平均で25%速く問題を解決しており、複雑な環境では最大50%の高速化を実現しているとのこと。
AIを活用している顧客は、そうでない顧客と比べて5倍の速度でソフトウェアをデプロイしており、AI利用顧客は1日あたり平均480件のソフトウェアをデプロイしている一方、非利用顧客は80件にとどまっていると指摘。
オブザーバビリティは1.0、2.0を経て、現在は「インテリジェントオブザーバビリティ」として3.0の時代に入っており、人手を介さずに洞察や解決策を提示する段階にあると位置付けている。
それを実現するものが同社のインテリジェントオブザーバビリティプラットフォームというわけだ。同社では、AIに関する包括的な取り組みを「AI for New Relic」と呼んでいる。
AI for New Relicの新機能、運用自動化とビジネス可視化を加速
続いて、New Relic 執行役員CTO 技術統括本部長 瀬戸島敏宏氏が、同日に発表されたAI for New Relicをベースにした新機能や、国内のデータセンター設置などについて解説した。
瀬戸島氏は「これまでのオブザーバビリティはデータの収集、観測、可視化、分析という位置づけだったが、これらに加えてAIとともにアクションする時代で必要なものがインテリジェントオブザーバビリティだ」と強調した。
同氏は「ビジネス価値や顧客体験との連動」「インテリジェントな分析と対応の自動化」「拡張されたエコシステムとオープンな基盤」の3つの切り口で新機能を紹介した。
まずは、ビジネス価値や顧客体験との連動を可能とする限定プレビュー中の「New Relic Lens」だ。同サービスは外部データと直接連携することで、New Relicのデータベースに取り込むことなくビジネスとシステムの統合分析が可能になる。直接統合できるクエリエンジンを提供し、たとえばエラーを受けたユーザーIDとSalesforce上のユーザーIDを統合し、システムエラーとビジネス影響を紐づけて分析できるという。
次にインテリジェントな分析と対応の自動化に関しての新機能。パブリックプレビュー中の「SRE Agent」は、アラートの発報を機に自動的にAIが調査・分析を開始し、結果・実行すべきアクションを提示。AIエージェントがテレメトリデータに直接アクセスし、人間が介在する前に初動調査を完了させ、自然言語による対話で根本原因の特定と修正案を提示して数時間の調査を数分に短縮できるとのこと。また、SRE Agentがどのようなプロセスで調査したのかを確認できる。
一般提供を開始している「Workflow Automation」は運用フローの自動化による運用のトイル(手作業で、繰り返され、自動化可能で、長期的価値を持たない業務)を削減。複雑な運用タスクや障害対応を自動化して対応工数を削減し、外部サービスとの連携やWebhooksにより外部ツールも含めた運用プロセスの自動化を可能としている。承認プロセスも組み込めるため重要操作も安全に自動実行できるという。
限定プレビュー中の「Agent Platform」はAI開発の知識を必要とせず、オブザーバビリティ用のAIエージェント構築プラットフォームとなる。特定のツールや知識だけを使う専門的なAIエージェントをノーコードで開発でき、データソースとして社内の文書(PDFなど)を追加し、ドメイン知識が豊富なエージェントの準備を可能とし、MCP(Model Context Protocol)サーバにも対応。
OpenTelemetry対応を強化、東京リージョンのデータセンターも開設
最後に拡張されたエコシステムとオープンな基盤については、オブザーバビリティのOSS「Open Telemetry(OTel)」の能力を、簡単かつ効率的に引き出せるようになる新機能を発表している。
これまで、OTelの導入には大規模なリファクタリングや既存機能の喪失といった障壁があり、これに対し同社はAPM(Application Performance Management)エージェントにOTel API互換性と計装サポートを直接組み込み「APMハイブリッドエージェント」を提供する。既存のNew Relic環境をリプレイスすることなく、OTelと独自エージェントを併用できる混合モードを実現しており、断片化した環境でもトレースを維持しつつOTelの新機能を段階的に導入できるとのこと。
インフラ領域では「New Relic Distribution of OpenTelemetry(NRDOT)」を基盤とする「Infra NRDOT」を提供する。OTelネイティブな監視を可能にしつつ、Adaptive Telemetry Processorにより不要なデータを抑制し、コスト効率を高めることが可能。企業は可視性を維持したまま、OTelを標準として運用できるようになるという。
さらに、OTel Collectorsの健全性とパフォーマンスを可視化する「Collector Observability」も提供する。コレクターのボトルネックや設定ミスをリアルタイムで把握でき、データ損失を未然に防ぐことで、OTel導入のスケール拡大を支援する。
そして、これら新機能を含めた同社のプラットフォームを国内でも支えるうえで重要となる取り組みとして、東京リージョンのデータセンター開設を発表。これまで米国、EUのリージョンで提供していたが、3つ目のリージョンとして東京リージョンが追加された。
アジア太平洋地域では同社初のデータセンターとなり、主な特徴としてテレメトリデータの収集や保存、処理のプロセスすべてを国内で完結させ、厳格なデータレジデンシー(データ所在)に対応する。
また、日本独自のセキュリティやプライバシー要件を満たす基盤を提供し、セキュアなインフラストラクチャを実現。日本国内に拠点を置くことでネットワーク遅延を最小化して、リアルタイムかつ迅速なインサイトの抽出とビジネス上の意思決定を支援し、2026年7月からすべてのNew Relicユーザーの利用開始を予定している。
瀬戸島氏は「全機能を東京リージョンで利用が可能になる。日本のお客さまのコンプライアンスへの対応やデータアクセス時におけるレイテンシが短くなり、New Relicのパフォーマンスの向上が期待できる」と述べていた。







