資生堂は2月25日、膨大な情報の中から必要な情報を収集・解析することが重要な分野において、AIを活用して「化粧品原料の生分解性評価法」と「安全性情報識別システム」の2つの技術開発に成功したと発表した。
化粧品原料の生分解性評価法は、持続可能な社会の実現に向けて、化粧品業界全体が直面している環境に配慮した素材の活用促進という課題に対応するほか、安全性情報識別システムは生活者が安心して化粧品を使用できるように、高い安全性と品質基準を遵守するための評価精度の向上と効率化を目指したのものとなる。
化粧品原料の生分解性評価法
同社では、研究アプローチの1つとして「Sustainability Innovation:循環型の価値づくり」を掲げ、環境負荷を低減させる原料選定を重視しており、2020年から化粧品原料の生分解性評価に着手し、国際基準に基づいた試験法をベースに評価研究を深化させてきたという。しかし、従来の評価方法では、時間とコストがかかることや、結果が評価者の経験に左右されるといった課題があり、より簡便で高精度な評価法が求められていた。
今回、製品評価技術基盤機構(NITE)の協力により、化粧品原料の生分解性をAIで予測する新しい評価法を開発。この方法は化学構造をもとに成分の生分解性をAIで予測し、その結果を活用して原料の生分解性を評価するものとなる。
経済産業省が令和4年度化学物質安全対策(化学物質の分解性及び蓄積性に係る総合的評価の導入に関する調査)の委託事業で「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」のために開発した「分解性AI-QSAR(定量的構造活性相関)」をもとにしており、化審法対象外である化粧品成分については、新たに生分解性試験を実施し、実測値を蓄積。
この実測値とAI-QSARモデルによる予測結果を比較し、AIモデルを段階的に最適化して使用することで、化粧品成分に対して高い予測精度で生分解性評価結果を得ることが可能となった。
これにより、高度な専門知識や網羅的な試験を必要とせず、化粧品原料の生分解性を迅速に評価できるようになり、従来はデータ取得に約1~2カ月を要していたが、AI-QSARは即時に評価結果を得ることができるという。今後、AIモデルを業界共通の基盤として展開することを目指し、業界における環境負荷を低減させる技術の発展に貢献していくという。
安全性情報識別システム
一方、同社は1963年に安全性の研究部門を設立して以来、60年以上にわたり安全性評価法の研究を続けている。2003年からはAIを活用した研究に取り組み、最先端技術による安全性の評価方法の開発を進めている。
安全性評価は、(1)社内外の文献など、膨大な既存情報の調査と検証、(2)刺激性やアレルギー性・遺伝毒性など、毒性を予測する試験による評価、(3)ヒト試験による最終確認というステップをたどる。特に重要な情報調査には高度な専門知識と多大な時間が必要となり、情報不足により安全性評価が難しい場合には原料の活用ができないという課題があったとのこと。
今回、同社は化粧品原料の安全性情報を調査し、安全性評価の上で重要な情報である可能性を高精度で判定できるシステムを開発。同システムは、反復投与毒性や皮膚感作性などの評価項目に関する重要な情報の抽出を迅速化し、文書の関連度を識別することを可能としている。これにより、属人的なバラつきや見落としのリスクを低減し、高度な専門知識を有する人材が安全性の最終判断に集中できるようになったという。
今回の研究により、安全性保証の精度と信頼性が向上し、専門人材のリソースを新たな研究や人材育成に効果的に配分できるようになったことに加え、従来は情報不足で使用を控えていた原料の活用が可能となり、化粧品の新たなイノベーション創出が期待できるとしている。
今後、AIの活用や外部研究機関とのデータ連携などを通じてDXを推進し、経験値だけでは導き出せない、新たなイノベーションを創出し、研究開発のさらなる加速を目指す考えだ。

