島津製作所は2月19日、同社グループ会社の島津ダイアグノスティクス、およびAIスタートアップのエピストラと共同で、AIによる培地組成の最適化とカスタム培地の製造からなる「AIカスタム培地開発サービス」を同日より提供することを発表した。
抗体医薬品や遺伝子治療薬の原薬製造においては細胞培養技術が用いられるが、その培養工程には長い時間を要し、培地も高額である。また培地の組成最適化や調製(調合)は、重要でありながら非常に複雑な工程だという。
これまで島津製作所は、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)で多数の培地成分を一斉分析できる「LC/MS/MS細胞培養メソッドパッケージ」など、細胞培養の現場業務を支援する製品を開発してきた。しかし、効率的な培養生産のパラメータは、アミノ酸やビタミンなどからなる培地の構成成分、濃度、培養環境の温度、pH値(水素イオン濃度指数)など多岐にわたり、構成成分だけでも約100種類存在するため、最適なパラメータを導出するには膨大な組み合わせを試行する必要があったとのこと。さらに実際の培地調製では、配合比や濃度、温度・pH調整などにも細心の注意を払う必要があり、失敗のリスクも高いとされている。
こうした課題を受けて今般開始されるAIカスタム培地開発サービスは、製薬企業や医薬品開発製造受託機関(CDMO)向けの、培地調製・生産支援サービス。困難な培地開発を2工程に分けて解決するという。
第一工程の“AIによる培地組成最適化”では、エピストラの知見・技術が活用される。同工程においてユーザーは「Rapid Optimization」「Precise Optimization」のいずれかを選択。前者では、島津製作所が設計した複数種の培地で構成される「培地ブレンドキット」を用いて、エピストラのAIが培地の混合比を提案するといい、経験が浅い作業者であっても、迅速かつ簡便な培地組成の検討が可能だとする。一方後者の場合には、エピストラの担当者が課題や目的をヒアリングした後に詳細な培地組成を設計するといい、同社が有する最新最適化AIを使用するため、作業コストを抑えながら生産性・品質を高めることができるとした。
なおエピストラが提供するのは、ベイズ最適化アルゴリズムを用いた条件最適化AI「Epistra Accelerate」。標準的なベイズ最適化手法と比較して、同等の成果を得るまでに要する試行回数は50%以上削減されるなど、高い探索性能を特徴としている。
また第二工程である“カスタム培地の製造”では、前の工程で確定したレシピ(配合やパラメータ)を基に島津ダイアグノスティクスが培地を製造する。同社は長年にわたってさまざまな培地を製造してきた経験を有し、粉末・液体両方のカスタム培地を短納期かつ良質な状態で提供可能。作業者は煩雑な調整業務から解放されるとともに、短納期で培地が届くため在庫も不要となるとする。
島津製作所は、この新サービスの希望販売価格を93万円~(税込、Rapid Optimizationの場合)としており、販売目標は国内のみで年間12件に設定しているとのこと。このサービスを通じて、抗体医薬品や遺伝子治療薬の原薬製造における効率化に貢献するとしている。
