米ラスベガスで開催された展示会「CES 2026」(会期:現地時間1月6〜9日)では、ロボットや自動運転自動車、ウェアラブルデバイスなどAIを駆使したハードウェアが注目されたが、それ以外にも次に来る新製品や新しいサービスにつながりそうな新技術もいろいろ出展されていた。ここでは会場で見つけた注目すべきテクノロジーを紹介する。
2025年のプロトタイプが次々量産化に成功
CESで発表される最新テクノロジーはプロトタイプ段階のものが多く、実用化されるケースが少ないのではないかと思っていたら、2026年は量産化や販売が始まったという製品がいろいろ出展されていた。
フィンランドのスタートアップ・Donut Labは、「CES 2025」で超軽量で高トルクのインホイールモーターを搭載した「Donut Wheel」を発表して話題になった。2026年はその技術に不可欠な全固体電池の量産に世界で初めて成功したことを発表し、さらに注目を集めている。
全固定電池の開発は多くのメーカーが取り組んでいるが、耐久性の低さやコストの高さが課題となっている。Donut Lab が発表した全固体電池は、パワフルで最短5分の急速充電が可能なうえに最大10万回利用できる。それでいてリチウムイオンバッテリーより低コストで、可燃性の液体電解質は使わないためクリーンだ。
Donut Labが開発する全固体電池はすでに実用化されており、多くの企業がOEMで製品開発に取り組んでいる。そのひとつ、同じくフィンランドの防衛技術企業・ESOXグループのブースでは、四輪タクティカルバギーと次世代ドローンプラットフォームが紹介されていた。バギーは車体に全固体電池が敷き詰められ、四輪にDonut Wheelを使用することで狭い場所や悪路もパワフルに走行し、200kgの荷物を運べるとしている。
電池ではもうひとつ、シンガポールを拠点とするディープテックインパクト企業のFlintが、CES 2025で発表したペーパーバッテリの量産化に成功したことを発表している。
100%生分解する紙を使用したバッテリーは、使い捨てではなく繰り返し再充電して使え、製造は既存のリチウムイオンバッテリーのプロセスと統合できるように設計されているので、製造の初期コストなどを抑えられる。用途も従来のバッテリーと置き換えられ、発火する心配もないことから、小型家電などから普及する可能性がありそうだ。
応用範囲が広がりそうな“やわらかテクノロジー”
ありとあらゆるもののスマート化が進み、さまざまな製品に柔軟な使い方ができる電子回路が登場している。ドイツに本社を置く、ポリウレタン、ポリカーボネイトの原材料メーカー・Covestroは、ゴムのような柔軟性とプラスチックの強度を持つ高機能素材のTPU(熱可塑性ポリウレタン)フィルムに導電性機能印刷を行う技術を開発している。ウェアブルデバイスや自動車、ロボティクスなど幅広い用途への展開が期待されており、日本にも窓口がある。
香港のPoint Fit Technologyが開発する「PF-Sweat Patch」は、指先に乗るほど小さなパッチで感知した汗から健康状態を追跡し、予防医療に役立てられる。独自に開発したナノサイズの膜作り出す技術により、研究室や病院でしか測定できなかったバイオマーカーを皮膚に貼り付けるだけで計測できる。
初期バージョンは乳酸を測ることができ、アプリを経由してスポーツや運動中の体調を継続的にチェックするのに使えるという。今後はセンシングできる対象を広げていくとしており、技術への期待度もあってか、CESイノベーションアワードのデジタルヘルス部門を受賞している。
日本企業ブースは先端技術がいっぱい
日本のAGCはモビリティ関連の製品を複数出展していた。
安全な自動運転を実現する360度のシームレスな自動車用ガラス統合ソリューションを提供するAGCグループ傘下のWideyeは、ガラスと一体化しているためクルマのボディラインを損なうことがないLiDAR用カバーガラス「Wideye パノラマガラスルーフLiDARインテグレーション」と、LiDARと複数のカメラを統合した「Wideye ウィンドシールドLiDARインテグレーション」を開発している。
また、ウィンドシールドの内側に可視カメラとサーマルカメラを搭載した「FIRカメラ対応ウィンドシールド」など、今後の普及に向けて性能とデザインの両立が求められる、自動運転自動車への採用が期待されそうだ。他にもタッチパネルディスプレイとして使え、従来の窓ガラスに透明マイクロLEDを封入したサイドウィンドウなど、インフォテインメントに活用できる技術も展示されていた。
モビリティ以外では、XR向け技術として、クリアで色歪みが少なく、FOVを拡げる高屈折率、超平滑、低損失なウェーブガイド用ガラス、コンパクトな光学系の実現に寄与するメタサーフェス光学素子・回折レンズなどが紹介されていた。
今年はスマートグラスの展示が去年よりも増えた影響か、XRデバイスの出展は少なかった。しかしデジタルツイン化が進む製造業など産業用向けに、より没入感のあるデバイスが求められる可能性があり、高品質なグラス技術が必要とされそうだ。
スマートグラスに関しては、TDKがAIグラス向けにマイクロコントローラ、ステートマシン、ハードウェアCNNエンジンを統合した次世代超低消費電力DSPプラットフォーム「TDK AIsight SED0112」を展開し、CESで発表している。
次世代マイクロプロセッサ「SED0112」は、AIグラス向けに設計された、マイクロコントローラ、ステートマシン、およびハードウェアによる畳み込みニューラルネットワーク(CNN)エンジンを統合したデジタル信号処理(DSP)プラットフォームの最新製品で、アイインテント(視線意図検出)処理に最適化されている。
ウェアラブル関連の技術は日本が得意とするところなのか、京セラはメタサーフェス光制御技術を応用した、波長ごとに集光位置を制御可能な「メタレンズ」の開発に成功し、小型化と奥行き感のある映像表現を両立した「ウェアラブル空中ディスプレイ」の試作機をCESで発表している。現在は色ごとにレイヤーを変えて表示しているが、今後は表示できる色数を増やし、高精細な映像を表示できるよう開発を進めていく。
ちょっとユニークなところでは、村田製作所がマスクをコーンにして音声入力できるマスク装着型デバイス「mask voice clip」を出展していた。
見た目は普通のクリップにしか見えないが、音源選択性とノイズ耐性を両立させており、話者の声だけを認識することにより既存のノイズキャンセル技術を上まわる音声入力の向上が期待できる。現時点では試作品で製品化も未定ということだったが、「CEATEC AWARD 2025」デジタル大臣賞を受賞しており、CESの出展をきっかけにメーカーとコラボが始まるかもしれない。
防衛関連スタートアップの実用化技術も公開
意外に思うかもしれないが、CESでは防衛関連技術のスタートアップが多数出展しており、支援するコンテストも開催されている。ユニークなアイデアも多く、最もインパクトがあったのが米Velodyne Spaceが開発し、CES会場で公開したドローン捕縛専用車両だ。
大型のバンに見える車体の上にある大きなアンテナのようなパーツは5年かけて開発されたドローンキャッチングシステム(DOS)で、発見された怪しいドローンに磁気電気発射(MEL)システムを使った弾丸を発射し、墜落しないようパラシュート付きの網で捕縛する仕組みだ。有効範囲は1,000フィート(約300m)で、1秒あたり5発の弾丸を発射できる。すでに米政府に採用されており、年内に稼働するとしている。
個人的には、今回のCES 2026では目を引くような斬新な技術をあまり見かけなかったが、子どもの時に映画やマンガで見たような技術が実用化されていたように感じた。プロトタイプも数年先ではなく、年内には販売開始するというものも多く、実際に手にできる日が待ち遠しいところだ。









