超音波診断(エコー検査)で使う新たな固形ゲルパッドを、近畿大学医学部などの研究チームが開発した。液体ゼリーを体に塗る検査と同等の診断画像を得られるうえ、ベタつかず拭き取る必要がないことから受診者の満足感も大きいという。衛生的に再利用できるようになれば、人にも環境にも優しいエコな医療用品となる可能性がある。
エコー検査では、超音波の送受信をするプローブ(探触子)を体の表面に当てながら動かし、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像化して異常の有無を調べる。受診者の肉体的な負担が少なく、信頼度の高い診断法として普及している。プローブと体の間に空気があると超音波が遮断されて体内が見えなくなるため、受診者の体に載せた液体ゼリーを塗り広げるようにプローブを滑らせながら画像を得ることが多い。
ただ、検査に時間がかかると液体ゼリーが乾燥して空気が入り、診断画像が荒れてしまうことがある。また、検査後にゼリーを拭き取るものの、乾燥してカピカピになったり衣服に付いたりして不快に感じる受診者もいる。ゼラチン製の固形ゲルパッドもあるが、保湿の難しさや保管の煩雑さが課題だという。
近畿大学医学部の門前一教授(医学物理学)らは、ゼラチンに代わる新たな固形ゲルパッドの素材として「タマリンドシードガム」に目を付けた。南インド料理によく使われるマメ科常緑樹タマリンドの種子に含まれる天然多糖類で、食品や医薬品などの添加物として広く使われている。
門前教授らはタマリンドシードガムで放射線治療用ゲルパッドの開発を試みていたが、水が染み出るのを止められない点が課題となっていた。湿り気を保つ必要があるエコー検査用のゲルパッドにはうってつけなのではないかと考え、植原拓也講師(放射線腫瘍学)も加わって開発を進めた結果、タマリンドシードガムと多価アルコール、水を主成分とする固形ゲルパッドが完成した。
研究用ゲルパッド(厚さ5ミリ、5センチ四方)を用意し、健康な4人を対象に実験をした。肝臓や胆嚢など腹部の臓器の検査(コンベックスプローブ)、比較的体内の浅い部分にある頸動脈でプラークができていないかを調べる検査(リニアプローブ)、心臓内部の弁などの動きを見る検査(セクタプローブ)を実施。画像の鮮明さや診断の精度に関して、従来の液体ゼリーを使った場合と大差はなかった。検査の満足度を1~5の5段階評価(数字が大きいほど満足)で被験者に問うと、従来の液体ゼリーはおおむね1~2にとどまっていたが、新開発の固形ゲルパッドは4~5だった。
植原講師によると、今後は大規模臨床試験で有効性を検証したり、長期間使用時の耐久性を評価したりして臨床応用を目指すという。今回の研究は早川ゴム株式会社(広島県福山市)と共同で実施し、1月12日、英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に掲載された。
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