富士通と東海国立大学機構は1月28日、太陽放射線イベント(プロトン現象)を対象に、富士通が開発した説明可能なAI技術「Fujitsu Kozuchi XAI」の一つである「Wide Learning」を用いた発生確率推定と根拠に基づく過去類似イベント提示を組み合わせて、宇宙天気を予測する技術を開発したことを発表した。
この技術は、従来の太陽フレアの規模による単純な経験則では推定が困難であった太陽放射線イベントに対し、因果関係をAIによって説明可能な形式で抽出するというもの。抽出した条件に基づいて、発生が予測されるイベントと似た過去の太陽放射線イベントを提示することで、実際に生じた具体的な実生活への影響や対応事例を参照できるようになるという。
富士通は同技術を活用することで、将来の太陽放射線イベントによるリスクや必要な対策を、科学的根拠に基づいて迅速に判断できる環境の実現を目指すとしている。
技術開発の背景
太陽表面で発生するフレアやCME(Coronal Mass Ejection:コロナ質量放出)などの太陽活動は、地上インフラに対して通信障害、電離圏攪乱によるGPS精度低下、送電網の電流増大など、社会生活に影響を与えることが知られている。また、太陽活動は地球周辺へ高エネルギー粒子(太陽放射線)を到来させる場合もある。
これらの太陽放射線イベントは、宇宙飛行士や人工衛星などにも深刻な影響をもたらし、特に宇宙空間では致死量に達する可能性も指摘されている。その一方で、太陽放射線は太陽フレアが大規模であるほど生じやすいことが知られているものの、フレアの大きさと放射線量との間には強い相関がなく、太陽放射線イベントの発生リスクを事前に正確に予測することは困難とされていた。
開発した技術の概要
富士通と東海国立大学機構は、太陽放射線イベントの事前予測精度向上と、予測システムを運用する現場でリスク判断を行う際に科学的根拠を提示することを目指し、技術開発を進めたという。
「Wide Learning」により太陽放射線イベントの発生確率を推定する技術では、多様な観測量(太陽磁場やフレア特性など)から「Wide Learning」が特徴量の関係性を学習し、どの要因が発生確率を押し上げたか、特異的な組み合わせ条件は何かを明確に提示する。これにより、従来はブラックボックス化していた予測結果に対し、科学的に説明可能な根拠を付与する。
また、予測根拠に基づいて過去の類似イベントを提示する技術では、「Wide Learning」が抽出した条件をもとに、過去の太陽放射線イベントの中から最も類似する事象を自動で選定する。その結果、当時観測された放射線量や具体的な影響を照合し、運用者が参考にすべき事象を提示できるようになる。これにより、利用者は単なる確率予測ではなく、予測が過去のどの事象と似ており、どの程度の影響が見込まれるかを即座に把握できるとのことだ。
太陽放射線は、宇宙空間において宇宙飛行士の致死量に至る可能性があるリスクとして国際的に認識されている。同技術によって宇宙飛行士の船外活動や月面拠点での作業計画、月・火星輸送機などの有人輸送スケジュールなどについて、放射線リスクを踏まえた運用判断が可能になると期待できるとのことだ。
