皆さん、こんにちは!
科学コミュニケーターの倉田祥徳です。

2025年8月16日(土)に「科学コミュニケーターと行く、地球の記憶にふれる旅 @高知コアセンター」を開催しました。高知県南国市にある研究施設「高知コアセンター」を約20人の皆さんとともに訪れるイベントです。
高知コアセンターは、地球深部探査船 「ちきゅう」 などによって海底から掘削された 「コアサンプル」(掘削した岩石や堆積物の柱状の試料) を保管・分析する、世界でも数少ない研究拠点のひとつです。

高知コアセンターの外観

ふだんは研究者しか立ち入ることのできない施設の中で、ツアー形式でコア保管庫の見学をしたり、研究者とのトークセッションやコアサンプルを使った顕微鏡観察をしたりと、研究者さながらの体験を行いました。
本ブログでは、ツアーや研究体験の様子をたっぷりとご紹介します。
さあ、それでは地球科学ツアーのはじまり、はじまり~。

世界にも3ヵ所しかない 「コア保管庫」 へ

最初に案内していただいたのは、コア保管庫。この部屋に一歩足を踏み入れた瞬間、体にひんやりとした空気がまとわりつきます。温度は4度ほど、湿度が約80%に管理されているとのこと。長さ1.5メートルのコアサンプルが壁に整然と並んでいるその光景は、まるで図書館ようです。

コア保管庫を案内いただいている様子

高知コアセンターで保管されているコアサンプルは約20万本。横一列につなげると、なんと140kmほどの長さになるそうです。東京から北へ向かえば、宇都宮を少し通り越すくらいの距離に相当します。膨大なコアサンプルが高知コアセンターに保管されているのかわかりますね。

さまざまな場所から採取されたコアサンプル(写真提供:高知コアセンター)

国際深海掘削計画(IODP)のコア保管庫は、高知コアセンターを含めて世界で3つしかありません。ドイツのブレーメンコアレポジトリ、アメリカのメキシコ湾岸レポジトリ、そして日本の高知コアセンターです。いかに高知コアセンターが稀有な場所であることがわかります。

世界にある保管庫(Scientific Drilling. 7, 31-33, 2009より抜粋および一部改変)

ここで心配なことが1つあります。地震です。よく地震で本棚から本が崩れ落ちている場面を見かけますが、コアサンプルは大丈夫なのでしょうか?

高知コアセンターでコアサンプルの保管・運用やデータベースの管理を担当している久光さんは 「大丈夫なんですよ、今からその理由をお見せしますね!」 ということで、その訳を教えてもらいました。下の写真をご覧ください。コアサンプルが落ちてこないように、ちょうどよく柵が設けられているのです。

 

コアサンプルの前に設けられた柵を示す久光さん。この柵のおかげで地震がきてもコアサンプルは落ちこない! うまいこと作られていますね。

CTスキャンで、コアの内部を「のぞく」

次に見学したのは、コアサンプルを解析するためのCTスキャンです。解説を担当してくださったのは、コアサンプルを用いて地震の研究をしている奥田さんです。

奥田さんからは 「CTスキャンは医療現場でも使われていますが、コアサンプルの研究でも同じ原理で使われています。X線で中の密度の違いを可視化することで、コアサンプルを割らずに内部構造を調べられます」 とご説明いただきました。

奥田さんがCTスキャンの説明をしている様子

奥田さんには、事前にCTスキャンで撮影したコアサンプルの写真をご用意いただきました。この写真からは、コアサンプルの内部の様子を見ることができます。そこから、地震によって生じた断層の痕跡などを知ることができるそうです。

モニターに映ったコアサンプルの内部の様子。赤色の部分は密度が高く、緑色の部分は密度が小さいことを示している。

このCTスキャンの見学は2グループに分かれて交代で見学しました。待機の間には、別の場所で地球深部探査船 「ちきゅう」 の大きな模型を使いながら、「ちきゅう」の航海について紹介いただきました。

参加者が地球深部探査船「ちきゅう」の模型の説明を聞いている様子

研究者と同じ実験やってみた!

さらに、実際のコアサンプルを使った顕微鏡観察とスケッチも行いました。
まずはコアサンプルに含まれている小さな化石(微化石)を用いて過去の地球環境を調べている池原さんの指導のもと、顕微鏡観察を行いました。

顕微鏡観察をしている様子

今回のイベントのためにご用意いただいたコアサンプルは、高知県に流れている仁淀川の河口や東太平洋の中央部に位置するマニヒキ海台から採取されたものです。

ご用意いただいたサンプルの採取場所

サンプルの中を顕微鏡でのぞくと、微化石とよばれる小さな化石(有孔虫など)や漂流岩屑と呼ばれる氷山や海氷が運ぶ砂粒なども見ることができました。この漂流岩屑を詳しく調べると、当時の海流の向きなどを知ることができるそうです。太古の海流の向きまでわかるとは驚きです!

微化石の説明をしている池原さん

次は、コアサンプルのスケッチに進みました。「えっ、スケッチ?」と意外に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実はこのプログラムにスケッチを取り入れた背景には、私が 2024年9月に東北沖で実施された大規模科学掘削プロジェクト「JTRACK」 のアウトリーチオフィサーとして地球深部探査船「ちきゅう」に乗船した際の経験があります(12月3日より18日間乗船)。船上では、採取したコアサンプルの岩石の種類や構造を正確に読みとるため、研究者はまずスケッチを描き、特徴を整理していきます。今回、その一端を体験していただきたく、研究体験の一つとしてスケッチを取り入れたわけです。

「ちきゅう」上でのスケッチについてはこちらのブログをご覧ください。

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20250620post-555.html

参加者がコアサンプルをスケッチしている様子。色チャート(色の見本帳)を参考にしながら、コアサンプルの色合いを確かめながら記録しています。

今回、高知コアセンターの皆様には、南海トラフやベーリング海で採取されたものなど4つのコアサンプルをご用意いただきました。

左から、日本海の酸化・還元状態を反映した縞模様を見ることができるコアサンプル、オーストラリア近辺で採取された白亜紀と古第三紀の境界がわかるコアサンプル、南海トラフに沈み込んでいるフィリピン海プレートの玄武岩を含むコアサンプル、ベーリング海で採取された海氷起源砕屑物を含むコアサンプル。

スケッチを進めていくと、急に岩石の色が変わっているところに気づいた参加者が、研究者にこう尋ねました。

「なぜ、ここだけ色が変わっているんですか?」

すると研究者は、こう答えました。
「ここでは巨大な隕石の衝突を引き金として、多くの生物が絶滅してしまうほど大きく環境が変わってしまうような“イベント” が起きたと考えられています。このコアサンプルでは、恐竜が絶滅した出来事の痕跡を見ることができるんですよ!」

まさか、あの有名な恐竜絶滅の証拠まで、このコアサンプルが語ってくれるなんて。その場にいた参加者からも驚きの声が上がっていました。コアサンプルは、まさに地球の“タイムカプセル”のように過去の出来事を記憶しているのですね!

恐竜が絶滅したような“イベント”がわかるコアサンプルの写真。コアサンプルの真ん中を境に、上側は色が濃く、下側は色が薄くなっている。隕石の衝突を境に、生きていた微生物の種類が変化したと考えられている。

コアサンプルのスケッチを終えると、参加者みんなで ディスカッションです。スケッチをして気がついたこと、そこから予測されることなど、研究者とともに話し合いました。これこそまさに研究体験!

参加者が集まって話し合っている様子

コアサンプルのスケッチを通じて参加者から次々に疑問が生まれ、研究者が答えていく様子をみて、「科学」の醍醐味は「もっと知りたい!」という探究心にあるのだと改めて感じました。
このようなイベントを通じて、少しでも多くの方に研究の楽しさ、科学の面白さを伝えていきたいと思います。

さて、みなさん 「地球の記憶にふれる旅」 はいかがだったでしょうか。

コアサンプルがまるでタイムカプセルのように “地球の記憶” を宿していることの一端を感じていただけたのではないかと思います。これからも、地球深部探査船 「ちきゅう」 などを用いたコアサンプル採取および分析・研究が進んでいくと思います。次は、どんな“地球の記憶”が紐解かれていくのか、今後の研究成果にもぜひご注目ください!
ブログ後編では、本イベント内で実施した研究者のトークセッションの様子をお伝えします。ぜひご覧ください!

ブログ後編はこちらからご覧ください。

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20260119post-589.html

【参考】
奥田さんとは2024年に地球深部探査船 「ちきゅう」 の船上でお会いし、インタビューしたときから大変お世話になっております!
奥田さんのインタビューブログはこちらからご覧ください。

https://blog.miraikan.jst.go.jp/articles/20250305-in.html



Author
執筆: 倉田 祥徳(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティの企画全般に携わり、来館者への情報発信や対話活動を行う。これまで、地球科学の最前線を紹介する企画展(Mirai can NOW第7弾「地震のほしをさぐる」)やノーベル賞関連のイベント等を担当。東北沖の大規模な海底掘削ミッション「JTRACK」のアウトリーチオフィサーとしても活動中。

【プロフィル】
大学・大学院と化学を専攻し、「植物の毒」について研究してきました。その後、シンガポールの日本人学校の教員として働く中で「教科書にとらわれず、多くの人と科学の“楽しさ”を共有したい」そんな想いから、未来館へ。

【分野・キーワード】
有機化学・植物病理学・理科教育