Microsoftは1月8日、AIエージェントを中心に据えた新たなコマース戦略の中核となる新機能として「Copilot Checkout」と「Brand Agents」を発表した。生成AIとエージェント技術の実用化が進む中、同社は“買い物の始点から決済まで”を再設計し、検索・比較・購入を1つの対話の中で完結させる、いわば「会話が購買そのものになる」エコシステムの構築に踏み出した。

Copilot Checkoutの概要

Copilot Checkoutは、AIとのやり取りのなかで商品探索・比較・購入までを即時に完了させる決済レイヤーだ。従来、ユーザーは複数タブを開き、商品ページを行き来し、カートに入れ、決済ページへ遷移するというプロセスを踏んでいた。

Copilot Checkoutはこうしたプロセスを取り除き「AIに質問する=買い物の開始」であり、「会話が続く=購入意思の形成」「返答を得る=最適な選択肢の提示」という一連の流れを統合する。

同社によると、Copilotを利用した購買プロセスは30分以内の購入率を53%押し上げ、購買意図がすでにある場合には購入確率が約3倍になるという。これは、ユーザーが必要な情報へ最短距離で辿り着ける環境をAIが整えることで、従来のカート離脱パターンが大幅に減少するためだ。

さらに、販売事業者は、Copilot Checkout経由の取引でも企業がMoR(Merchant of Record:販売者記録)としての地位を維持できるという。これにより、取引データ、顧客データ、顧客との関係性は企業側の所有物として保たれ、AIに顧客接点を奪われることがないという。

同社はAIが販売者を代替するのではなく、“AIが販売者を強化するモデル”を打ち出している。サービスは米国内でCopilot.comを通じて展開が始まり、PayPal、Stripe、Shopifyとのパートナー連携でオンボーディングが簡略化された。Shopify事業者は申請不要で自動登録される仕様で幅広い商品がCopilot上で購入が可能となる。

Brand Agentsの概要

一方、Brand Agentsはブランド自身の声を学習したAIショッピングアシスタント。オンライン上の購買体験では、ユーザーが商品を探し、フィルターを設定し、レビューを読むという作業を自身で行う必要があった。

Brand Agentsは、こうしたプロセスを軽減し、対話ベースで顧客のニーズを引き出し、適切な選択肢へ自然に誘導するという。ブランドのトーンで返答し、ギフト選びの相談、商品比較、コーディネート提案、配送や返品の最終確認、補完商品のレコメンドといったプロセスを販売員のように行うとのこと。

コーディングは不要で導入は数時間で完了し、Shopify向けに提供されている。行動分析ツール「Microsoft Clarity」との統合で、ブランドはAIアシストセッションのヒートマップや行動分析を可視化できるという。

これらの仕組みにより、エンゲージメント率、コンバージョン率、平均注文額の向上が確認されており、AIが自然言語で顧客理解を深めていく構造が従来のFAQチャットボットとは異なる点だと強調している。

今回の発表は、単なる機能追加ではなく、MicrosoftはCopilotを軸とするAIエージェントが「検索」「比較」「決済」「購入後の行動」を横断的にサポートする、新たなコマース基盤の構築と位置付けている。

今後、Copilot CheckoutはBing、MSN、Edgeなど、Microsoftが持つ検索・ブラウジングエコシステム全体へ展開される予定だ。これにより、ユーザーは検索した瞬間にすでに購買導線に入り、情報収集と購買行動が境界なくつながるとのことだ。

また、MastercardのAgent PayやVisa Intelligent Commerceといった決済大手とも協業し、AIエージェントを前提にした新たな決済プロトコルや購買体験の標準化を進めていく方針だ。