資生堂は1月7日、室蘭工業大学(室蘭工大)との共同研究により、同社が開発した、肌の“内部散乱光”から非侵襲的に顔の立体形状や光の状態を測定・解析できる光学計測システムをさらに進化させ、肌内部での光の振る舞いについて到達深さ別に評価する新技術を開発したことを発表した。

なお同成果の一部は、学術論文として「Optical Review, 31(2), 266-279」に掲載されたほか、2025年7月の「European Conference on Biomedical Optics」および12月の「Optics Photonics Japan」にて発表された。

肌の“透明度”の鍵を握る指標とは?

資生堂の光学研究では、顔の印象に強く影響を与える“つや感”や“透明感”などといった肌の見た目の「質感」にいち早く注目し、光学的手法や心理物理学的手法による研究を進めてきたという。そして同社は2022年、ノルウェー科学技術大学との共同研究により、顔の立体形状に加え従来分析が難しかった肌内部からの出射光を非侵襲的にビジュアルや数値で計測・解析できる、新たな光学計測システムを開発していた。

同システムを用いた研究では、加齢によって肌内部からの出射光が減少することや、内部での光にはメラニン量・角層の状態・皮膚水分量・コラーゲンの状態・キメの状態の5要素が関連することを突き止めてきたとする資生堂。しかし、肌内部を伝播する光が肌のどの深さに到達して肌の外部へと出射する光なのかなど、その詳細については把握できていなかったという。そして今般同社は、室蘭工大との共同研究に着手し、光学計測システムの解析技術をさらに進化させ、肌内部での光の振る舞いを解明するための検討を開始したという。

具体的には、実際の肌構造を説明する9層の数学的モデルを構築し、そこに照射した光子がどの層まで到達して再度肌の外部に戻ってくるのかをシミュレーションすることで、光の波長と到達深さの物理的な関係性を明らかにしたとのこと。その後この関係性を基に、計測システムで測定された光がどの層を経由して出射する光なのかを詳細に解析できるようになったとする。

  • 肌の9層構造モデルと長波長光の伝播の様子

    肌の9層構造モデル(左)と長波長光の伝播の様子(右)(出所:資生堂)

そして新システムを用いた測定・解析の結果、短い波長の光(青色)は表皮に、中間波長の光(緑色)は基底膜を中心とする表皮から真皮上層付近に、長い波長の光(赤色)は真皮のコラーゲン層にまで届いた後、再び肌の外部へと出射することが判明した。

  • 肌の内部から外部へと戻る光の到達深さ

    肌の内部から外部へと戻る光の到達深さのイメージ図(出所:資生堂)

また同社は、20代から70代の女性約150名の女性を対象として、新開発評価技術を適用した肌の非侵襲計測技術によるデータ取得を実施した。すると表皮層に届く短い波長の光について、表皮層に到達して出射する光とメラニン量の関係性について非侵襲的測定・解析を行った結果、メラニンによる光の吸収が強く関与し、光が遮られて肌の内部へと入りにくくなり、肌外部へと出射する光の量も減少させることが明らかに。一方で真皮のコラーゲン層にまで届く長い波長の光を用いて、非侵襲的に生きたヒトの肌のコラーゲン状態が観察できる肌内外3D弾性イメージング技術を応用し、コラーゲン線維密度を評価するとともに関連性を解析した結果、コラーゲン密度が低下するのに対応して肌外部へと出射する光の量が減少することがわかったとしている。

  • メラニン量およびコラーゲン密度が肌内部における光に影響を与えるメカニズム

    メラニン量およびコラーゲン密度が肌内部における光に影響を与えるメカニズム(出所:資生堂)

資生堂はこれらの結果について、先行研究では肌内部から出射する光が加齢に伴って減少する傾向にあることが判明していた一方で、これまで不明だった“到達深さ別”の特徴について今回測定・解析を行ったことで、表皮層に到達して再度肌の外部へと出射する光は、加齢に伴って徐々に低下する傾向が認められた一方、真皮層に到達して再度肌外部へと出射する光は、若い年代における変化はやや小さく、高い年代では低下傾向がより強まることが新たに確認されたとした。

  • 表皮を中心に伝播する内部散乱光と加齢の関係と真皮を中心に伝播する内部散乱光と加齢の関係

    表皮を中心に伝播する内部散乱光と加齢の関係(左)と真皮を中心に伝播する内部散乱光と加齢の関係(右)(出所:)

同社は今回の研究により、角層・表皮にあるメラニン量と、真皮にあるコラーゲン密度が、“透明感のある肌”づくりにおいて特に重要であることが示されたとし、今後も美しい肌を実現するための光コントロール技術の開発を進め、新たなソリューション開発に活かしていくとしている。