Celonisは2025年12月4日、大阪・梅田のインターコンチネンタルホテル大阪で「Process Intelligence Day Osaka 2025」を開催した。同社が、大阪でユーザーイベントを開催するのは今回で3回目。世界24都市で開催しているグローバルイベント「Process Intelligence Day」の1つに位置づけており、最後を飾る24番目の開催となった。
今回は「No AI without PI」をテーマに、AIを効果的に活用し、最適化するために、プロセスインテリジェンスが不可欠であることを強調。プロセスマイニングの最新動向や、先進的なユーザー事例の紹介も行った。
Celonisのパーパスと企業変革へのビジョン
基調講演に登壇したCelonis日本法人 代表取締役社長の村瀬将思氏は、冒頭にCelonisのパーパスが“Make processes work for people, companies and the planet(プロセスを、人、企業、地球に対して機能させる)”であることを示し、次のように切り出した。
「人々の働き方を変え、ビジネスを成功させ、無駄をなくすことで、持続可能な地球を作ることを目指している。プロセスがシームレスに動く世界が生まれつつあり、この結果、人々が満たされ、不満がなく、ビジネスの生産性があがり、効率的で、サステナブルな世界が訪れることになる」(村瀬氏)
続けて、同氏は「企業の将来の姿は『Intelligently Adaptable(知的な適応性)』を持たなくてはならない。いまでは、硬直した構造が企業にとっての負債だと言われており、コンポーザブル(構成可能)であることは生き残るための鉄則になっている。また、現状を正しく把握するための真のインテリジェンスを持ち、逸脱した処理や標準的な意思決定などの特定のアクションは自律的に処理され、人は重要な意思決定や創造的な仕事に取り組めるようにしなくてはならない。そして、チェンジマネジメントにより、変化を受け入れるだけでなく、変化を活用する文化を醸成していかなくてはならない」と述べた。
そのうえで「エンタープライズAIを、企業内で機能させることが、Intelligently Adaptableの第一歩になる。業務の隅々までインテリジェンスを浸透させなくてはならない。これにより、ビジネスを変革し、大きなインパクトを生む。目の前にある最大のチャンスをつかみ取らなくてはならない」と同氏は語る。
だが、AIに対する投資対効果を意味する「RoAI」という言葉を村瀬氏は使い「AIプロジェクトの11%しか、効果を得られていないという調査レポートが出ている。十中八九、効果が出ていない。エンタープライズAIの真のポテンシャルを引き出せてはいない」と現状に警鐘を鳴らしつつ「エンタープライズAIによって、価値を生み出すためには、もっとプロセスを理解する必要がある」と提言した。
エンタープライズAIを成功させるための条件
エンタープライズAIには、業務プロセスを理解した「コンテキスト(文脈を理解)」、ロードマップをベースにした「戦略的な展開」、人やAI、既存技術など「他との連携」の3点が重要だとした。
同氏は「ビジネスが実際にどのように動いているかを共通的に理解し、それによって改善する能力が、エンタープライズAIには必要。それを実現するために欠けているスタックがプロセスインテリジェンスとなる」と強調する。
そして、同氏は「Celonisにおけるコンテキストとは、誰が、何を、いつ、どこに、なぜといったプロセスを理解することであり、社内に分散したデータを統合し、AIが理解できるようにすることが可能だ。AIとCelonisのプロセスインテリジェンスを掛け合わせて、サプライチェーンに適用した企業では半年間で10億円以上の在庫削減効果を達成することができた。この企業は2025年度に、さらに40億円以上の在庫を削減することを目指している。大きな価値を生むことができる世界がやってきている」と力を込めた。
Celonisが実現するエンタープライズAIは、Data Coreレイヤにおいて、SAPやOracle、Salesforceなどの構造化データだけでなく、CSVのような半構造化データ、メール情報のような非構造化データを取り込むとともに、各種データレイクとも連携することを可能としている。
また、個別システムからプロセスを解放するだけでなく、Process Intelligence Graphレイヤでは、取り込んだデータにユーザー独自のビジネスコンテキストを付与し、個々のシステムに依存しない形で、プロセスのデジタルツイン化を図ることができるのが特徴だ。
さらに、Composable Solutionsレイヤでは、分析、設計、運用といった取り組みを通じて、各業種や部署横断的に適用可能なコンポーザブルAI駆動ソリューションを実現できるという。
村瀬氏は「プロセスは、使用しているシステムによって制限されるべきではなく、企業にとって最も効果的に機能すべきである。そして、システムは変革を支援するものであり、変革を制限すべきではない。プロセスを解放することは、レガシーシステムからの分離を意味し、エージェントもサイロから解放することである。Celonisは、AIを活用した業務の最適化や再構築を支援することができる」と述べた。
同氏は「プロセスインテリジェンスを備えて、AIを活用すれば、RoAIを創出できる。プロセスが機能すれば、AIも機能する(When Processes Work AI Works)ことになる」と定義した。
さらに、村瀬氏は「Celonisは日本企業の変革を支援し、日本を元気にしたいと考えている。その変革をドライブするのは、チェンジマネジメントをリードするChange Makerと呼ばれる人たちである。データを使い、チェンジマネジメントを行う人たちが集まり、知恵を絞り、解決していくことが大切である。Celonisでは、日本においてさまざまなコミュニティを用意している。一緒になって変革の荒波を超えていきたい」と、自身の講演を締めくくった。
マクニカの事例から見る、プロセスインテリジェンスがもたらす価値
基調講演の後半には、マクニカホールディングス 執行役員兼マクニカ IT本部長の安藤啓吾氏が登壇。同社のIT・DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略においてCelonisの活用事例について触れた。
マクニカでは、長期経営構想「Vision 2030」に取り組んでおり、これを通じて、「サービスソリューションカンパニー」への変革に取り組んでいる。それを下支えするIT・DX戦略では、ITおよびデジタルの徹底活用を通じ、イノベーション力を育む土壌を調えることを目指し、価値創造に貢献する「変革」、収益性向上に貢献する「成長」、変革・成長を下支えする「基盤」の3つの観点から施策を推進。
また、3段階のIT戦略ステップを設定。2024年度までのステップ1では、IT・デジタル環境を整備。2027年度までのステップ2では、ITエコシステムの確立を進め、2030年度までのステップ3で、企業価値の向上と、利益拡大への直接貢献を目指している。
安藤氏は「プロセスインテリジェンスは、既存事業を支える重要な施策に位置づけている。シリコンサイクルが繰り返される半導体業界では、生産性向上が重要なテーマ。取扱量が2倍になっても現在の事業体制で維持できるように、業務プロセスの標準化、CRM(顧客関係管理)やERP(企業資源計画)などの刷新を進めている。だが、一層の生産性向上には現場の経験や勘に頼った取り組みでは限界がある。データを活用して、客観的に改善点を浮き彫りにし、効果を上げたいと考え、Celonisに着目した」と振り返る。
そのため、同社では2023年度に商談領域に試験的にCelonisを導入。それに合わせて、ドイツのCelonis本社における幹部との会議を通じた提案や、同業のグローバル企業であるアヴネットの導入事例を参考にして、受注や調達領域にもCelonisの適用範囲を拡大。2025年度には基幹システムの海外展開プロジェクトで、海外現地業務のプロセスの可視化にCelonisを活用している。
非構造化データ活用とAIエージェントの未来
注目されるのは、2025年9月に国内で初めて、AIによるメールデータの活用でプロセス全体を横断した可視化を実現したことだ。
従来、在庫不足に伴う納期調整や価格マスタが正しく登録されていないためSAPによる出荷ブロックなどが発生し、それに関連して大量のメールのやり取りが行われた結果、状況の確認がかえって困難になるという事態が起きていたという。
そこで、Annotation Builderを通じたAIの活用で担当者のメールデータをCelonisに取り込み、プロセス全体を可視化するとともに、さらにAIを使って状況を分析し、推奨アクションを提示する仕組みを構築。
将来的には、推奨アクションが自律的に出荷ブロックを外したり、価格マスタを登録したりといったことも視野に入れており、さらなる業務の効率化を図っていくことになる。同社では、2025年9月にスペインのCelonisの拠点を訪問し、同社のAIスペシャリストとともに2日間にわたるワークショップを実施。それをもとに、AIを活用した12本のユースケースを策定し、順次、適用を進めている段階にあるという。
安藤氏は「非構造化データの取り込みによる全体の可視化が完了し、AIアシスタントでネクストアクションの推奨までを実現している。今後は、自律型AIエージェントの活用につなげたい。より多くのシステムのデータをCelonisに取り込み、データを探し回らずにAIが検出し、営業がワンクリックで改善を行い、さらにはAIエージェントが自律的に改善する形にしていきたい」とした。
マクニカにおける今後の展望
マクニカでは、Celonisを活用しながら、デジタルツイン基盤を構築する考えも明らかにしている。
それを実現するためには、非構造化データを含めて、さまざまなデータを取り込み、オーケストレーションによるプロセスの自動化を推進する「コンポーザブル」、企業実態を捉えたエンドトゥエンドでの業務プロセスを理解する「プロセスコンテキスト」、AI活用や複数のAIエージェントとの連携を前提とした構造化/非構造化データを含めた「多様なデータソース」が重要であるとした。
また、2025年11月にドイツで開催された「Celosphere 2025」では、マクニカが国内で取り扱う統合プラットフォームのDatabricksとCelonisとの連携が発表され、DatabricksのデータをゼロコピーでCelonisで活用できるようになった。安藤氏は「これまで以上に多彩なデータを、リアルタイムで利用できる。コンテキストのもとになるデータも飛躍的に増加するだろう」とした。
最後に、安藤氏は業務プロセス変革の成功の条件として、熱意を持った人材やビジネス部門の変革による「People」、全社デジタルツインのコンテキストを活用する「Process」、AI、オーケストレーションなどのためのコンポーザブルを実現する「Platform」の3つの「P」を挙げている。
同氏は「Celonisを活用することで、エンドトゥエンドのプロセスを可視化できるため、ひとつひとつのプロセスだけでは見つけられない課題を抽出でき、大きな業務変革につなげることができる。AIなどの新たなテクノロジーを、いかに柔軟に活用していくのかがこれからは重要であり、コンポーザブルにプラットフォームを構築する必要がある。自社の変革だけでなく、社会全体の変革につなげていきたい」と期待を口にしていた。
なお、Process Intelligence Day Osaka 2025では、そのほかにもNECやキリンホールディングス、ビッグローブ、エイト日本技術開発、システムサポート、コベルコE&Mからの事例紹介も行われた。











