NTTは11月に開催した2025年度第2四半期の決算会見において、自動運転事業を推進する「NTTモビリティ」の設立を発表した。そのNTTモビリティが12月17日、本格的な始動に際して記者説明会を開催した。

NTTモビリティの代表取締役社長である山下航太氏は、「自動運転サービスには、人と技術の双方が重要。交通を利用する地域の方々に寄り添い、交通事業者や自治体、技術を有するパートナー企業、利用者と共に、自動運転サービスを提供していく」と、同社のビジョンを紹介した。

  • NTTモビリティ 代表取締役社長 山下航太氏

    NTTモビリティ 代表取締役社長 山下航太氏

NTTグループの専属会社として自動運転に取り組む背景と課題

近年は地域の交通を支えるサービスにおいて、少子高齢化の課題が顕在化している。特に路線バスはその影響が顕著で、2023年時点で、毎年平均約1480キロメートルのバス路線が廃止・運休されているという(国土交通省「令和7年版 交通政策白書」)。

運転手の平均年齢は過去10年間で3歳増加したほか、バス運転手の有効求人倍率は全業種平均の1.8倍と、人材不足も進んでいる。タクシーはさらに状況が悪く、有効求人倍率は全業種平均の2.9倍だ(厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」)。

山下氏は「地域交通への自動運転の導入は有効な解決策である」としながら、自動運転の社会実装に向けた課題について「安心・安全な自動運転」「全国各地でのサービス展開」「サステナブルな事業運営」の3点を挙げた。

  • 自動運転推進の背景

    自動運転推進の背景

「安心・安全な自動運転」では、地域住民や、自動運転車と一緒に道路を利用する他の一般運転者が安心できるようサービスを高度化する必要があるという。

「全国各地でのサービス展開」では、自動運転を必要とする各地域で異なるニーズや環境に合わせた運行体制や人員配置を実現する必要がある。

また、「サステナブルな事業運営」として、長期の事業運営を可能にする維持運営費の適正化が求められる。山下氏は「事業継続性は最大の課題と言ってもいい」と問題の大きさを指摘した。

NTTグループではこれまで、NTT東・西をはじめNTTドコモビジネス、NTTドコモなど、複数の会社が自動運転の実現に向けた研究や実証を重ねてきた。過去2年間だけでも計35件の実証を全国で実施したという。

NTTモビリティはグループ各社が蓄積してきた知見や技術を集約し、自動運転の専業会社として専門性を高めながら、さらなる社会実装に挑戦する。

  • NTTグループの知見を集約する

    NTTグループの知見を集約する

自動運転の導入と運用をワンストップで支援

NTTモビリティは自治体や交通事業者、民間企業に対し、自動運転の導入と運用をワンストップで支援する。具体的な事業領域は定時・定路線バス、オンデマンドバス、ロボットタクシーなどだ。

これらの領域に対して、自動運転車両およびシステムの用意から、走行ルート設計、運行時の遠隔モニタリングまで、交通サービスの提供に必要な各段階で支援を提供する。運用人員向けのトレーニングプログラムなども手掛けるという。

  • NTTモビリティの事業概要

    NTTモビリティの事業概要

なお、全国の自治体や事業者の窓口となるのは、今後も変わらずNTT東・西をはじめとするNTTグループ各社だ。NTTモビリティはこれまでグループ各社が個別に構築していたサービス提供の仕組みを共通化し、各社がより迅速にサービスを展開するためにサポートする。

  • 窓口は今後も引き続きNTTグループ各社が担当する

    窓口は今後も引き続きNTTグループ各社が担当する

NTTモビリティは2028年までにサービスを全国するための基盤を整える計画だ。主にレベル2相当で実施されいているグループ各社の実証実験を、レベル4(特定条件下でシステムが人間の代わりに運転操作)まで引き上げる。

その後、全国に向けてサービスを順次拡大する。2030年代にはレベル4相当で1000台以上の運行支援を目指すとのことだ。

  • 今後の展望

    今後の展望

自動運転に関する3つの取り組み

山下氏は記者説明会において、今後の具体的な取り組みとして「Co-Creation Hub」「路車協調」「統合モニタリング化」の3つを紹介した。以下にそれぞれの内容を解説する。

Co-Creation Hub

NTTモビリティは自動運転の高度化と新たな価値創出に向けて、NTT武蔵野研究センタ内にCo-Creation Hubを新設する。開設日は2026年2月予定。Co-Creation Hubでは事業性の検証や技術開発をはじめ、地域と連携したイベントの開催や人材育成、パートナー企業との技術開発などを進める。

  • Co-Creation Hubの取り組み内容

    Co-Creation Hubの取り組み内容

路車協調

車両に搭載したセンサーだけでは対応しきれない場面を想定し、道路と車両が連携して安全な走行を実現するための、路車協調に関する研究も進める。

具体的には、視覚から接近する車両の情報を相互に連携し原則・停車する操作や、工事などによる道路環境の変化に対応する操作などを高度化し、安全な自動運転を目指す。

  • 路車協調の取り組み内容

    路車協調の取り組み内容

統合モニタリング化

統合モニタリングシステムは、レベル4の実現に求められる技術だ。1人のオペレーターが1台の車両を監視、あるいは複数人でより多くの車両を監視するシステムが求められる。この技術は、特に自動運転車両の普及期など、省人化が必要な場面で効果的だと考えられる。

なお、複数台の車両を監視するためには安定した通信やAIの稼働が不可欠であることから、単なる遠隔モニタリングだけではなく、通信の安定化などにも取り組むとのことだ。

  • 統合モニタリングシステムの取り組み内容

    統合モニタリングシステムの取り組み内容