近畿大学(近大)とオリザ油化の両者は12月15日、米ぬかから油を抽出する際に生じる副産物から、脂質である「アシル化グルコシルセラミド」の新規化合物3種を初めて発見し、その化学構造を解明したこと、さらにはそのうちの1種が表皮表面の「角層」のバリア機能を高めることを、ヒトの表皮を再現した組織モデルを用いて明らかにしたと共同で発表した。
同成果は、近大 薬学総合研究所の森川敏生教授、オリザ油化 研究開発本部の下田博司本部長らの共同研究チームによるもの。詳細は、欧州植物科学協会の刊行する機関学術誌s植物科学協会の刊行する機関学術誌「Phytochemistry Letters」に掲載された。
米ぬかから発見された3つの新規化合物とは
植物由来の脂質の一種である「グルコシルセラミド」は、細胞間脂質の主成分である「セラミド」に「グルコース」(ブドウ糖)が結合した化合物で、主に植物に含まれる。この成分は、経口摂取や塗布によって皮膚の保湿作用を示すことが報告されている。そのため、この成分を含む米・こんにゃく芋・パイナップルなどの植物エキスは機能性素材として販売され、機能性表示食品としても受理されている。
米ぬかから米油を製造する際に生じる副産物からグルコシルセラミドを高濃度化し、1999年に製品化したオリザ油化は、副産物のさらなる有効活用法を検討するため、グルコシルセラミド以外の有効成分を探索する研究を近大 薬学総合研究所と共同で開始。そして2021年には、米ぬかからヒト型セラミドである「エラスティカミド」を単離・同定することに成功したとする。なおヒト型セラミドとは、ヒトの皮膚に存在し、肌を外部刺激から守るバリア機能のための必須成分であるセラミドと同一の構造を持つ化合物のことである。
このような背景から共同研究チームは今回、まだあまり機能が解明されていない、「アシル化グルコシルセラミド」という脂質に着目。この脂質は、グルコシルセラミドのグルコース部分に、アシル基として脂肪酸が結合した構造を持つ化合物である一方、グルコシルセラミドとは異なりこれまで植物からは見つかっいなかったとのこと。そこで今回の研究では、その詳細を調べたという。
研究ではまず、米ぬか抽出物がクロマトグラフィによって分画された。その結果、3種類の未知化合物「oryzaceramides A~C」が単離された。続いて、核磁気共鳴(NMR)や質量分析などの分光学的手法に、化学的処理を組み合わせることで、それぞれの立体構造が詳細に解析された。その結果、これらの化合物は従来の植物由来グルコシルセラミドとは異なり、脂肪酸がアシル化された新しい構造を持つことが判明。それぞれ、脂肪酸のうちパルミチン酸(oryzaceramide A)、オレイン酸(oryzaceramide B)、リノール酸(oryzaceramide C)が結合していることが明らかにされた。
次に、単離された化合物の生理活性を評価するため、ヒト表皮三次元培養モデルを用いて角層バリア機能への影響が調べられた。その結果、oryzaceramide Aを10μMの濃度で添加すると、皮膚から蒸散していく水分量を表す「経表皮水分蒸散量」が有意に減少し、角層バリア機能が改善することが確認されたとのこと。またこの作用には、グルコシルセラミドに付加したアシル基、特に飽和脂肪酸エステル部分が関与している可能性が示唆されたという。
今回の結果から研究チームは、米ぬかにはこれまで知られていなかったアシル化グルコシルセラミドが存在し、それらが皮膚の保湿・バリア機能を高める可能性が示唆されたとする。またこの成果は、米ぬかという米油の副産物から得られる新しい脂質の機能性が示された点で意義が大きいとのこと。そして今後、保湿作用以外の機能も解明することで、化粧品や機能性食品へのさらなる応用が期待されるとしている。
