UiPathは12月10日、年次イベント「UiPath FUSION Tokyo」を開催した。基調講演では、創立者のダニエル・ディネス氏、日本の会長 CEOを務める長谷川康一氏が、「エージェンティックオートメーション」が実現する未来について語った。
2025年はAIエージェントの注目度が高まり、テクノロジーやソリューションの発表が相次いだが、導入まで漕ぎつけている企業はまだ少ない。AIエージェントの実装や見解はITベンダー各社で異なるところがあるが、UiPathはAIエージェントによる世界をどのように築き、どのような世界を描こうとしているのか。
エージェンティックオートメーションで企業がAIから価値を引き出せるように支援
最初に登場したUiPath 会長 CEO 長谷川康一氏は、2025年はAIエージェント元年と言えるが、マッキンゼーの調査では、多くの企業がAIに対する投資から十分な価値を引き出すことに苦戦していることを明らかにした。
この課題について、長谷川氏は「LLMは可能性を持っているが、現場の業務につなぐ、動かす、管理する仕組みが必要。UiPathが企業向けのAIエージェントを提供することでそれを担う」と述べた。
そして長谷川氏は、企業においてはAIをビジネス価値に変えることが重要と切り出した。そのために、UiPathはエージェンティックオートメーションによってAIを現場の業務やシステムとつなぎ、アクションを実行可能とし、オーケストレーションを行うという。
エージェンティックオートメーションにおいては、ロボット(RPA)、AIエージェント、人の特性を生かした協働がカギとなる。「定型業務はロボットに任せる。また、AIは業務の自動化のための大事な要素だが、AIだけでは業務を遂行できない。AIエージェントに判断させ、人間が承認する」と長谷川氏。エージェンティックオートメーションにおいて、3者の連携が不可欠というわけだ。
エージェンティックオートメーションにおいて、業務プロセスをエンド・ツー・エンドで自動化するために、UiPathが注目しているのがワークフローだ。ワークフローでロボット、エージェント、人をつなげる。
「現場の知恵と思いをAIに教える。インプットが正確になることで、精度が上がる。われわれはワークフローでつなぐソリューションを提供する」(長谷川氏)
長谷川氏は、エージェンティックオートメーションは処理だけでなく、プロセスマイニングも行うため、結果を基にプロセスを継続的に改善できると紹介した。
「エージェンティックオートメーションの中で、人がモニタリングして改善を行う。現場の人が課題を解決しながら自動化を続ける。これにより、イノベーションが起こせる」(長谷川氏)
日本はエージェンティックオーケストレーションを評価するよい国
続いて、UiPath 創立者 会長 兼 最高経営責任者 Daniel Dines (ダニエル・ディネス)氏が登壇し、同社における日本市場の重要性を説明した。ご存じの方も多いだろうが、RPAは日本で大きく成長した技術だ。Dines氏も「当社のRPAは日本のクライアントの力を借りて作り上げて世界に展開した」と述べた。
Dines氏は、「RPAから、ロボットは無人で操作でき、人の関与なく展開できることを学んだ。これはAIについてもいえること。生成AIはチャットボットとして利用が始まった。チャットボットは優秀だが、本当の意味で企業の損益に与える影響は大きくない。チャットボットによって、各人の業務にかかる時間が数十分短縮できてもインパクトは小さい」と、AIの現状の課題を指摘した。
そこで、UiPathは企業がAIから価値を引き出せるよう、ロボット、AI、人をつなぐオーケストレーションとして、エージェンティックオートメーションを作り上げた。「AIが出した提言を人間がレビューしてロボットが実行する。これがベスト」(Dines氏)
Dines氏は、「日本企業は信頼性と正確性を重視しているので、エージェンティックオーケストレーションを評価するよい国」と述べた。同氏はエージェンティックオートメーションをうまく活用している業種として、金融やヘルスケアを挙げた。これらの業種はRPAで成功したベースがあり、その上にエージェンティックオートメーションを展開することでプロセスの自動化に成功したという。
UiPathとNVIDIA NIMが連携するメリットとは
AIソリューションは一社で提供できるものではなく、各社がOpenAI、NVIDIAといった企業と提携しているが、同社もその例に漏れない。基調講演には、今年9月に協業を発表したエヌビディアからエンタープライズ事業本部 事業本部長 井﨑武士氏が登壇した。
両社は、UiPathのエージェンティックオートメーション、NVIDIAのオープンNemotronモデルをNVIDIA NIMと組み合わせることで、企業が自然言語処理、画像認識、予測分析などのエンタープライズ対応AIモデルをマイクロサービスとして展開することに取り組んでいる。
協業では、UiPathとNVIDIA NIM およびNVIDIA Nemotronを接続するIntegration Service Connectorを導入する。このコネクタにより、企業はNVIDIA NIMを活用して、生成AI機能をアプリケーションやサービスに統合できるようになる。
伊崎氏は「当社はハードウェアの会社というイメージが強いかもしれないが、ソフトウェアに投資している。AIのAcceleratedプラットフォームを提供するのが当社の仕事」と話した。
伊崎氏は「NIMとUiPathの連携において、われわれのリーズニングモデルがさまざまなエージェントを解釈して、複雑な条件を理解して回答を出す。これらの連携は今後もっと進化する」と語っていた。
Copilotに続き、Microsoft Azure AI Foundryも統合
同日、AIエコシステムの拡張として、UiPath Platform for agentic automation and orchestrationとMicrosoft Azure AI Foundryを統合することが発表 された。
これにより、UiPathのエージェントがAzure AI Foundryのエージェントやモデルと連携してエンド・ツー・エンドのプロセスを自動化できるようになる。また、MCP(Model Context Protocol)を利用することで、Microsoft 365 CopilotおよびMicrosoft Copilot Studioとのネイティブ双方向統合が拡張され、UiPath MaestroはMicrosoftまたはUiPathのエージェントを通じて、エンド・ツー・エンドのオーケストレーションワークフローの展開と拡張が可能になる。
そのマイクロソフトからは、日本マイクロソフト 業務執行役員 パートナー事業本部 エンタープライズパートナー統括本部長 岡寛美氏が登壇した。
岡氏は、マイクロソフトが「AIを活用し、必要なときに、すぐに知識や判断力を提供できる新しい組織の形」としてフロンティア企業を掲げていることを紹介し、同社がソリューションの中心にCopilotを中心に据えていると述べた。
そのCopilotとUiPathは連携しているが、岡氏は、「マルチエージェントへの未来に向けて連携を進めている」と語り、連携のカギとしてエージェントとオーケストレーションを挙げた。「UiPath Maestroにより、Outlookなどのマイクロソフト製品とUiPathの製品が双方向に連携して、エンド・ツー・エンドで自動化できるようになる」(同氏)
岡氏は、さらにAIモデルの連携を進めている一環として、Microsoft Azure AI Foundryの統合を紹介した。
なお今年9月には、日本を最重要拠点とする本社のグローバル戦略に従い、日本がリージョンに昇格したことが発表された。これにより、日本はDines氏に直接レポートすることになり、「日本の顧客が開発部門にアクセスできるようになり、対応が速くなる」と同氏は話した。日本の顧客と連携し、文書の理解、エージェント RPAの展開を支援するプログラムが始まっており、それを担うフォワードデプロイドエンジニアのトレーニングが行われているという。
「日本市場が重要」と語る外資のITベンダーは多いが、UiPathは本気と見ていいだろう。RPAが日本企業に受け入れられた背景を考えると、同社の掲げるエージェンティックオートメーションも日本企業との相性はよいといえる。AI活用に立ち止まっている企業が多いと言われる中、エージェンティックオートメーションが日本企業の後押しとなることを期待したい。




