AIを活用した翻訳ツールを手掛ける独DeepLは11月27日、ユーザー向けの年次イベント「DeepL Dialogues」を日本で初めて開催した。世界情勢の変化や企業のグローバル化が進む中、国境を越えたコミュニケーションと迅速な意思決定が重要な競争力となっている。
本稿では同イベントの中から、創業者 兼 CEOのJaroslaw Kutylowski(ヤロスワフ "ヤレック"・クテロフスキー)氏による基調講演の内容をお届けしよう。同氏の講演内容は英語で行われたのだが、同社のテクノロジーにより日本語訳と韓国語訳がリアルタイムで会場に投影された。
アジアは急成長中のマーケット
Kutylowski氏によると、日本ではビジネスリーダーの半数以上が言語AIを活用しており、3割以上が翌年にAIへの投資を増額する予定とのことだ。また、韓国では約69%がAI翻訳を業務に利用し、90%以上の人が時間とコスト削減を実感しているとする調査結果もあるという。
こうした背景から、DeepLにとってもアジア、特に日本はグローバルの中で特に急速に成長している地域となっている。日本は世界第2位のマーケットだ。
Kutylowski氏は「アジアの組織はスピードだけでなく、品質の高さやコラボレーションの強化、言語を越えた連携を重視して言語AIを活用している」と、アジア市場におけるAI活用の特徴を分析してみせた。
国内では、すでに東証上場企業の半数以上がDeepLを導入しているそうだ。同社は韓国を含めたアジア市場において、パートナーエコシステムによる販売を強化する。日本ではマクニカとエクセルソフトが、韓国ではEtevers、Saltlux Innovation、KT(旧 Bango)がそれぞれ販売を担当する。
同氏は続けて、「AIは新しい言語である。連携しなければいけないパートナーであり、人間の適応力の試金石となっている」と述べた。
DeepLは「Future Fluency(未来の流暢さ)」を支える基盤へと変化するのだという。人間がこれまでに生み出してきた文章を学習したAIが、言語の壁を越えて真に実施すべき課題解決を支援する。これにより、個人や組織は迅速に動けるようになり、スケールアップを実現できるようになる。
次に同氏は、「AIのスキルは問題ではない。個人レベルでは多くの人がAIを活用し業務を効率化している。障害はテクノロジーではなく文化であり、個人のブレイクスルーが組織全体に伝わらない」と指摘した。
ビデオ会議をリアルタイムに翻訳する「DeepL Voice」デモ披露
法人向けに提供するリアルタイム音声翻訳ソリューション「DeepL Voice」は、これまでに6万件以上の会議で使用され、累計約300万分の音声を翻訳しているという。同社の調査によると、国内で利用しているビジネスリーダーの10人に1人は「リアルタイム音声翻訳が業務に不可欠」と回答している。
DeepL Voiceは、ZoomおよびTeamsに対応する「Voice for Meetings」と、対面の会話で利用可能な「Voice for Conversations」を展開中だ。今後は、コールセンターや現場業務に対応する「Voice API」、自然なテンポとニュアンスを保持した双方向音声翻訳が可能な「Voice to Voice」なども展開予定。
「私たちはより自然なリアルタイム音声翻訳を目指す。システムの応答時間が長ければ話の腰が折れてしまい、短ければ話し言葉のニュアンスが失われる。正確な翻訳だけではなく人間らしいコミュニケーションを実現するため、速度と明瞭さの適切なバランスを追求する」と、Kutylowski氏は今後の方向性を示した。
DeepLリアルタイム音声翻訳ソリューション「Voice for Meetings」デモ(日本語から英語)
同様に、企業向けの自律型AIエージェント「DeepL Agent」もアップデートを果たした。同サービスを提供開始してから、これまで1日当たり約1200回使用され、週11時間程度の業務削減を支援しているという。多数のステップが必要な業務を代替可能でありながら、Human-in-the-loop(人間による確認)によって透明性と統制を確保している。
講演の最後に、Kutylowski氏は「2026年はAI翻訳をさらに一歩引き上げる。当社は翻訳がエンド・ツー・エンドでシームレスに生成され、透明性と品質が担保されたプラットフォームになることを目指している。ミッションクリティカルなプロジェクトから日々のメールまでさまざまなユースケースに対応可能で、自信を持って品質・スピード・コストバランスを取れるようにしていく」と展望を語っていた。


