現在のAIブームはバブルなのか--。2010年代の石油ブームとの類似を指摘するアナリストの意見は、AI産業が同様のパターンをたどる可能性があると警鐘を鳴らしているという。

AI企業は「旧来型エネルギー企業」のような存在

2010年代の石油ブームとは、米国で起きた“シェール革命”とも言われたシェール(頁岩)層に閉じ込められた天然ガスや石油を、水圧破砕法と水平掘削技術を組み合わせて、効率的に掘削できるようになった技術革新だ。

水圧破砕法により、米国は世界最大の石油・ガス生産国となったが、企業が成長に多額の投資を行った後、2014年末にサウジアラビア主導のOPECが市場シェア奪回に動いて価格が暴落し、多くの投資家が損失を被ったという経緯がある。

この石油ブームと現在のAIブームをなぞらえたのは、CarlyleのアナリストであるJeff Currie氏と、アーリーステージのファンドであるOMERS VenturesのHenry Gladwyn氏。それぞれ最近発表したエッセイの中で、類似性を分析している。

Currie氏はAI企業のビジネスモデルの変化に着目。当初はアイデアベースの「資産軽量」型だったAI企業が、データセンターや発電所といった大規模インフラへの投資を行う「旧来型エネルギー企業」のような存在に変わりつつあると指摘。

データセンターは膨大な電力を消費するため、そのコンピューティング能力は時間単位で価格設定される。これはエネルギーがMW(メガワット)時や1バレル単位で取引されるのと同じだ。

単純には比較できないが、AIも同じ軌跡をたどっている

Currie氏は「ビッグテックのAIは今や、エネルギー企業と同様に需給バランスを持つ物理的商品を生産している」と述べているという。そして、低コストの中国AI技術が市場に参入すれば、かつてサウジアラビアの石油が市場を揺るがしたように、AI市場でも同様の価格競争が起きる可能性があると分析している。

Gladwyn氏も中国を「AIのOPEC」に例えて分析している。同氏は、石油取引をドル建てで行うことで形成された経済圏であるペトロダラーにもじって、米国と同盟国が形成する「テクノダラー(Technodollar)圏」とし、このテクノダラー圏がセキュリティ、調達、炭素基準といった要素が西側ブロックを結びつける役割を果たす、としている。

同氏が強調するのは「成功と失敗のパラドックス」だ。同氏は「シェール革命は世界のエネルギー秩序を再構築するほど成功したが、シェール投資家の多くは破滅した。パラドックスは、シェールの豊富さが地政学的には勝利したが、資本のリターンを枯渇させたことだ。AIも同じ豊富さの軌跡をたどっている」と述べている。

だが、単純には比較できない点もある。Currie氏自身も、石油業界では問題にならなかった独占の問題が、生成AI分野では大きく取り上げられている点を相違点として挙げている。

また、石油会社は需要がほぼ分かっており、段階的に成長する市場にサービスを提供しているのに対し、AI市場の需要は指数関数的に成長する可能性があるという点でも、この類推には限界があるとされている。11月26日付けのAxiosが報じている。