ネットワークベンダーとして長年ビジネスを展開してきたシスコシステムズだが、Splunkを買収するなどセキュリティにも注力している。そして、AIの活用が本格化している今、AI活用に適したインフラの開発に本腰を入れ始めている。
米シスコシステムズ シニアバイスプレジデント グローバルスペシャリスト デイヴ・ウェスト氏は、「シスコはネットワーク企業として実績を積み重ねてきたが、AIの時代においてネットワークに優れているだけでは生き残れない。優れたセキュリティ企業になるにはAI企業でなければいけない。AI企業になるにじゃデータ企業でなければいけない」と語り、同社がネットワークに加えて、セキュリティ、AI、データに力を入れていることを明らかにした。
さらに、ウェスト氏は「将来、労働力にAIエージェントやヒューマノイドが加わるようになり、労働人口は現在の80億人から800億人に増えることが見込まれている。現在のネットワークは今後の世界に適した形で設計されておらず、未来のビジネスをサポートできなくなる。したがって、AI時代に向けて、ネットワーク、サイバーレジリエンスを見直す必要がある」と述べた。
シスコが注力する3つの事業
ウェスト氏は同社が注力している事業として、「AI対応のデータセンター」「将来を見据えたワークスペース」「データレジリエンシー」を挙げた。
AI対応のデータセンター
AI対応のデータセンターの実現に向けて、シスコはコンピュート、スイッチやルータ、独自のシリコン、独自の光ネットワーク製品の開発を進め、フルスタックのインフラを提供しようとしている。
ウェスト氏はNVIDIAとの連携を紹介した。AI活用に欠かせないGPUを提供するNVIDIAはIT業界で引っ張りだこだが、シスコとの連携では何が実現するのだろうか。
まず今年11月、NVIDIAパートナーとして開発した初のデータセンタースイッチとなる、NVIDIA Spectrum-X Ethernetスイッチシリコンを搭載した「Cisco N9100」を発表。同製品はオペレーティングシステムをCisco NX-OSまたはSONiCから選択できる。
データセンター向けスイッチ「Nexus」においては、Silicon One、Cloud-scale ASIC、新たに提供する Spectrum-X Ethernetスイッチシリコンを搭載したスイッチの統合運用モデルが提供される。
ウェスト氏は同社の独自性について、「自前のシリコンと光ネットワークを投入する。これにより、AIスタックのオーケストレーションにおいて粒度の細かい制御を実現できる」と説明した。
そして、ウェスト氏は「真の意味でAI対応のデータセンターをフルスタックで実現する際はセキュリティがカギになると気付いた」と述べ、AIのためのガードレールに加え、Splunk製品によってSIEM(Security Information and Event Management)を提供することを紹介した。
「AIスタックにオーケストレーションを組み込んでオブザーバリティも載せることで、セキュアなAIインフラを提供可能になる」(ウェスト氏)
将来を見据えたワークスペース
シスコはワークスペース関連の製品として、「Cisco Spaces」「Webex」などとを提供している。前者は物理的なオフィス空間を管理し、ハイブリッドワークを可能にするためのプラットフォームだ。「位置情報と占有率の可視化」「環境データの収集」といった機能を備えている。後者はあらゆる場所でシームレスなコラボレーションを実現するツールだ。
ウェスト氏は、「会社、自宅、工場、カフェなど、どこで働いてもセキュアな接続性とケイパビリティを提供する。どこで働いていても、エクスピリエンスは優れていなければならない」と語り、シスコがこれらを実現することを目指していることをアピールした。
例えば、ワークスペースや従業員の管理に生成AIを活用することで、従業員が問題に直面した時、すぐに検知して理解して支援するだけでなく、予見し予防できるようになるという。
データレジリエンシー
データレジリエンシーの提供のカギとなるのがSplunkのソリューションだ。ウェスト氏は「Splunkはセキュリティインシデントに加えて オペレーション 自動化の分野で実績を重ねてきた。さらに、LOBのセキュリティにも力を発揮する」と述べた。
Splunkのソリューションは何が異常かを提示し、フォレンジックが必要な場所を教えてくれ、問題を可視化する。これにより、レジリエンシーを強化できるという。
データレジリエンシーを確保するには、インサイト、可視化、オブザーバリティを提供する必要があり、それを実現するのがSplunkとなる。ウェスト氏は「シスコのすべてのソリューションにインサイト、可視化、オブザーバリティを組み込むことで、レジリエンシー確立を支援する」と語っていた。
AIエージェントは24時間止まらない、だからネットワークの再考が必要
さて、シスコが掲げる、ネットワークの再構築を含むAI対応のデータセンターだが、実現までにはどの程度かかるのだろうか。
ウェスト氏は「企業は急いで考える必要があるが、実現には時間がかかる」と話した。
「AIワークロードを実行する場所がクラウドなのか、エッジなのか、ローカルなのか、どこで提供するかを見直す必要がある。さらに、それらにどうセキュリティポリシーを適用するかも考えなければならない。将来、AIエージェントが加わるとワーカーが増えるので、今のネットワークデザインでは対応できない」(ウェスト氏)
もっとも、AIをビジネスの根幹で使おうとすると、エッジでAIを使えるようにする必要がある。その結果、自社のデータセンターとクラウドや外部のAIエージェントとつなぐ必要性も生じ、AIに対応したネットワークを構築しようという話になるという。
労働人口の減少は待ったなしで進んでおり、AIエージェントの進化も著しい。AIの使い手となる企業はAIを活用するためのインフラをあらためて見直す必要があるようだ。

