先日KDDIが開催したビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2025」では、同社の今後を語る講演イベントだけでなく、同社の新技術の展示も行われていた。Starlinkやドローン、堺のデータセンターに関する展示など、松田浩路社長の講演でもふれられたものに加え、ローソンを想定したリテール向けの展示に多くのスペースが割かれていたのが目立った。

また、ミリ波のエリアを拡張することでミリ波の現実的なエリア構築を可能にする中継器の実展示も行われており、Netflixのドラマ10話(1.4GB)を10秒、つまり1話1秒でダウンロードする、といったデモが行われていたのも注目だった。

  • 自動運転バス

    これはつくばでも走行しているという自動運転バス。カメラの映像を監視拠点で監視しながら走行できるという

AIとロボティクスでコンビニ業務を省人化&効率化

KDDIは、高輪ゲートウェイシティにあるKDDI本社内に社員向けのローソン店舗を設置。「実験場」として様々な技術を投入し、未来のコンビニの姿を模索している。リテールテックやAI、ロボティクスを活用した様々な技術を検討しているようだ。

  • コンビニの品出しのソリューション

    ロボットを使ってコンビニの品出しを効率化

展示の1つは、画像解析AIとロボティクスを組み合わせ、商品棚の間を、カメラを備えたロボットが移動して商品を撮影し、欠品を検知するというもの。棚画像をAIが解析した上で、店舗運営システム(店舗可視化AIエージェント)と連携して、プライスカードや商品パッケージから商品名、棚割、商品の状況を正確に把握できる。

  • 欠品検知ロボット(手前)

    欠品検知ロボット(手前)

現在は4台のカメラを備えたロボットが巡回し、棚の画像を自動的に取得・解析する。天井カメラを使うソリューションだと死角が発生しやすいためにカメラの数を増やす必要があり、巡回ロボットの方が優位だとしている。

  • 実際にロボット店内を走行している様子

    実際にロボット店内を走行している様子

  • 実際のカメラの映像

    実際のカメラの映像。2カ所の欠品を検出している

棚の重量センサーを使うという方法もあるが、その場合は商品ごとの棚割の設定が必要になる。この点でも、事前に設定が必要のない巡回ロボットの方が手間がかからないという。

欠品が検知されたら、さらにロボットが棚への補充もするというデモが行われていた。配送ルートも考慮しながら品出しをして、商品を奥に入れて商品を押し出して陳列。カメラが商品の状況を確認しながら品出しをするという。現時点では比較的しっかりとした箱に入った商品などに限られるそうだが、将来的にはさらに袋入りの商品などにも対応していきたい考え。実際に12月から実証実験を開始し、効果を測定していくという。

  • 商品を補充するロボット

    商品を補充するロボット。2カ所で挟んで商品を持ち上げ、補充する

将来的には人型のロボットを活用してより細かな動きにも対応していく検討もしており、韓国のロボットベンチャーRLWRLDのロボティクス技術なども活用していくそうだ。

  • RLWRLDのロボティクス技術

    5本指を操るRLWRLDのロボティクスでは、より繊細な作業が可能になる

  • 5本指ロボットの動作

    人間に近い様々な動作が可能

こうしたロボティクスの活用は、「無人化」ではなく「省人化」が目的。人手不足によって店員の確保が難しくなっているコンビニ業界において、欠品管理、品出しといった人手が必要で時間のかかる作業を自動化し、人間は別の作業を担当するといった効率化が求められており、そうした声に応えようとしている。

スマートグラス×AIで現場オペレーションを改善

同様にコンビニ現場の効率化のために検討されているのが、スマートグラスとAIを組み合わせて現場のオペレーションを改善しようという試み。デモではディスプレイなし/単色ディスプレイ/カラーディスプレイという3種類のスマートグラスを活用し、用途に応じてのデモが行われていた。

ディスプレイなしのスマートグラスで行われていたのは、メガネに内蔵したカメラを使って装着時に常時撮影を行い、現場の情報をデータ化。それをAIの解析によって作業の可視化/効率化に繋げるというもの。

  • 展示されていたスマートグラス

    展示されていたスマートグラス

  • 通常のメガネとさほど変わらないデザイン・サイズ

    通常のメガネとあまり変わらないデザインとサイズを実現。ディスプレイなし、または単色のみディスプレイだと十分自然なデザインとサイズとなっている

グリーンの単色ディスプレイを備えたスマートグラスでは、リアルタイムの多言語翻訳をデモ。メガネの指向性マイクを活用し、自分の声は翻訳せず、目の前の相手の話した言語を翻訳し、メガネのガラス上に翻訳したテキストを表示する。

カラーディスプレイのスマートグラスのデモは、音声で作業手順を問い合わせると、音声と写真などで作業を教えてくれるというもの。カメラが現実を認識して、状況にあわせたアドバイスもしてくれる。音声によるAIへの問い合わせに対応することで、状況に応じた情報が得られるようになっていた。

  • カラーディスプレイ搭載スマートグラスを装着したところ

    こちらはカラーディスプレイを搭載したスマートグラス。これはさすがに少し大きくなった

  • カラーディスプレイ搭載スマートグラス1

    見た目はそこまで不自然ではない

  • カラーディスプレイ搭載スマートグラス2

    全体的にやや太めではある

使われていたのはそれぞれ異なるメーカーのスマートグラスだが、今回のデモではメーカー名は非公表。デモで使われた製品の利用が確定したわけではなく、あくまで実証実験のためだからだろう。デモではAIへの音声の問い合わせに対してやや反応が遅れていたが、これは精度を重視していたためとのことで、今後はこうしたバランスも検証していくという。

  • 調理マニュアルが表示されたところ

    「ロースカツ丼を作ります。まず何をしたらいい?」とスマートグラスに向けて問いかけると、調理マニュアルをメガネ内に表示した

  • 画像認識で現場の状況も確認する

    画像を認識するので、マニュアルどおりに作られているかを確認できる

作業の種類が多いコンビニエンスストアの店員に対して、作業量の削減、外国語の翻訳や作業の案内といった支援を行うことで、業務の効率化、DX化などを実現していきたい考えだ。

iPhoneのミリ波対応に繋がる? 中継器でミリ波が実用的に

ネットワーク面では、ミリ波の中継器のデモを実施していた。これは2024年12月に開発発表していた技術で、28GHz帯のミリ波を受信して中継し、ミリ波のエリアを拡大することができる。2025年4月には実証実験を新宿駅で実施していたが、第2弾の実証として、高輪ゲートウェイ駅前の広場一帯をミリ波でエリア化していた。

  • ミリ波アンテナ

    中央にあるのがミリ波アンテナ

ミリ波は大容量広帯域ながら電波の直進性が強く、遮蔽物にも弱いため、エリア化が難しい。結果として28GHz帯が使えるエリアは広まらず、使えるポイントが転々とあるだけ、というような現状だった。

  • auのエリアマップ

    auのエリアマップ。ミリ波のエリアはスポットが点在しているという状況

それに対して今回開発された中継器は、ミリ波を「ポイント」ではなく面で広げることができる技術になっている。高輪ゲートウェイ駅前は、高輪ゲートウェイシティに繋がる広場となっており、正面のKDDIが入居するビルの一角に、駅に向けてミリ波アンテナが1基設置されている。

  • 新たに開発された中継器

    新たに開発された中継器

  • 中央に見える中継器

    中央にわずかに見えるのが中継器

さらにその電波を受ける駅側にも中継器が2基設置されており、それぞれが3方向に向けて中継しているという。結果として、広場一面をミリ波がカバーすることになり、さらに人などに囲まれたような状況でも、ミリ波の電波が遮られずに安定して受信できる状況が構築されていた。

  • ミリ波の活用と高輪ゲートウェイでの設置状況

    2つの中継器があり、広場全体がカバーできているという

サーバー側の問題など、様々な条件が重なるので一概には言えないが、実際にNetflixで動画をダウンロードしたところ、ミリ波では1~数秒で1話分をダウンロードでき、10話までダウンロード完了したのが約20秒後。この時点で5G Sub6はまだ、4話分のダウンロードを終えたくらいだった。

  • ミリ波/Sub6のダウンロード状況の比較

    左のミリ波でのダウンロードが終わった直後で、Sub6はちょうど5話目のダウンロードが開始したところだった

さらにソニーのデジタルカメラと「ポータブルデータトランスミッター PDT-FP1」を併用し、撮影した画像を転送するデモを実施。これはアップロード速度を比較するデモということになる。実際に画像を転送したところ、Sub6では転送待ちの20枚程度残っている状況で、ミリ波はすでにアップロードが完了していた。

  • ワイヤレストランスミッターを使ったデモ

    ワイヤレストランスミッターを使ったデモ

  • ミリ波のユースケース

    撮影画像を即座に編集部などに転送できる

こちらは例えばスタジアムなどのプロのスポーツカメラマンが撮影画像を即座に転送するといった使い方で有効そうだ。

  • 連写した画像が自動でトランスミッターに転送され、即座にアップロードされていく。まずはトランスミッター内のバッファーに保存され、順次転送されていく

    連写した画像が自動でトランスミッターに転送され、即座にアップロードされていく。まずはトランスミッター内のバッファーに保存され、順次転送されていく

  • ワイヤレストランスミッターからの転送速度の比較

    画面下の数字がバッファーの残り枚数。ミリ波側の残り枚数が0になった時点で、Sub6側はまだ20枚近く残っていた

こうしてミリ波で実用的なエリア展開ができるようになると、iPhoneのミリ波対応も期待できるようになる。現在、米国版ではミリ波に対応しているiPhoneが、国内版では非対応となっているが、これは日本でのミリ波の普及度合いが低いことが影響していると考えられる。

今回展示されたような中継器が普及すればミリ波のエリアが拡大できることになる。KDDIのエリア強化が続けば、Apple側もミリ波対応を検討する可能性があるだろう。松田浩路社長もiPhoneがミリ波に対応するよう交渉する意向を示しているが、KDDIの働きかけによらずiPhoneがミリ波に対応し、それを契機にKDDIもミリ波拡大をせざるを得なくなるという可能性もある。どちらが先になるにせよ、これがミリ波の拡大に繋がるかもしれない。

  • KDDIの松田浩路社長

    KDDIの松田浩路社長

さらに中継器は、基地局を新設するのに対しておおむね4割程度のコスト削減が可能としており、エリア拡大の期待が高まるところ。KDDIでは、新宿/高輪に続いて、今後順次エリアを拡大していきたい考えを示している。