慶應義塾大学(慶大)は11月17日、複数の量子デバイスが量子情報をやり取りするために必要な「量子ネットワーク」の構成・接続状態を自動的に把握し、自動設定の効率化を実現する手法を開発したと発表した。

  • 量子測定ノード実装の概略図

    (a)3つの量子測定ノード間で量子もつれを分散するため、3つのEPPS(量子もつれ光子対源)ノードがOSW(光スイッチ)ノードを介して相互接続している概念図。(b)量子測定ノード実装の概略図(出所:慶大プレスリリースPDF)

同成果は、慶大大学院 メディアデザイン研究科の永山翔太准教授、メルカリの共同研究チームによるもの。詳細は、8月31日から9月5日まで米・ニューメキシコで開催されたIEEE主催の量子コンピューティングの国際会議「IEEE Quantum Week 2025」にて発表された。査読前の原論文は、米・コーネル大のarXivにて公開されている。

量子ネットワーク構築の自動化に光!

量子ネットワークとは、量子コンピュータや量子通信機器などの複数の量子デバイスを量子もつれ光子対でつなぎ、量子情報のやり取りを可能にするネットワークのことだ。複数の量子デバイスを接続する上で、その重要性が高まっている。

しかし、インターネットなどの古典的なネットワークでは自動設定技術が普及しているのに対し、量子ネットワークでは同様の技術は未整備である。そのため、実験では機器の接続や設定を手作業で行う必要があり、規模拡大や複雑化に限界がある点が課題となっていた。そこで研究チームは今回、これらの課題の解決を目指したという。

今回の研究では、量子ネットワーク構築における主要な課題を解決するため、2種類の自動接続確認プロトコルが確立された。具体的には、「量子ノードとタイムタグ装置」間の自動接続確認と、「光スイッチとノード(量子デバイス)」間の自動接続確認のプロトコルである。

1つ目の課題である量子ノードとタイムタグ装置(イベントの発生時刻を高精度で記録する装置)自動接続確認では、接続を認識し、接続チャネルを自動で識別するプロトコルが提案された。このプロトコルには、シリアル方式(順番に識別)とパラレル方式(同時に識別)の2つの方法が考案された。その結果、パラレル方式は接続するチャンネルの数が少ない場合は優勢となる一方、チャネル数が増えるとエラーレート次第でシリアル方式の方が優勢となる場合があることが示されたとする。

  • 量子ノードとタイムタグ装置間の自動接続確認プロトコル、シリアル方式とパラレル方式の性能比較

    量子ノードとタイムタグ装置間の自動接続確認プロトコル、シリアル方式とパラレル方式の性能比較(出所:慶大プレスリリースPDF)

2つ目の課題である「光スイッチとノード(量子デバイス)」の自動接続確認では、光スイッチ(光信号の経路を切り替える装置であり、量子ネットワークではノード間の接続を動的に変更可能)に接続されたノードを自動で特定するプロトコルが提案された。具体的には、光パルスやパターンを使った識別方法、またはメッセージ交換による確認手順が設計された。

最初のアプローチは、実験者が通常行う標準的な手順を自動化するものだ。具体的には、まず光源から光の入力があることを確認し、その後、光が検出器に到達するまでの光学システムの各部分の接続や動作を順番に確認していく。また、「パターンデコードアプローチ」が用いられた。これは、各ノードが固有の物理層パターンを生成し、関連するノードとポートの識別子を古典ネットワーク経由で取得するものである。

これらの技術により、これまで手動で行われていた量子ネットワークの構成や接続状態の自動検出が可能となった。その結果、実験の効率化が図れ、事実上不可能とされてきた量子ネットワークシステムの大規模化が可能となるとした。

研究チームは今後、提案したプロトコルを実際の量子ネットワーク実験装置に導入し、実用性や性能を評価する予定だ。さらに、今回の成果をもとに、トポロジー検出、リンク品質監視、リソース管理、ルーティングといった量子ネットワークのさらなる自動化技術の開発へと発展させ、より大規模な量子ネットワークや商用サービスへの応用を目指すとしている。