YKKとパナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は11月17日、パナソニックHDの連結子会社であるパナソニック ハウジングソリューションズ(PHS)について、株式譲渡契約を締結したことを発表。YKKが今後設立する中間持株会社を介し、YKKグループの建材事業を担うYKK APとPHSが戦略的パートナーシップを構築することを明らかにした。
変革が進む建築・住宅市場の新たな打開策
建築・住宅業界においては、国内での新築戸建住宅に対する需要の減少や“ストック型社会”への移行が進む一方、環境配慮への要求の高まりに伴う規制強化や制度変更への対応、あるいは利便性やセキュリティの強化に向けて需要が高まるIoT住宅への転換が進んでいるなど、市場全体が大きく変革の時を迎えており、各企業は各種ニーズへの迅速な対応を実現するため、継続的かつ大規模な投資を行う必要が生じている。
YKKグループにおいて建材事業を担うYKK APは、窓やサッシ、ドアなどの開口部を中心に、住宅・ビルからエクステリア建材に至るまでの幅広い建築資材を提供してきたとのこと。一方のPHSも、パナソニックグループの一員として住宅設備や建材の製造・販売・エンジニアリングを行っており、国内市場向けを中心に水回り商材や内外装資材を提供するとともに、同社グループとして提供する住宅設備機器の販売も行ってきたという。
しかしPHSにおいては昨今、国内新築戸建住宅向け製品を中心とした事業体制が課題として表出していたとのこと。前述の通り国内戸建市場は縮小の一途にあり、事業成長のために必要とされる海外市場への進出やリフォームなどの事業拡大については、充分なリソースの配分や他社に先行するスピードでの事業決定を実現できる体制が整っていなかったとのこと。特に海外展開における課題として、PHS 代表取締役の山田昌司社長執行役員は、「パナソニックグループとしては世界各地に生産拠点を構えてはいるものの、そこで主に生産しているのは電子デバイスや家電などの製品」とし、「そうした工場において、木材を含む建材を複品体制で生産しようとすると、作業に従事する人材に求められるスキルや受発注の管理システムが大きく異なるため、本格的な操業には多くの投資と時間が必要となる」と説明した。
そうした背景もあり、パナソニックHDおよびPHSはかねてより、事業体制の変革に関する検討を行ってきたとのこと。そして2024年11月には、パナソニックHD 代表取締役 社長執行役員の楠見雄規グループCEOとPHSの山田社長からYKK側へ、株式譲渡契約を通じた戦略的検討に関する提案が行われたという。以降YKKでは、AP事業の持続的成長を見据えた検討を開始。1年間を要した検討の末、YKK APとPHSの両社によるシナジーが十分に創出されるとの判断が下され、今般の戦略的パートナーシップ合意に至ったとしている。
2026年度は「PHSがYKKグループに溶け込む期間に」
今回発表されたパートナーシップについて、YKKの取締役(グループ建材総括)およびYKK APの代表取締役会長を務める堀秀充氏は、YKKが今後設立する“中間持株会社”を介したものだと説明する。
まず2026年4月には第一段階として、パナソニックHDは、YKKが設立した中間持株会社に対してPHSが保有する株式の80%を譲渡。なおPHSの企業価値は2276億円と算定されたといい、80%の株式をYKKの中間持株会社が、一方の20%は変わらずパナソニックHDが保有する形となる。その後2027年4月以降の第二段階では、YKKの100%子会社であるYKK APの株式を中間持株会社が取得。これによりYKK APとPHSは共に中間持株会社の傘下として並列の存在となり、中間持株会社に各種企画部門なども発足させることで、第一段階で創出されたシナジーが最大化される見込みだとする。
YKK APの堀会長は、第一段階である2026年4月からの1年間について「PHSがYKKグループに溶け込めるよう、管理体制などの部分での調和に注力していく」とコメント。対して事業の面では、これまでYKK APとPHSの両社が提供してきた製品・サービスにおいて「重複する部分はほとんどない」とし、一部重複する部分についてもそれぞれ一社が明らかに強みを発揮していることから、各種調整は行うものの「人員整理のようなプロセスを経ることは予定していない」とし、製品ブランド名についても基本的には維持する考えを示した。
両社のシナジーで2035年度には売上高1.5兆円へ
YKK APとPHSの両社は、2024年度の売上高を合算すると1兆411億円に上るとしたうえで、今後のシナジー創出によって2035年度には売上高を1兆5000万円まで伸長させることを目指すとする。またパナソニックHDとしては、今回の決定による2026年3月期以降の連結業績影響について、現時点で営業利益として約600億円を見込んでいるものの、その金額や業績影響は精査中だとしている。
YKK APの堀会長は、完全子会社化するのではなくパナソニックグループの一員でもあり続けるPHSとのシナジーとして期待する点として、「PHSの商流・商材を活用した販路拡大には大きく期待している」としつつ、「パナソニックグループとしても電材やペロブスカイト太陽電池などさまざまな技術を保有していて、その性能も高いため、IoT住宅などへの適用を考えても競合他社にはない特徴になるのではないか」とコメント。
一方でPHSの山田社長は、パナソニックグループの中でも特徴的な事業を展開する同社の在り方について、「現時点での経営戦略や事業戦略において、PHSの重要性が高くないのであれば、企業として“立つ場所”を変えて成長していく選択をすることもひとつの手段であることは検討していた」と明かしたうえで、「今回連携を決定したYKK APはベストオーナー、ベストパートナーだと考えている」としている。






