大阪公立大学(大阪公大)は11月5日、トマト収穫ロボットがどの方向から果実に近づけば収穫成功確率が高まるのかを、画像認識と統計解析により定量的に評価し、その抽出データを基に収穫のしやすさを予測するモデルを構築したことを発表した。

  • 太陽光型植物工場における収穫実験の様子

    (左)太陽光型植物工場における収穫実験の様子。(右)ロボットが取得した画像に対する物体検出・セグメンテーション結果(出所:大阪公大プレスリリースPDF)

同成果は、大阪公大大学院工学研究科の藤永拓矢助教によるもの。詳細は、スマート農業技術を扱う学術誌「Smart Agricultural Technology」に掲載された。

収穫成功確率を可視化し作業効率化に貢献

日本の少子高齢化はさまざまな分野で大きな問題となっており、農業においても深刻な人手不足を招いている。この課題を解決するため、ロボットを用いた自動収穫の研究開発が進められている。トマトは、収穫ロボットの開発が進む作物の1つだ。しかし、トマトは果実が房状に実り、成熟時期が果実ごとに差異があるため、ロボットによる選択的な収穫においては工夫が求められる。それは、果実ごとに収穫すべき段階なのか、そうでないのかを見極める必要があるためだ。

これまでの研究では、「どこから収穫するか」や「どうやって果実を掴むか」が、トマト収穫ロボットの収穫成功に影響を与える要因であることが定性的に示されてきた。しかし、それらを定量的に分析した例は少なく、明確な指標が存在しなかったとする。また、ロボットが収穫に失敗する原因と、茎や他の果実など、果実の周囲の構造とどう関係しているのかも十分に解明されていなかった。そこで研究チームは今回、トマトを自動で収穫するロボットが、どの方向から近づけばトマトをうまく収穫できるのかを分析したという。

今回の研究で開発されたトマト収穫ロボットは、「太陽光型植物工場」(太陽光を主な光源として利用し、温度・湿度・二酸化炭素濃度などを制御することでビニールハウス内で作物栽培を行う施設)に敷設されたレール上を移動可能な仕組みを備える。また、ロボットの腕にあたる部分には、直線的に動く2本のアームと、柔軟に動ける4つの関節を持つアームを持つ。さらに、アームの先端には、3本指でトマトをやさしく掴む装置が取り付けられている。

またカメラも搭載されており、トマトやその周囲の画像を撮影することが可能だ。撮影した画像に対し、物体検出と画像認識手法の「セマンティックセグメンテーション」によって、熟したトマトや障害物となる部分を見分ける。なお、セマンティックセグメンテーションとは、画像内の各ピクセルに意味を割り当てる技術であり、物体の形状や境界を詳細に抽出でき、茎やヘタなどの輪郭を正確に認識することを可能にする。

収穫実験では、ロボットが実際にトマトに近づいて収穫を試み、その成否の結果と、画像から得られる周囲の情報が統計的に分析された。その結果、「トマトの前に障害物がある場合は失敗しやすい」ことや、「トマトの上についている柄がある場合は成功しやすい」などの傾向が定量的に解析された。そして、ある事象が起こる確率(例:成功か失敗)を0~1の範囲で予測する統計手法の「ロジスティック回帰」を用い、画像からの抽出情報を基に収穫の成功確率を予測できるモデルが構築された。このモデルにより、ロボットは選択的な収穫が可能となり、より確実にトマトを収穫できるようになるとした。

今回の研究では、「収穫のしやすさ」が定量的に評価可能な指標として確立され、事前に判断して賢く行動できる農業ロボットの実現に一歩近づいたとする。ロボットが収穫の可否を自ら判断できるようになることで、収穫しやすいトマトはロボットが自動で収穫し、難しいものは人間が対応するという、ロボットと人間が協力する新しい農業の形が期待される。今後の課題は、仮想環境で収穫動作をシミュレーションし、確実なアプローチを実環境にフィードバックするデジタルツインを構築することだとする研究チームは、これにより100%の確率で収穫できるロボットの開発を目指すとしている。