ミークの連結子会社であるミークモバイルは10月30日、非通信事業者が自社ブランドでのモバイルサービス提供を支援するパッケージサービス「MVNO as a Service」の提供を開始すると発表した。
MVNE事業を営むミークがMVNO参入支援をパッケージ化
ミークは2019年にソニーネットワークコミュニケーションズスマートプラットフォーム株式会社として設立。MVNE事業やIoT向けの通信サービス提供を行っており、2022年12月に社名を現在のミーク株式会社に変更。2025年3月には東証グロース市場への上場を果たしている。
ミークがMVNEとして回線提供を行っているサービスとしては、前澤友作氏が立ち上げたKABU&モバイルがある。MVNEとしてのミークの特徴にはNTTドコモ/ソフトバンク/KDDIの3キャリアに対応している点があり、現在楽天モバイルへの対応も準備中とのこと。実現すれば初の4キャリア対応MVNEということになる。
上り回線の需要が高いIoT向けの通信サービスと下り回線の需要が高いMVNE事業を提供していることで、効率よく通信インフラの運用できているのも同社の強みだという。
そのミークにより2025年8月に設立された子会社が、「MVNO as a Service」の提供元となるミークモバイルということになる。
ミークモバイルが非通信事業者がMVNOサービスを展開するためのパッケージサービスである「MVNO as a Service」の提供を行う背景には、ミークの顧客として非通信事業者(=MVNO事業の開始までは通信事業者ではなかった顧客)の比率が高まっていることがあるという。
同社の顧客企業の属性を見ると、2020年3月期における非通信事業者の比率は8.3%だった。それが2024年3月期には31.6%となり、2025年3月期には38.1%まで伸びている。こういった非通信事業者のMVNOサービス参入にはさまざまな障壁があり、ミークもMVNEとしてサポートを行っていたが、それを一歩進めて通信事業の専門性が高い分野をパッケージ化したサービスとして提供し、より参入しやすくしようというのが「MVNO as a Service」の考え方だ。
事業者はMVNO運営の業務にノータッチで参入可能
「MVNO as a Service」を利用してMVNOサービスを提供する場合、ユーザーが契約を結ぶ相手はミークモバイルとなる。参入事業者はMVNOサービス自体の運用には関わらず、自社顧客への販促活動やポイント・クーポンの付与といった形でのコミュニケーションを行う。ミークモバイルは受け取った通信サービス料金の一部を参入事業者に手数料等として支払うと同時に、参入事業者が特典付与を行うために残GBの連携などを行うという枠組みになる。
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「MVNO as a Service」を利用してMVNOサービスを提供する際の枠組み
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これまでのMVNOの枠組み(上段)ではMVNO運営にかかわる業務を事業者が行う必要があったが、「MVNO as a Service」を利用する場合(下段)、事業者はそれをミークモバイルに任せることができる
ミークモバイルでは、パッケージ化のメリットとして、「これまでローンチまで6カ月かかっていたところを3カ月でサービスインできる」と開発期間の短縮を挙げる。なんといっても、モバイルサービスをミークモバイルが提供するため、この部分の開発が不要になるのが費用面でも大きい。ポイント/クーポンなどの既存システムの連携についてはやはり開発が必要となるが、開発期間/費用面の負担は大きく圧縮できる。また、モバイルサービスの運営にあたるスタッフの確保も不要だ。
プランは4GB~57GBまでの5段階を設定している。料金も「MVNO as a Service」を利用するすべてのサービスで共通のものとなり、カスタマイズには対応しない想定。ただし、「4GBプランは提供しない」など、一部のプランをメニューから外すといったことは可能にする予定だという。
こういった特徴から、「MVNO as a Service」を利用するMVNOサービスは、これまでのMVNOユーザーに多かった「費用の安い通信サービスを利用したい」という層ではなく、「自身の利用する通信以外のサービスや応援するサービスと連携できる通信サービスを利用したい」という層になる。「MVNO as a Service」を利用する事業者も、MVNO通信サービスでの利益を上げたいという事業者ではなく、自社が持つ他の事業の価値向上やロイヤルティ向上を図りたいという事業者を想定している。
発表会では、想定される利用イメージとして、小売業者、アーティストなどのファンクラブ、インフラ事業者、旅行業者などを挙げていた。とくに「何回線以上」といったしきい値を設定しているわけではないとのことだが、一定の回線数がなければ(最小限ですむとはいえ)初期構築費用の負担がペイしないだろうということで、数万単位の顧客を抱えており、数千件の契約回線が期待できる事業者を主な顧客と考えているようだ。
発表の時点で「MVNO as a Service」のサービスはすでに完成しており、参入を希望する事業者との契約が整い、既存システムとの連携についての開発ができればすぐにもサービスを提供できるとのこと。ただし現時点ではサービス提供開始の予定などについてはノーコメントとのことだった。
「MVNO as a Service」でもミークのMVNE事業と同様に3キャリア対応(前述のとおり、近い将来には楽天モバイルがそれに加わる見通し)がひとつのアドバンテージになるが、eSIMに対応しているのは現時点ではドコモのみ。ただしソフトバンク/KDDIも提供に向けての調整は行っているとのことだった。
このところ、キャリアの通信料金引き下げにより、MVNOのシェアは横ばいが続いている。ミークモバイルはそういった環境の中でも、通信をメイン事業とするわけではない事業者によるMVNOが新たなユーザー層を掘り起こせるのではないかとみており、そこに勝機を見出しているようだ。







