京セラがJAEの株式をNECより取得

京セラは10月30日、NECの持分法適用関連会社である日本航空電子工業(JAE)のNECが保有する株式の約98.5%をNECより10月31日付で取得する予定であることを発表した。具体的には、京セラが取得するJAEの株式数は2223万2269株で、2025年9月30日時点の発行済株式総数(自己株式を除く)に対する所有割合は33.0%となり、NECは34万6000株(所有割合0.51%)を手元に残すこととなるという。

コネクタ事業の拡大を目指す京セラ

JAEはコネクタ事業を主力事業として展開してきたが、現在、NECはITサービス事業および社会インフラ事業に注力する方向性を指向しており、JAEを2024年3月に連結子会社から持ち分法適用関連会社に移行させつつ、その位置づけについての検討を行ってきたという。一方、京セラは、電子部品セグメントにおいて、米国子会社であるKYOCERA AVX Components Corporation(KAVX)のグローバルな販売網や顧客基盤と、京セラの省人化・効率化を追求した生産技術とのシナジーを発揮することで、市場シェア拡大と収益性向上を図ることを事業戦略としている。

京セラは、この戦略に基づいてMLCC事業およびタンタルコンデンサ事業に注力する一方、コネクタ事業は、フレキシブル基板コネクタや基板対基板コネクタの製品開発力、欧州自動車市場向けカスタムコネクタに強みがあるものの、今後の成長市場である自動車・データセンター・産業ロボット分野などにおける“小型・高電圧対応・耐震・防水”などの多様な顧客ニーズに対応していくためには、事業規模や生産技術、製品規格化のノウハウの面で課題があったという。そうした中、JAEは、コネクタ事業において世界トップ10に入る規模を有しており、同社を持ち分法適用会社として取得することで、シナジーを創出し、グローバルで競争力あるコネクタ事業への成長を図ることができると判断したという。

一方、JAEとしても、中期経営計画に基づいて自動車、携帯機器、産機・インフラ、航空・宇宙の4市場に注力する形で技術開発とものづくり強化による成長を目指しているものの、市場環境の変化や海外市場拡大などの取り組みの一部遅れにより、計画達成には時間を要する見込みとしており、京セラとの資本業務提携を図ることで、海外販売網や生産拠点、設計リソースの活用を進め、コネクタ事業の成長を加速させることができると判断しているとする。

今回の資本業務提携により、すでに提携契約を締結しているJAE欧州市場向けコネクタのKAVXチェコ工場への製造委託を端緒として、両社間の協業推進チームを設置し、「KAVXチェコ工場への製造委託品種の拡大やその他の京セラ海外生産拠点を活用したJAEコネクタ製品の製造委託」、「欧州における自動車市場・産機市場に対する京セラグループの販売チャネルや現地技術体制を活用したJAEコネクタ製品の販売」、「両社の設計リソースを活用した新製品の共同開発」、「次世代コンピューティングに向けた光技術の共同開発」、「その他、両社の販売チャネルを活用したコネクタ事業におけるクロスセル協業など」といった事項を中心に、両社のコネクタ事業の協力関係の深化に向けた具体的な協業を検討・推進していくという。

加えて、携帯機器・ICT機器向けビジネスの強化に向けたJAEの開発体制の拡充や両社の技術協力に向けた関係構築の速やかな実現も進めていくともしている。

なお、今回の資本業務提携において、京セラは、JAEへ取締役1名を派遣する権利を有することについて合意しているという。