製造領域における派遣・紹介事業を手掛けるUTグループは、同社完全子会社であり、自動車業界および半導体業界向けの人材サービス事業を展開するUTエイムが、11月5日付で北海道千歳市に「北海道テクノロジー能力開発センター」を開所することを発表した。

2028年3月期までに500名の半導体エンジニア育成へ

国内の半導体業界では、全体的に人材不足が顕在化していることから、早期の人材育成や安定的な供給体制の構築が求められている。半導体業界向けにもエンジニアをはじめとする人材派遣を行ってきたUTエイムは、これまで岩手・大阪・三重・熊本の4か所に半導体エンジニアの研修施設「半導体テクノロジー能力開発センター」を設置。3600名以上の半導体人材を顧客企業へと配属してきたとする。

そして同社は今般、半導体関連企業の進出が相次ぎ半導体製造拠点の集積が進んでいることから、半導体エンジニアへの需要が今後一層拡大することが見込まれる北海道千歳市に、北海道テクノロジー能力開発センターを開設。全国的な人材育成の取り組みをさらに発展させ、道内における半導体エンジニア育成拠点として、安定的な半導体エンジニアの輩出を目指すという。

なお同センターでは、既存センターと同様に、半導体業界未経験者や半導体オペレータを中心として半導体エンジニア教育を行うとする。特にここでは、「半導体へ関心を持ってもらい、仕事に対するモチベーションを高めてもらいたい」という顧客企業からのニーズを受け、基本スキルの習得を土台としつつ職種固有の専門スキルを身に着ける教育を実施しているとのこと。専門的知識・技能については、業界全体や専門用語、安全の理解に始まり、各装置の理解や各種工具の使い方についても、演習を通じて実践的に学ぶことができるとしている。

  • 教育カリキュラムの概要

    半導体テクノロジー能力開発センターにおける教育カリキュラムの概要(出所:UTグループ)

また専門スキルとしては、半導体製造装置エンジニアの3職種(装置の組み立て・現地据え付け・稼働調整を行う職種、装置の保守・点検・メンテナンスを行う職種、生産プロセスの監視や装置の評価・解析・改善を行う職種)の知識およびスキルを、それぞれ約15日間で修得可能だとしており、それを実現するため、指導を行うトレーナーは、半導体業界で豊富な経験を有する教育・指導技術に長けた人材を配属するとした。

なお、基本スキルの研修においてはVRを活用したものもあるといい、緻密さが求められる半導体製造工場で必要とされる安全行動の他、声量や姿勢、目線などのリアルタイム判定をしながら、チームで働くエンジニアが欠かすことのできない“コミュニケーション”なども実践的に学べるとする。加えて社員には、問題解決力、PDCAを回す力、セルフマネジメント力など、仕事をしていくうえで大切な力を教育する体制も整えているという。

こうした教育カリキュラムについては、顧客企業への事前ヒアリングに加え、現在顧客先に配属されている社員へのアンケート結果をもとに開発しているとのこと。日々変化する顧客企業からのニーズや、半導体テクノロジー能力開発センター卒業生からのフィードバックを都度反映し、継続的なアップデートを今後も行っていく予定だとした。

UTエイムは今後、北海道テクノロジー能力開発センターから顧客企業へと半導体エンジニアを配属できる体制を構築し、2028年3月期までに500名のエンジニア育成を目指すとする。また同社に所属する3900名以上の半導体オペレータへの教育も推進し、北海道全体に加え、全国規模で半導体エンジニアを配属できる体制を強化することで、半導体産業の発展にも寄与していくことを目指すとしている。

  • 日本国内の半導体テクノロジー能力開発センター

    日本国内の半導体テクノロジー能力開発センター(出所:UTグループ)